第3章 婦人病の推拿


二、寒湿月経痛


(一)概述

 婦人が寒湿月経痛になるのは地理的な条件、生活環境、生活習慣、体質的な素因それぞれ大いに関係があります。月経期間は子宮は気血が満ちみちてそれからあふれ出すことになります。このときにもし気候が急に冷えてきたり、着衣が足らなかったり、或いは雨にさらされたり、水をわたったりした場合;或いは湿度の高い環境に生活しているとか;或いは湿地に久しく寝そべっていたとか;或いは水の中で泳いだりとか、そのために寒湿の邪が子宮にとどまって(凝滞胞中)、経血の運行を阻滞させ、月経痛を引き起こすのです。もともと体質的に陽気が不足して、脾胃虚弱なのに、月経中に生ものや冷たいものを過食して、中を冷やすと(寒湿内生)、月経痛を引き起こします。ですから、居住環境の空気の流通には注意して、適度に着衣し、月経中は水の中を歩いたり泳いだり、むやみに冷やしたり雨に当たったりしないことです。これは身体が素質的に弱い人についてだけではなく、たとえ身体が強壮なものでも、抵抗力が強いと自認し、不注意になってはいけません。正邪の力量が争っているときに、もし邪気が上回れば、あなたは病邪の侵襲を受けて、疾病に罹ってしまいます。



(二)各類型の症状と推拿手法
1陽虚内寒月経痛

(1)症状表現
  ①月経中或いは月経后、下腹が冷痛。
  ②按るのを喜び(喜按)、温めると痛みが減る。
  ③月経量は少、月経色は黯淡。

  ④足腰がだるくて力が入らない(腰腿酸軟)。
  ⑤小便はだらだらと続く(清長)。
  ⑥舌苔は白潤、脉は沈。

(2)推拿の手法

 ①掌揉小腹部。手のひらを摩擦して暖かくしたあと下腹部につけて左右にまわしながら揉む(旋転揉動)、毎回施術15分間以上。









 ②両方の手のひらで上腹部をひっぱりあげる。両方の手のひらで上腹部を上に向けてつかみ上げて(拿提)、つかみ上げたときにはお腹の皮は中央に寄ってくるが、そうしたところで引っ張り上げる、毎回拿提20回以上。







 ③臍、関元の両ツボを指圧(点揉)。力は初めは軽くしだいに重く、少しずつ力を増す、毎回点揉10分間以上。









 ④大腿の内側の筋肉をはじく(弾撥)。手指で大腿の内側部をしっかりつかみ(拿)、はじめは軽くはじき、そのご少しずつ力を入れてはじく、毎回施術10回以上。









 ⑤下腿内側の経脈を推して行く(推行)。手指或いは手のひらで下腿内側を推行、三陰交から上に推して陰陵泉に至る、毎回推行50回以上。











 ⑥分推腰部。手のひらの小指よりのふくらみで腰の両側を推す、手のひらの付け根をぴったりとつけて力を入れ、推圧していき、手がお腹まで行ったら両手を後ろに向けて腰を絞る、毎回推行100回以上。

 ⑦点叩八髎。手指或いは半握拳で八髎穴を叩く、力は初めは軽くしだいに重く、叩く振動が骨盤まで伝わるとよい。毎回点叩施術300回以上。









 ⑧拿捏肩井穴。手で肩井の部位をしっかりつまんで、そしてこねるように動かす。毎回施術50回以上。


2 寒湿凝滞月経痛

 (1)症状表現
   ①月経の前数日或いは月経中、下腹部が冷痛。
   ②温めれば楽になるが(得熱病減)、按るとひどく痛む(按之痛甚)。
   ③月経量は少い。
   ④月経色は黯黒で塊がある。
   ⑤寒がりで身体が痛い。
   ⑥舌苔は白膩、脉は沈緊。

 (2)推拿の手法

 ①橫摩小腹部。手のひらで下腹部を横に向けて往復しながらなでもみする(摩揉)、力は軽く緩やかに、毎回摩揉100回以上、皮膚が熱くなるまで。





 ②点按関元穴。力は先に重く后は軽く、その後ゆるめる、長く按すのもよい、力は平に緩かにしてツボの上に保持し、はれぼったい感じ(脹痛感)があるまで、毎回施術10分間。







 ③擦湧泉穴。手のひらの小指側の膨らんだところを湧泉穴につけて、速く擦って熱し、足心に熱感を伝える。毎回擦揉60回以上。






 ④捶叩腰仙部。手指或いは半握挙で腰仙部を叩く、叩く力は平均して、穏やかにリズミカルに、毎回捶叩300回以上。








 ⑤弾撥肩甲。手指を肩甲骨のところに深く食い込ませて、指頭が筋肉のうしろ触れるようにして、筋肉のすじをはじく、肩胛のところがだるく腫れぼったくなるようにする、毎回弾撥50回以上。









 ⑥合谷、内関、外関、曲池穴を指圧(点按)、力は先ず重く后に軽く、四穴を相互に配合して、あるツボを重按したら、他のツボは軽揉する、毎回点按15分間。







 ⑦手腕の関節を揺って急に引っ張る(揺抖)。手で手くびをしっかり握って、回したり揺り動かしたりしながら(旋転揺動)、突然腕をぐっと引っ張る、毎回揺抖20回以上。







 ⑧棒灸で下腹部を温める(注意:火傷をしないように)、棒灸の先を燃やして、ゆっくりと下腹部をあぶる、生姜による隔物灸をしてもよい、一回施術15分間。

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