第3章 婦人病の推拿


十一、乳汁不足


 (一)概述
 産後乳汁が甚だしく少ないか、まったく出ない場合、乳汁不足といいます。普通の生活をしながら赤ちゃんを母乳で養育するのが、最も良い方法です。母乳は栄養豊富で、温度は適当で、赤ちゃんの栄養吸収と消化に適合していますから、母乳で赤ちゃんを養育できる場合には、できるだけ母乳で養育すべきだということです。
 乳汁不足の原因としては主に二つの面があります。一つは、身体が弱く、胃腸が健康でなく、食欲不振で、各種の栄養物質の摂取が不足して、身体の基本物質(水穀精微)を十分生み出すことができず、気血が足らなくなり、乳汁となることができなくなる場合。もうひとつ別の原因は、精神的な抑鬱のために、気が十分に働けず(情志抑鬱、肝失条達、気機不暢)、乳汁の運行が阻害されて、乳汁不足になる場合です。ですから、授乳期には気持ちを楽にして(情志舒暢)、飲食物の調和のとれた摂取と心理的な均衡を保つように注意しなくてはなりません。



   (ニ)各類型の症状と推拿手法
    1.気血虚弱
 (1)症状表現
   ①産后乳汁が少い。
   ②乳汁がうすい。
   ③乳房が柔軟で、脹った感じがない。
   ④顔色が悪い。
   ⑤疲れやすく少食。
   ⑥舌色は淡、舌苔少。
   ⑦脉は虚細。

 (2)推拿の手法

 ①揉捏乳房。手で両方の乳房をもみこねる(揉捏)、力は軽く緩やかに、毎回揉捏100回以上。












 ⑧点揉乳周穴位。手指で乳房四周のツボを指圧(点揉)、力は軽重織り交ぜる、毎回点揉100回前後で良い。













 ③点按脊椎両側穴。指で脊椎両側のツボを指圧(点按)、力は先に重く后に軽く、毎回点按50回以上。











 ④分推頭側。手指で太陽穴から、左右同時に推して行き頭の後ろで止まる、手指は頭皮にぴったりとつけ、力は軽く緩やかに、毎回分推200回以上。








 ⑤推揉足三里。手指で足三里を推し揉む、軽くツボの四周をはじくとよい、毎回推揉100回以上。







 ⑥温灸肩甲。棒灸で肩甲の四周のツボを温灸、皮膚が熱くなったらよい、毎回施灸15分間。


 2.肝鬱気滞
 (1)症状表現
   ①産后の乳汁が少いか或いは無い。
   ②胸脇が脹って苦しい。
   ③気持ちが晴れない(情志不舒)。
   ④食欲減退。
   ⑤舌は正常、舌苔は薄黄。
   ⑥脉は弦細或いは数。

 (2)推拿の手法

 ①分推胸脇部。手のひらで胸脇部を左右に推す、力は軽く緩やかに、毎回分推100回以上。













 ②按揉脘腹部。手のひらを上腹部にぴったりつけて、上下左右おさえ揉む(按揉)、力は軽徴に、毎回按揉100回以上。








  ③弾抜肩甲穴。手指で肩甲部を深くつねり、左右にはじくように動かす、毎回弾撥50回以上。













 ④舒展四肢。手で四肢を握り上下左右に動かし、四肢の筋骨を伸ばす、毎回舒展50回以上。


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