第3章 婦人病の推拿


4、帯下過多


 (一)概述
 正常な状況では、婦人の腟の中は少量の無色で粘質で無臭の分泌物があり、これは人体の腎気が充満して盛んであり、脾気が健やかに運行している現われで、湿潤な膣口は、細菌が侵入してくるのを防いでいます。月経期間中、月経の前、或いは妊娠中は、帶下はやや増加しますが、これは正常な現象です。だけど、もし膣内の帶下が綿々として止まらず、色、質、臭いが異常なものは、まず帶下の疾病を考慮すべきです。
 女性の帶下の疾病は主に白帯の量の多少、顔色、帶下の質が正常かどうか、臭いがどうかなどを観察して、その原因を分辨し、治療方針を確立します。およそ、帶下の色が白くて、サラッとしていて、無臭のものは多く虚に属します;帶下の色が黄色で粘りがあり臭いがあるものは多く実に属します。帶下にいろいろな色が混ざり、膿のような血に似ているような、変な臭いがしてつい顔を背けるような場合は、直ちに病院で検査して、癌に変わるのを防止します。
 帯下過多はその原因を究めれば、主に湿邪によって引き起こされます。湿邪は外湿と内湿の両種に分かれます。外湿は居住環境の湿気、或いは夏に涼しさを貪る、湿ったところに長く寝そべるなど多種類の原因で起こります;内湿はもともと体質的に脾虚で、運化作用が失常し、腎が虚して固める作用を失って(腎虚失固)起こります。



   (ニ)各類型の症状と推拿手法
 1 脾虚帯下

 (1)症状表現
   ①帯下の色は白或いは淡黄。
   ②帶下の質は粘稠、臭いはない。
   ③白帯が綿々として止まらない。
   ④顔色は白くて、艶もなく清気もない。
   ⑤手足が温もらない。
   ⑥精神的に疲れる。
   ⑦食が細くて、大便は水様便。
   ⑧両足の甲が腫れる。
   ⑨舌質は淡、舌苔は白或いは白膩、脉は緩弱。

 (2)推拿の手法

 ①橫摩帯脉、束腰。腰を締める。手のひらで帯脈をおさえなで(按摩)し、あわせて力を入れて腰を締め付ける、毎回摩揉100回以上。












 ②点揉足三里穴。手指で足三里穴を指圧、圧すとき(点時)は力は重く、揉む時は力は軽く、毎回施術点揉100回以上。













 ③中脘、神闕、関元穴を指圧(点按)。力は先に重く后は軽く、毎回点按50回以上、三穴を同時に指圧しても、別々に分けて指圧してもよい。







 ④掌揉脘腹部。両方の手のひらをそれぞれ上腹部と下腹部にぴったりとつけて、時計回り或いは逆時計回りに回す、毎回揉100回以上。 








 ⑤分推頭額。手指で額を左右に推す。力は初めは軽く次第に重く、毎回分推200回以上。






 ⑥拿捏脊柱。手指で脊柱の皮膚や筋肉をつかみこねる(拿捏)、力を入れて上に引っ張り上げる(上提)、或いは手指を対称に使って力を入れてこねるようにもむ(捏揉)、毎回拿提50回以上。










 ⑦弾撥膏肓穴。手指でこのツボを深くつまみ、そして左右にはじきます。毎回つまむこと20回以上。














 ⑧舒展手臂。手で手くびをしっかり握って腕をぐるぐる回して動かす、毎回活動50回。


2.腎虚帯下
 (1)症状表現
   ①白帯でサラッとして冷たく、量は多い。
   ②質は稀薄。
   ③だらだらと流れて止まらない。
   ④腰が痛くて折るかと思うぐらい(腰痛如折)。
   ⑤下腹が冷痛。
   ⑥頻尿で出るのが長い、夜間はさらに甚しい。
   ⑦大便は水様便。
   ⑧舌質は淡、舌苔は薄白。
   ⑨脉は沈遅。

(2)推拿の手法

 ①湧泉、三陰交、然谷などのツボを指圧(点按)。力は先に軽く后は重く、毎回点按10分間以上。










 ②腰眼、命門穴を指圧(指揉按圧)。手指でツボを按圧し、その后軽く揉んでゆるめる、毎回施術指揉按圧100回以上。      











 ③掌圧八髎穴。手のひらを重ねて八髎穴にぴったりとつけ、そして術者が体重を両方の手のひらの上に移して、圧力と身体の重力を八髎穴上に落とす、毎回掌圧50回以上。








 ④腰部、環跳穴に肘頭圧。肘尖で腰部或いは環跳を圧しつけ、その後肘頭の圧力でその部位やツボを刺激する、毎回肘頭圧50回以上。








 ⑤アキレス腱をつねる。手指を対にしてアキレス腱をつねる、力は強く、快速に正確に、毎回つまむこと20回以上。







 ⑥中極、会陰穴を指圧(点揉)。手指で点揉する時、力は先ず軽く后に重く、圧えるとき(点時)はツボにははれぼったい感じがあり(脹痛)、揉む時には脹痛感は消失する、毎回点揉20回以上。









 ⑦掌揉脘腹部。手のひらをお腹にぴったりとつけて上下左右に揉み動かす、毎回施術揉動100回以上.








 ⑧棒灸で関元、足三里穴に温灸、毎回温灸10分間、生姜の隔物温灸でもよい。


3.湿熱帯下
 (1)症状表現
   ①帯下の量が多い。
   ②色は黄い或いは黄白。
   ③質はねばねばして臭気がある。
   ④胸がうっとうしく口がねばねばする(胸悶口膩)。
   ⑤あまり食べない。
   ⑥下腹が痛くなる。
   ⑦陰部が痒い、尿が黄い。
   ⑧舌苔は黄膩或いは厚。
   ⑨脉は濡略数。

 (2)推拿の手法

 ①点掐行間穴。手指を上下に使って行間穴をつねる、力は先ず重く后で軽く、毎回つねること50回以上。






 ②委中、承山穴を指圧(点按)。手指の重力でツボを指圧(点按)、ツボにはれぼったい感じ(脹痛感)を起こさせる、毎回点按50回以上。










 ③肩井、風池穴をつまみこねる(拿捏)。手指で肩井、風池穴をつまみこねる(拿捏)、力は先に重く后は軽く、毎回拿捏50回以上。










 ④神門、合谷穴をつねる。手指で神門、合谷穴をつねる、力は重くして、平穏に保持する、ツボにはれぼったい感じを起こさせる、毎回つねること5分間以上。






 ⑤拿提腹部。手のひらで腹部をしっかりとつかみ、揉んだりこねたりした(揉捏)あと上に上げる、その後緩める、毎回拿提100回。









 ⑥大椎、命門穴を擦り揉む(擦揉)。手指を白酒にひたして大椎、命門などのツボをパタパタとたたいたり、擦り揉む(拍打擦揉)、毎回擦揉200回以上。

(訳注:白酒はコーリャンで作った焼酎)






 ⑦火を使う吸い玉を八髎穴に、吸い玉を吸着する前、ツボを梅花針ではじくように刺しておく(弾刺)、毎回撥吸10分間以上。








 ⑧三稜針で隠白、至陰穴を点刺し、その後両側から圧して出血させる、毎回出血3滴以上。

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