第一章 女性の特徴


一、成長・発育の規律

 《素問・上古天真論》の説:
“女性は、七歳になると、腎気が盛んになってきて、歯も永久歯に生えかわってくる。十四歳になると生殖能力ができて、任脈も通じ、衝脈も盛んになり、月経も定期的になり、子供を産むことができる。二十一歳になると腎気は全身に平均にいきわたり、親知らずも生え、歯は完全に生えそろう。二十八歳になると筋骨ともに堅く引き締まり、髪の毛も長くなり、身体は女性として最も充実する。三十五歳になると陽明経の経気が衰え始め、顔に艶がなくなり始め、髪の毛が抜け始める。四十二歳になると三陽の脈がともに上の方から衰えて、顔の艶はなくなり皺が増えてくるし、白髪もちらほらし始める。四十九歳になると、任脈は虚してきて、衝脈も衰え、生殖能力もなくなり、月経も終わり、器官も老化して、子供を生めなくなる。”
 昔の人は、このように女性の一生の成長・発育を総括しています。

  現代医学では:
 人の成長発育には、盛んな時期が二回あります。一回目目は幼児期であり、二回目は思春期です。幼児期には男女の発育の特徴は基本的に一致していて、人の一生の中で生命力がもっとも盛んで、発育がもっとも迅速な時期です。
 女性が、男性と別れて来るのは、主に青春発育期ですが、わが国では習慣的に青春期は12〜22歳とされています。この時期における青少年の発育変化は最高で、生理的な面では、身長と体重は急速に増加し、身体の各器官、骨格、筋肉も迅速に発育し、女性の子宮、卵巣などの生殖器官も発育を開始し、次第に成熟し、月経も初潮を迎え、生殖能力を備えるに至ります。
現代医学によれば、青春期の変化は男女の性ホルモンの違いによって、男女それぞれの特徴が現れてくると言われます。
 “女は大きく十八変する、変わるごとに美しくなる”これは、女子の発育期間における身体の変化を言い表わしてきた形容句の一つです。青春発育期の女の子は、青春の活力に満ち溢れ、身長は次第に高くなり、筋肉ははちきれんばかりにかたくなり、肌の色はしっとりと潤いをおび、容貌は輝くばかりとなり、音声は高く繊細になり、骨盤は次第に大きくなり、胸は豊満になり、臀部は丸みを帯びて、腰部は相対的に細くなり、女性特有の身体のつくりになってきます。
 青春発育期の女の子は,生理的な変化の結果、心理的な面でも非常に大きく変化し、性意識が芽生えてきます。20歳を過ぎると、女性の子宮や卵巣などの生殖器官は基本的に成熟を終え、年齢を重ねるにつれて、結婚、妊娠、出産、育児といった一連の生理的な変化を辿ります。
 結婚によって、男女ともに性欲を満足させることができますが、これは正常な生理現象です。ただ、夫婦ともに生理的な機能が正常で、特殊な病気がないことが必要で、そうすれば、女性が青春期に初潮があってから閉経するまで、男女合体して、双方の精子と卵子を結合して胎児を形成することができます。受胎してから分娩するまでを妊娠と称し、この期間は月経はなく、受胎以後胎児は子宮の中で成長し、およそ280日前後で分娩します。(予定日の計算方法:最終月経の始まった日を0日として、約280日目・40週0日目を予定日とする。) 妊娠して月が満ち足りてくると、胎児は下に向きを移しており、時折腰腹部に痛みがあり、下腹が逼迫したように脹ってきて、便意や“おしるし”など徴候が現れますが、臨月です。臨月には合理的な養生をして、難産を引き起こさないようにする必要があります。出産後はすぐに乳汁が分泌しますが、産後12時間ばかりしてから、授乳を開始します。6ヶ月すると、乳汁は減少してくるので、6〜12ヶ月の間に離乳の準備をします。授乳期間が長すぎるのは、母体にとって宜しくありません。
 女性は、一般に35歳以後になると、身体の素質は下降し始めます。正に、《内経》で“顔に艶がなくなり始め、髪の毛が抜け始める”と説いている所以です。49歳前後になると閉経し、このときを持って女性は生殖能力を失います。


ニ、女性の生理変化

 女性は、一生の間に幾たびかの大きな生理的な変化を経験します。思い煩うことなく愉快に幼年期を過ごし、10〜12歳の間に乳輪は次第に大きくなりますが、これは正常な生理現象で病変ではありませんから、神経質になることはありません。その後、乳房はすこしづつ大きくなりますが、このときになんだか脹ったような痛みを覚えることがあります。乳房が大きくなることは女性の健康美の象徴でごく自然なことです。陰毛が現れてくるのは、乳房が発育を始める時期と相前後していますが、腋毛が現れるのは陰毛に比べると半年から1年遅れます。これらは均しく女性の成長発育にあっては必然的なことで、これをおそれ不安に思うことはありません。生殖器官とともに、性的機能も迅速に発育して、性意識も芽生え始めます。この幾つかの特殊な心理が生まれると、性の欲望、性の衝動を持つことになりますが、これらはすべて正常な生理的な反応です。
 
健康な女子は、14歳前後に初潮があり、一般に毎月一回月経があるのが正常な生理現象です。早すぎたりあるいは遅すぎたり、或いは久しくなかったりなどというのは、多くは病態反応に属します。この月経期には、女性は痛経現象に出会うことがあります。もしも月経期間に、平時に比べて気持ちがイライラしたり、かんしゃくを起こしやすいとしても、一般には病変とは看做しません。ただ、情志が特別に一般の例と異なるときには“月経情志異常”とみなします。
 女性は妊娠期間中は月経は停止しています。妊娠の初期には、めまい、食べ物への嫌悪感、食べ物の好き嫌い、酸っぱいものを好む、だるくて眠気がする、朝起きたときには食べ物が美味しくなく吐き気がするなどといった症状はよく見られることで、これは妊娠時の正常な生理反応です。一般には妊娠2ヶ月以後次第にこのような症状はなくなります。妊娠初期3ヶ月間の心理的な情志の変化や身体の病理的な変化は胎児の心身の健康に直接影響します。出産後は、残っている血液・粘液などが子宮から腟を通過して排出されますが、産後の“悪露”といいます。3週間前後で完全になくなります。その期間を過ぎても出てくるようなら、産後の病と看做します。女性は産後には、外邪を受けやすく、各種の婦人科疾患、たとえば、腰痛、帶下、頭痛、四肢関節痛などを引き起こしやすいものです。
 女性は一般に49歳前後に閉経しますが、この時期を女性の更年期といいます。めまい・耳鳴り、イライラして夢が多いなど一連の生理的・病理的変化(現代医学では更年期障害といいます)が出現しやすく、月経も乱れ、最後には閉経します。大多数の女性は、この期の症状は緩慢に消失しますが、人によっては健康に害を及ぼす病変が起こることもあります。


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