第3章 婦人病の推拿


一、月経不調 頻発月経


婦人科の疾患

 婦人科の疾患は多く、月経、帯下、妊娠、出産、授乳に関係しており、これは婦人が男子とは別にもつ生理現象です。各種の原因で引き起こされる月経、帯下、妊娠、出産、授乳の異常はすべて婦人科疾患に発展する可能性があります。ここでこれらの疾病の病因、病状およびその推拿の部位、手法を順次紹介します。もしも、あなたがこの方法を身につけることができれば、また真剣にその通りに行えば、妻子の病気を治したり予防したりできるはずです。長期にわたって病の痛苦に悩んでいる女性は自分の手で、自分の治病或いは保健強身をすべきです。



一、月経不調
(一)概述

 女性は10~14歳頃に初潮があり、49歳前後に閉経しますが、もう少しで月経がなくなる頃に身体が生理的に大きく変化します。もちろん、青春発育期の少女と一家をなして出産育児をしている青年婦人、或いは顔にも皺が目立ちだし、峠を越えた中年女性、それぞれに月経異常に因るあれこれの疾病にかかることがあります。月経病を予防するには、先ず第1に月経期間中の清潔・衛生に注意しなくてはなりませんが、これには、生理の衛生と、心理面の衛生が含まれます。月経期間中に身体の内部で起こる一連の変化は:子宮頚口が少し開く、子宮内膜が脱落する、一層の傷口を形成する、それに加えてもともと腟には酸性の分泌物があるのですが経血によって薄めれ、そのために細菌は非常に侵入しやすい状態です。ですから外陰部は特に注意して清潔・衛生に保たなくてはなりません。月経期間中は柔らかくて、吸水性の強い月経用紙を用い、また所有している月経用品すべて特別に注意して消毒し、病邪の侵入を防止します。同時に房事、盆浴、遊泳などは慎まなくてはなりません。婦人は月経中は抵抗力が減弱していますし、寒さに対する抵抗力も劣っていますから、薄着は避けて、雨に打たれないように、水の中での仕事あるいは湿気が多く寒いところに長居することは避けます。冷たい水で顔を洗ったり、足を洗ったりしてはいけません。寒冷刺激は、月経期で充血している骨盤腔の血管を収縮させ、卵巣機能の失調を引き起こして月経失調を導きます。
 月経病に対する推拿は腎気を補い、気血を調和し、血をきれいにして悪血を取り除き(活血化瘀)、経絡の通りをよくして痛みを止める(通経止痛)作用があります。薬物治療中に平行して推拿を行えば、補助治療になりますし、ときには薬物治療では得られない効果をもたらすことがあります。


(二)各類型の症状と推拿手法
1頻発月経(月経先期)気虚

 月経周期が7日以上、甚だしいときには10日以上短いものを“頻発月経(月経先期)”といいます。婦人に頻発月経をもたらす病因は主に気虚と血熱です。中医学理論:気は血を統摂するが、気が衰えると統摂できなくなる、血が熱くなると流れが溢れてしまう、いずれも月経をはやめてしまう。
 気虚
 (1)気虚の症状
   ①月経周期が短くなる。

   ②月経量が増える。
   ③月経の色は淡く、その質はサラサラしている。
   ④精神的に疲れ、身体もだるい。
   ⑤下腹が空のようでおちこむような感じ。
   ⑥食がすすまず、大便は水のよう。
   ⑦舌質は淡、脉は細弱。

 2)推拿の手法
 ①手指で百会穴を点揉(てんもみ)する。はじめは軽く、次第に重く。軽い点揉は25回、重い点揉は20回







 ②手指で足三里穴を推揉(おしもみ)、力は穏やかに、かすかに腫れぼったい感じがあればよろしい、そこを推行(推すこと)20回、按揉(おさえもみ)30回、交互にする。







 ③手指或いは半握拳(半分握った拳)で八髎穴を叩打。軽くからはじめて次第に重くし、軽くたたいた後に、100500回打つ。








 ④手掌で腰部を分推(左右に分けて推す)、術者は腰の両側をぴったりとおさえ、そのあと両側に分かれて、ゆっくりと分推しますが、作用点は手掌(手のひら)です。お腹に近づいたら、筋肉をつまんで後ろに引き上げます。








 
 ⑤手指で関元穴を長按(長くおさえる)、力は初めにきつくおさえ、患者にはれぼったい感じが生まれたら、速やかに緩めて、耐えられる程度に保持します。長按関元穴はおよそ
5分間、やや時間を置いてもう一度長按。いずれも重くはじめて軽めに転じるようにします。







 ⑥下腹に抜吸火罐(火を使った吸い玉)10分間、そのあと卵白またはゴマ油に調合した中薬(処方:黄柏6グラム 黄連6グラム 益母草60グラム 香附6グラム 鶏血藤12グラム。それぞれ細かくけずる)をぬる。
 もし家庭でやりにくければ、ただ抜吸火罐だけでもよい。
 (訳注:抜吸火罐はコップの中に、適量のアルコールを入れて、点火したあとすぐに皮膚に吸着させるもので、中のアルコールも燃えるので、温熱効果と吸着効果の両方がある。日本では、電動式の吸い玉セットが販売されている)


(二)類型別の症状と推拿手法
1頻発月経(月経先期)
血熱

 血熱

1)血熱の症状
  ①月経周期が短くなる
  ②月経量が多い。
  ③経色深紅色或いは紫、質は稠粘。
  ④イライラして(心煩躁)、顔色が紅く口が干く。
  ⑤手のひら足の裏が熱っぽく(手足心熱)、下腹が脹って痛む。
  ⑥小便は短くて黄い、大便は乾燥して硬い。
  ⑦舌は紅、舌苔は薄黄、脉は細弦数。

2)推拿の手法

 ①手の母指で鼻尖から督脈に沿って、推して行って長強穴に至って止めます。推して行く途中で、印堂、百会、大椎、命門、長強等のツボで点揉(てんもみ)します。毎回の推行は50回、推して行く力は穏やかにし、点揉する力は軽重ともに用います。









 ②手指で関元穴を点按(指圧)、力は軽重ともに用い、点按時間の長短を結合する(即ち軽い点按は時間を長くし、重い点按は時間を短くする)。








 ③手指で曲池、三陰交を長く点按する、この二穴を点按するときには、垂直に押すときには軽くし、傾斜して押すときには力をくわえ、ツボにはれぼったい感じを起こさせる。それぞれのツボに3~5分間点按。










 ④手掌(手のひら)をぴったりとお腹につけて揉捏と按圧(つまみもみとおさえ)。一般に揉捏は10分間前後、下腹部に熱感が生まれるまで、按圧は20回、按圧の力は術を受ける者が耐えられる程度。






 ⑤手掌魚際(手のひらの小指よりのふくらみ)を、涌泉穴ぴったりとつけ、軽快に擦揉(こすりもみ)、皮膚を発熱させる、その後手指でツボを拍打。
 (訳注:「魚際」はツボの名前としては普通母指球の方を言いますが、図では小指球となっていますので、図に従いました)



 ⑥両方の腰部を拳揉(こぶしでもむ)、力は強めに、揉みながら按圧を加える、操作時間は35分間。

 ⑦八髎穴に火罐抜吸(火を使う吸い玉)、約510分間、その後手掌で八髎穴を直接拍打20回、力は強すぎないように。


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