第3章 婦人病の推拿


三、無月経腹痛


(一)概述
 月経は婦人の正常な生理現象です、もしも18歳を過ぎてもなお初潮が無かったり、月経はあるんだけれども3ヶ月以上中断した場合には無月経(閉経)といいます。
 およそ妊娠しているときや、授乳しているときに月経が止まるのは正常な生理現象です。少女で初潮の後に、腎気がまだ充分でないために、一時的に月経が無かったり、閉経期のように月経が止まったりするのは、いずれも正常な生理現象です。また月経がある女性でも生活環境が変化して、1~2回月経がないことがありますし、単に月経がないだけでどこも悪くない場合は、無月経としては取り扱いません。無月経の患者は、常に下腹部に病的な症状があります、推拿はこの症に対して比較的よい治療効果がありますが、症型の違いに分けて叙述します。



 (ニ)各類型の症状と推拿手法
1.気滞血瘀

 (1)症状表現
   ①月経が数月間ない。
   ②精神抑鬱、イライラして怒りやすい。
   ③胸脇部が脹り痛む。
   ④下腹部が脹り痛む或いは按られない(拒按)。
   ⑤舌辺が紫黯或いは瘀点がある。
   ⑥脉は沈弦或いは沈澀。

 (2)推拿の手法

 ①点按地機穴。力は先に重く后に軽く、そのツボに脹り痛む感じ(脹痛感)がして、経脈に沿って循るまで、毎回点按50回以上。








  ②点揉三陰交穴。圧す(点)時の力は強く、揉む時の力は緩めて、毎回点揉100回以上。











 ③拿捏合谷穴。母指と食指で合谷穴をつかんで、そしてつまみ揉み(揉捏)する、毎回施術10分間以上。








 ④分推前額。両手の母指で印堂から左右に分かれて太陽穴まで推して行き、その後太陽穴から頭のうしろの風池穴まで推して行くのを一遍として、毎回施術50遍。







 ⑤掌推胸脇。両方の手のひらで胸脇部を左右に推す(分推)、力は軽くやさしく、毎回施術分推100回以上。












 ⑥点揉背部両側穴位。手指で大椎のところから、背筋の両側のツボに分かれて下がり、大抒、心兪、肝兪、脾兪、気海などのツボを指圧(点揉)、毎回施術点揉50回以上。
(訳注:原文は「気海」とあるが背部には気海穴はないので、「気海兪」か「腎兪」か、いずれにしても背部両側のツボとした方がよかろう)




⑦按圧八髎穴。手のひらで八髎穴のところを軽めにおさえた後、下に向けて力を入れて圧します、毎回施術50回以上。








 ⑧叩撃足下肢陽経穴。手指或いは拳で下腿の陽経のツボを叩く、たたく力は初めは軽く次第に重く、毎回施術叩撃200回以上。


2.気血虚弱
 (1)症状表現
   ①月経周期が次第に延びる、経量が少い或いはなくなる。
   ②月経色は淡く質は薄い。
   ③下腹がシクシクと痛み、おさえると気持ちがいい(喜揉按)。
   ④頭がくらくらして眼がかすむ(頭昏眼花)。
   ⑤動悸がして呼吸がせわしい(心悸気短)。
   ⑥疲れやすく身体がだるい(神疲肢倦)。
   ⑦食欲不振。
   ⑧毛髪に艶がない或いは脱毛する。
   ⑨痩せて顔に艶がない(羸痩萎黄)。
   ⑩舌は淡く苔は少い或いは白薄。
   ⑪脉は沈緩或いは虚数。

 (2)推拿の手法

 ①関元、神闕穴を指圧(点按)。力は先に軽く后に重く、毎回点按100回以上。












 ②揉捏小腹部。手のひらを軽く下腹部につけて揉み(揉動)、その後下腹部を握りつまんだり、つかんで持ち上げたり(握捏拿提)する、毎回施術10分間。











 ③分推腰部。両方の手のひらの小指側のふくらみを腰につけて、圧を加えながら緩慢に左右に分かれて下に向かって推す、毎回分推行100回以上。

 ④半握拳滾揉腰背部。軽く握った拳(半握拳)で、上から下へ腰背部を反復して滾揉する、ころがすとき(滾時)はやや力を入れ、揉むとき(揉時)は軽く穏やかに、毎回滾揉10分間。






 ⑤豊隆、足三里穴を指圧(点按)、力は先に軽く后に重く、毎回点按50回以上。











 ⑥足の裏の両側を推し揉み(推揉)。両手の母指で足の裏の両側を同時に踵から指先の方へと推し揉み(分推揉)。









 ⑦下腹部を熨して温める(熱熨)。塩或いは生姜、葱を混合して鉄鍋に入れて炒めて温め、その後うすい布に包んでしばり、下腹部を熨して温める、毎回施術15分間。

 


3.肝腎不足
(1)症状表現
  ①女性が18歳になっても初潮がない。
  ②月経量が少なくなって終に無月経。
  ③下腹がシクシクと痛む。
  ④腰がおもだるくて下肢に力が入らない(腰酸腿軟)。
  ⑤頭がくらくらして耳鳴。
  ⑥舌色は淡紅、舌苔は少い。
  ⑦脉は沈弱或いは細澀。

(2)推拿の手法

 ①摩揉任脈。手のひらで胸から下へとなでもむ、毎回摩揉200回前後。











 ②建里、梁門、中脘などのツボを指圧(点揉)。指圧するとき力は先に重く后に軽く、はれぼったい感じがするよう(脹痛感)、毎回点按50回以上。











 ③然谷、三陰交などのツボを指圧(点揉)。おさえるとき(点時)はやや力を入れて、揉む時はやや軽く、毎回点揉50回以上。










 ④掐湧泉穴。手指で湧泉穴をつめるようにつかむ(掐拿)、つめるときには穏やかにはじめて次第に力を加える、毎回つめること20回以上。








 ⑤按揉四神聡穴。手の四本の指で四神聡穴を同時におさえもむ、按る時は力を入れて長くおさえ、揉む時は軽快にもみなでる(揉摩)、毎回按揉100回以上。











 ⑥拿捏肩井。手のひらで両方の肩をにぎりこねつかむ(握捏拿)、力を入れ、肩部にはれぼったい感じをもたせる(有脹痛感)。ちょっと力を入れて持ち上げてもいい、毎回施術応拿捏50回前後。







 ⑦背部の足の陽経脈を包むようにして推す(抱推)。手のひらで腰を横から抱えるようにして下に向けて推す、手のひらはぴったりと皮膚につけおく、毎回施術応推100回以上。












 ⑧棒灸で神闕、関元などのツボを温灸する。毎回10分

 

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