第3章 婦人病の推拿


五、子宮下垂


 (一)概述
 子宮下垂は婦人の子宮が正常な位置から離れて、腟に沿って下降、或いは一部分が膣口の外に脱出、或いは全部が膣口の外に脱出する病変です。本病は多く産後に発生しますが、分娩に際して、早産、難産、出産過程が長すぎた、力みすぎたなどによって子宮(胞絡)が損傷されます。産後早く仕事をしすぎた、重いものを持ったといったことからも子宮下垂が引き起こされます。本病の発生は患者の体質素因とも関係があります、脾虚気弱、中気下陥、或いは腎虚下元不固、子宮虚冷、摂納無力、これに加えて房労多産、という場合に子宮下垂を来たすものが多いです。現在は計画出産が実行され、助産新法が実施され、産後の保健に注意するようになったので、子宮下垂の発病率はずいぶん低下しました。
 本病は多く弱ったときに発病するから、産前産後の保健を重視することが、本病予防の重要な一環です。



   (ニ)各類型の症状と推拿手法
 1.気虚
 (1)症状表現
   @子宮が下に移動或いは脱出。
   A労働すると悪化する。
   B下腹が落ち込む感じ。
   C四肢無力。
   D呼吸が弱く、ものを言うのがおっくう。
   E顔色に艶がない。
   F小便の回数が多い。
   G帯下の量が多い。
   H帶下の質はうすく、色は白。
   I舌色は淡、舌苔は薄い。
   J脉は虚細。

 (2)推拿の手法

 @中極、気海穴を指圧(点按)。力は軽重を組み合わせて運用、毎回点按100回以上。








 A逆推腹部。手のひらをお腹の大腿の付け根のところにつけて、そこから上に向けて推し揉む(推揉)、毎回推100回以上。










 B拿捏腰腹側。手のひらで腰の両側を拿捏、つまむ(拿)時はしっかり握って、こねる(捏)時は軽くはじく(弾撥)、毎回拿提50回以上。










 C屈伸旋転下肢。患者は先ず胸を突き出してお腹を引っ込める、施術者は片足の足首をつかんで、屈伸運動をしながらおさえる(按圧)、或いは左右に旋転しながら下肢を弯屈させる、毎回施術100回以上。









 D陽陵泉、陰陵泉の両穴を指圧(点按)。力は強めにする、指圧するときにツボのところの筋肉をはじいてもいい。毎回点按50回以上。










 E肘圧腰眼・環跳穴。力ははじめ軽く次第に重く、同時に患者が肛門やお腹を収縮するとよい、毎回圧50回以上。









 F点按百会穴。手指で百会穴を指圧(点按)、力は先に重く后に軽く、施術中、患者に腹式呼吸をするようにいう、そのあと胸式呼吸に改める、毎回点按50回以上。








 G拿捏肩井穴。手指で肩井穴をつまみこねる(拿捏)、力度軽揉、緩慢按捏、毎回施術100回以上。


2.腎虚
 (1)症状表現
   @子宮が下脱。
   A足腰がだるい。
   B下腹下がって落ち込む感じ。
   C小便は頻回。
   D夜間に甚しい。
   E頭がくらくらして耳鳴り。
   F舌色は淡紅、脉は沈弱。

 (2)推拿の手法

 @湧泉、然谷穴を指圧(点按)。力ははじめ軽く次第に重く、その間、患者は深呼吸しながら、肛門を収縮しお腹を引き上げる、毎回点按50回以上、患者の深呼吸と肛門収縮お腹上げは15回以上。






 A足三里、三陰交、地機の三穴を指圧(点揉)。おさえる(点)時は力は重く、揉む時は力は軽く、毎回施術50回以上。










 B横摩腰部。手のひらを腰にくっつけて、腰部を往復して横になでる、毎回施術200回以上。








 C推揉腰下部。手指で長強穴から上に向かって推し揉み(推揉)して命門穴に至る、反復推揉、毎回推揉100回以上。










 D擦揉下腹部。手のひらで下腹部を擦り揉む(擦揉)、毎回擦揉100回以上。













 E点按会陰穴。手指で会陰をおす(点)、力ははじめは軽く次第に重く、毎回点按50回以上。












  
 F督脉を推し揉みする(推揉)。手指で鼻頭から頭頂、頭項、背部を経て長強穴に至る、毎回施術推揉100回以上。











 G聴宮、人中穴を指圧(点揉)。力は先ず軽く后に重く、毎回施術100回以上。

HOME BACK