第3章 婦人病の推拿


九、産後の腰痛


 (一)概述
 婦人は出産したあとは、身体が最も弱っています。主な要因は;分娩のときに大変な力を使って、正気を使い果たしている、或いは大量の血や汗を出して、津液を使い果たしている、気血ともに非常に弱って、筋肉が栄養を失っているということです。別の面では、もし元気がもともと少ない体の場合、分娩時の傷が気血や子宮に及んで、異常をもたらします。女性の腰・腎は子宮などを養う脉(胞脉)がつらなるところですから、胞脈が弱ってくると腎気も弱ってきます。このような原因はすべて腰痛を引き起こします。このように身体の抵抗力が最低の状態にある時に、風、寒、湿などの外邪が弱っている状態につけこんで侵入して、気血の運行をさまたげ、産後の腰痛をもたらします。
 婦人は出産のあとは、必ず生活の調整に注意しなくてはなりません。飲食については栄養豊富で消化しやすい食品を与えて、身体の抵抗力を増す物質を大いに補充します。ただし、油っこくてしつこい、生で冷たい、辛くて刺激が強い食品は避けなくてはなりません。婦人の産後は、節々がみな空虚(“百節空虚”)なので、病邪は容易に侵入できます。ですから、起居ふるまいは慎み、注意して衛生的で清潔にし、冬は保温し、夏は避暑し、着衣の厚着薄着には心して、外邪の侵入を防止しなくてはなりません。



   (ニ)各類型の症状と推拿手法
  1.気血虚弱
(1)症状表現
  @顔色は艶がない或いは白い。
  A頭がくらくらして呼吸がせわしい。
  B舌色は淡紅、舌苔は少。
  C脉は細弱。

(2)推拿の手法

 @分推腰部。手のひらで腰部の両側を左右に推して行く、力は強めに、毎回分推100回以上。













 A点按腰眼穴。手指で腰眼穴を指圧(点按)、力は先に重く后は軽く、毎回点按50回以上。













 B点按神闕・関元穴。手指で指圧(点按)するときには、力は軽重を組みあわせる、毎回按50回以上。










 C屈伸膝部。患者仰臥位、術者は左右に膝部を動かし、屈伸按圧する、毎回屈伸膝部50回以上。









 D推揉督脉。手指で鼻部から上に向かって推して行き下って長強穴で止まる。推して行く途中、印堂、百会、大椎、命門、長強穴をおさえもむ(按揉)、毎回推揉50回以上









 E拿捏肩井。手のひらで肩部をつまみこねる、力は初めは軽く次第に重く、拿捏中力は穏かに持久して、肩井にだるい腫れぼったい痛いような感じを起こさせる、毎回拿捏50回以上。


2.腎虚腰痛
(1)症状表現
  @産后腰背がだる痛い(酸痛)。
  A下肢に力が入らない。
  B踵とアキレス腱が痛い。
  C頻尿。
  D舌色は淡紅、舌苔は薄。
  E脉は沈細。

(2)推拿の手法

 @擦揉湧泉。手のひらで湧泉穴を快速に擦り揉む(擦揉)。皮膚が熱くなったら宜しい、毎回擦揉100回以上。







 A点按委中。手指で委中を指圧、力は先に重く后は軽く、毎回点按50回以上。













 B肘圧環跳穴。術者の肘尖で環跳穴を按圧、力は軽重織り交ぜて、毎回按圧50回以上。









C拍叩腰部。手のひら或いは拳で腰部をパタパタと叩く(拍打叩撃)、力は初め軽く次第に重く、毎回拍叩200回以上。









 D揉摩腹部。手のひらをお腹にぴったりとつけて、上下左右に揉みなでる、毎回揉摩200回以上。









 E搬動腰部。手のひらで分けて肩と臀部をつかみ、違う方向に向けてねじり動かして骨格の音がしたら宜しい、左右搬動1回。

3.寒湿腰痛
 (1)症状表現
   @産后の腰背部の疼痛。
   A腰の屈伸ができない。
   B腰痛は温めると少し楽になる。
   C冷え症で手足が冷たい。
   Dこむらがえり。
   E舌色は淡、舌苔は白。
   F脉は細緩。

 (2)推拿の手法

 @横摩腰部。手のひらを腰部にぴったりとつけて、腰部を横に向けて左右になでる、毎回横摩200回以上。













 A推揉脊椎両側。両手で別々に脊椎の両側のツボをおしもみ(推揉)、上から下へ、力は軽重織り交ぜて、毎回推揉100回以上。













 B叩打腰部及下肢。手指で下肢の経脉と腰部のツボを叩打、毎回叩打100回以上。









 C双掌畳圧腰部。両方の手のひらを重ねて、同時に腰部を圧す、力はやや重く、持続1分間、毎回重圧15分間









 D抖動下肢。手で片方の足の足首を握り、別の脚はまっすぐに伸ばして動かさない、手で左右上下に動かし、その後突然引っ張る、毎回抖動10回以上。








 E合谷、神闕、関元、足三里などのツボを温灸する、毎回温灸15分間以上


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