第3章 婦人病の推拿


十二、乳痛腫痛(乳腺炎)


 (一)概述
  乳痛は多く初産の女性の授乳期に発生し、その特徴は乳房の局部が紅く脹れて、甚だしいときには潰瘍が破れて膿が流れることがあります。本病の多くは産後の精神的なストレス(情志不暢、肝気不舒)によって起こります。乳頭の破損、奇形、或いは内陥により、授乳時に激痛があり、授乳に影響することもあります。あるいは乳汁が多すぎて、赤ちゃんが全部飲みきれず、乳汁が滞って、長く敗乳が蓄積して、熱をもち化膿して乳癰(乳腺炎)になることもありまあす。
 婦人の産後には、家族のものが意識して仲むつまじい家庭環境をつくらなくてはなりません。産婦本人は自分の情緒を調節することを身につけて、小さいことにこだわって悶々としないことです。こうして乳汁は正常に分泌するし、うつ滞して炎症を起こすこともないわけです。このほかに、授乳期間中は乳房を清潔にしなくてはなりません。毎回、授乳前には温水で乳頭を洗い、手も洗い、乳を飲ませたあとは吸乳器で乳汁を吸い取って空にして、乳が溜まって炎症を起こすことがないようにします。乳頭が破裂したときには、すぐに治療することです。



    (ニ)主要症状及推拿手法   
(1)症状表現
  ①乳房が紅く腫れて熱く痛い。
  ②初めに悪寒発熱。
  ③全身の節々がだる痛い。
  ④乳汁がスムーズに排泄できない。
  ⑤数日で腫塊は増大する。
  ⑥これを按えると波動感がある。
  ⑦心が千々に乱れイライラと動く。

 (2)推拿的手法

  ①弾撥肩甲穴。手指で深く肩甲のところをつねり、肩甲のツボをはじく(弾撥)、力はやや重く、毎回弾撥50回以上。











 ②点按脊椎穴。手指で脊椎のツボを指圧、力はやや重く、毎回施術点按50回以上。








 ③按揉乳根四周。手指で乳根四周のツボをおさえ揉む(按揉)、力は初めは軽く次第に重く、毎回按揉100回以上。











  ④火罐抜吸乳癰。吸い玉で乳癰に吸着するときには、梅花針、三稜針で点刺の後、吸着5分間。












 ⑤中薬の服用を併用する。体質に基づいて、活血化瘀、養血通乳の中薬を処方する。








 ⑥外敷中薬。処方した中草薬を搗いたり削ったりして粉末にしたあと、ワセリン或いは卵白に混ぜて攪拌し、乳腺炎ができているところに貼り付ける、中草薬の処方は清熱消腫、活血通絡に宜しいようにする。









 ⑦針刺大椎。三稜針で大椎を点刺し出血、毎回の出血量は3~5滴で宜しい。












 ⑧拿提肩井。手のひらで肩井穴をつかみこねる(拿捏)、力は軽重織り交ぜる、毎回拿捏50回以上。

HOME BACK