第3章 婦人病の推拿


一、月経不調 稀発月経


稀発月経(月経後期)

 月経周期が7日以上延びているものを稀発月経(月経後期)といいますが、虚実の区分があります。虚は営血が損なわれる(営血虧損)か陽気が衰えることにより血の源が不足して、血海が時期どうりに満ち溢れることができなくなるのです。実は気が鬱滞したことによる瘀血(気鬱血瘀)、或いは寒さによる血の停滞(寒凝血滞)により、衝任が阻害を受け(衝任受阻)、その結果月経周期が延びてしまっているのです。推拿は主に血瘀、血寒、気滞による稀発月経に対して治療と保健の作用を有します。



血寒

1)血寒の症状
  ①稀発月経(月経周期が長くなる)。
  ②月経血量は少い。
  ③月経血色は暗い、血塊がある。
  ④下腹が冷え痛む。
  ⑤舌苔は白い、脉は沈緊。

2)推拿の手法
 
 ①手掌(手のひら)を下腹部につけて左右にまわしながら揉み動かす(旋転揉動)、力は大きくなりすぎないようにし、揉み動かすとき、まわす速度ははじめはゆっくりと次第に速くする、その後緩めてゆっくりにする、患者の下腹部が温かくなるまでする、毎回掌揉
200回以上。









 ②手指で三陰交穴を点揉、力は強めに、はれぼったい感じがしてきたところで、力を緩めて、軽く数回揉み、強めの点按を20回以上。







    ③手掌で腰部を横摩(横になでる)、手掌(手のひら)を腰部にぴったりとつけて、圧迫するようにして、その後一方の端から他方の端まで推して行きます、反復して往復100回以上

    ④塩を炒めて熱した後、布に包んで下腹部を熨して温める、隔日に1回、下腹部に熱感が生まれて、お腹の中が暖かく気持ちよくなったら宜しい、腰部も同時に熨して温める。

 ⑤白酒で八髎穴、或いは下肢の陽経の各ツボを点拍する(うつ)、点拍打する(うつ)時の力は軽く緩やかにしかも応えるように、リズミカルに、適当な速度で、毎回治療点をうつ回数は300回前後とする。

(訳注:白酒=コーリャンで作った焼酎)




⑥火罐抜吸(火を使う吸い玉)を命門穴または関元穴に、各15分間、両穴を同時に吸っても宜しい。


虚寒

1)虚寒の症状
  ①稀発月経(月経周期が長くなる)。
  ②月経血量が減少。
  ③月経血色は暗い、質はうすい。
  ④下腹が冷え痛む。
  ⑤暖め按えるのを喜ぶ。
  ⑥舌苔は薄白、脉は沈遅。

2)推拿の手法
  ①手指を分けて用いて関元、気海、帰来などのツボを同時に点按(指先でおさえる)。操作中は時に軽く時に重く、軽重を交えて、毎回点按10分間以上。









 ②手指を分けて用いて委中、承山などのツボを同時に点按(指先でおさえる)、力は初め重くあとは軽く、ツボがはれぼったく感じてくるようにする。













 ③両方の拳で腰眼穴をおさえる(圧按)、圧按中は半握挙(半分握った拳)で揉み動かす(揉動)、力は軽くはじめて重くする、即ち軽く揉んで重く圧す、毎回施術
10分間以上。







 
④お腹の両側を手にひらで推す(掌推)、上から下へ大腿根部まで推して行く。手のひらはぴったりとつけて、推すときには初めは軽くしだいに重くし、毎回掌推50回以上。










 ⑤活動下肢関節、手で下肢の足関節をしっかり握り、そして下肢の関節を左右上下に揺り動かす(揺動)。揺り動かしている間に屈伸や按圧を配合する、揺動は時に応じて自在にゆるめ、脚を屈して按圧するときには力を用い、曲げた脚を伸ばして牽引するときには患者自身の力も配合する、毎回揺動50回以上。






 ⑥拳叩足跟、半分握った拳(半握拳)あるいはしっかり握った拳(捏緊拳頭)で、足跟部(アキレス腱付着部)をうつ(叩撃)。力は強め、うつ(叩撃)ときはリズミカルに。毎回施術200回、その後ひねりもみ(捏揉)して緩める。


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