第3章 婦人病の推拿


八、胎位不正



 (一)概述
 妊娠28週以上の者では、正常胎位は胎児の頭は下を向いています、つまり、分娩するときに頭から先に出れば、胎児は最小の周径で骨盤を出て、産道を通過することができるということで、自然分娩として順当なわけです。これに反して、もし胎児の足や臀部などが下を向いる場合を胎位不正といいます。胎位不正は難産をきたす重要な原因で、重いときには母子の生命に危険が及びますから、重視しなくてはなりません。
 胎児の各部の大きさは成人とは異なります。成人の臀部は肩部より大きく、肩部は頭部より大きい。胎児はこれに反して、頭部は肩部より大きく、肩部は臀部より大きい。胎児は羊水の中で生活していますが、妊娠24~28週より前は、胎児は小さいので、羊水は相対的に多く、胎児の子宮内での活動範囲は大きく、位置と姿勢は容易に変動します、したがってこの時点では胎位がどうかという事は問題にしません、胎位不正の診断をしてもその意義はないのです、大多数の胎児は妊娠後期には自分で動いて正常な胎位になるのですから。だけれども、妊娠28週の時点で、医学的な検査で胎位に不正であった者は、産前の検査は必須ですし、時期を失しないように矯正しなくてはなりません。もし、妊婦の骨盤が狭く、胎児が大きく、胎位の矯正ができない場合には、分娩時の困難を見通して、早めに入院して、適当な時期に帝王切開して、母子の安全を図ります。
 中医学では:胎位不正には、虚実の区分があります。虚証は多く気血不足によります。実証は即ち気滞血瘀です。推拿手法を適当に組み合わせて、胎児不正を矯正します。



   (ニ)各類型の症状と推拿手法
  1.気血虚弱
 (1)症状表現
   ①臨月一月前に胎位不正。
   ②顔色に艶がない。
   ③神経が疲れて身体に力が入らない(神疲肢軟)。
   ④動悸がして呼吸がせわしい(心悸気短)。
   ⑤舌色は淡、舌苔は薄。
   ⑥脉は沈細で弱。

 (2)推拿の法

 ①摩揉腹部。手のひらで軽微に腹部をなでさする(撫摩)、力は軽く緩やかに、手に胎動を感触できるようにして、胎位の不正を復位します。毎回施術20回。









 ②点揉内・外関穴。手指で内、外関穴を指圧(点揉)、力は軽微に、このツボを揉むときには手のひらから上に推す、毎回点揉100回。








 ③点揉然谷・湧泉穴。手指で然谷、湧泉穴を指圧(点揉)、力は軽重織り交ぜて、毎回点揉50回以上。






 ④温灸命門・八髎穴、毎回温灸20回、皮膚が温もったら宜しい。











 ⑤活動下肢。軽い力で下肢の関節を動かす、おもに屈伸運動をする、毎回活動下肢20回以上。









 ⑥中薬を併用して、気血を補う、一日3回。薬物の処方は人によりますが、養血安胎、滋補保胎などの処方を参考にして選用します。


2.気滞血瘀
(1)症状表現
  ①妊娠28週の時に胎位不正。
  ②腰腹が時に疼痛する。
  ③顔色が黒い(晦黯)。
  ④胸やお腹が脹って苦しい。
  ⑤下腹が下に落ち込んで脹る(墜脹)。
  ⑥舌質は暗紅。
  ⑦舌苔は正常或いは膩。
  ⑧脉は弦澀。

 (2)推拿の手法

 ①点按三陰交・然谷穴。手指でツボを指圧(点按)、力は先に重く后で軽く、毎回点按50回以上。この二穴は針や灸をした方が効果が良いです。












 ②撫摩胸カン部。手のひらで軽微に胸からお腹をなでさする(撫摩)、上から下へと、毎回撫摩200回以上。








 ③横摩腰腹部。手のひらで軽微に腹部を横にさする、そっとやや力を加えて、往復して橫摩、毎回摩100回以上。












 ④双掌摩揉腹両側。手のひらで腹部の両側を同時になで揉む(摩揉)、力は先に軽く后に重く、毎回揉50回以上。










 ⑤温灸百会・足三里穴、棒灸で、毎回10分間以上。











 ⑥中薬を併用。活血養血、行気導滞の中薬を、一日3回、患者によって処方は決める。

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