ニ、便 秘



(一)概説
  大便が硬くてでない、あるいは排便の間隔が長い、便意があるのに排便が困難、これらを便秘といいます。中医学では大腸の伝導機能(蠕動運動)が失常したり、津液(水分)が不足すると、便秘になるとみます。便秘の原因は非常に多いのですが、主なものは排便の蠕動運動の欠乏、直腸への刺激不足、神経機能の失調などにより、糞便の腸管内での滞留時間が長すぎて、水分が沢山吸収され、糞便が硬くなってしまったために起こります。臨床では大きく虚証と実証に分類します。燥熱内結、気滞不行(熱が中にあって気がめぐらない)ものは実証に属し、気血虚弱、陰寒凝結(気血が弱って冷えている)ものは虚証に属します。
  症状表現
  @2日間以上にわたって排便が1回しかない;
  A糞便干硬、排便困難(糞便が硬くて排便が困難);
  B腹部脹満、或腹痛;
  C食欲不振。



(ニ)沐浴法
 温水浴あるいは鉱泉浴を採用します。水温は35〜38℃。入浴方式として、洗う時に両手で腹部を按摩して、わずかに汗を出します。中医学には“外竅得通、下竅亦利”(外の孔が通じれば、下の孔も通利する)という説があります。沐浴後、汗の孔が広がって、肺気が宣降(皮膚呼吸が)できるようになれば、大便排泄の助けになります。



(三)推拿の穴位と手法

 @手のひらで腹部を推按(スイアン、おしおさえ)します。剣状突起の下から始めて恥骨結合のところで止めます。上から下へと、力は深く緩やかに用い、往復10〜15回(図103)。



 A両手を重ねて、腹部に置き、臍を中心として、時計の方向に転しながら腹をなでます。はじめは軽く次第に重たく、はじめは小くしだいに大きくして、お腹全体を、なでまわします。約2分間(図104)。











 B手のひらを腰仙部にぴったりつけて、少しおさえつけながら、上下に擦り、皮膚がすこし紅くなり、温く感じるまで行います。(図105)。












 C手で大腿内転筋群を把握しますが、つまんで動かすようにします。左右それぞれ3〜5回。病人が腸鳴音を感じてそれが増加してくると宜しい(図106)。









 D手指で膝眼の下3寸の足三里および内踝(うちくるぶし)の上3寸の三陰交穴を点按(指圧)します。だるい、しびれる、はればったい感じが生じたら宜しい(図107)。






 E手指で両手の背側横紋の正中の直上3寸、橈骨と尺骨の間の支溝穴を点按(指圧)します。だるい、しびれる、はればったい感じが生じるまで行います(図108)。



(四)注意事項
 @飲食の調節に注意し、繊維を多く含む食品と果物をたくさん食べるようにします。
 A平素から決まった時刻に大便する習慣を養成し、平素から注意して身体を強くするように鍛煉します。
 B毎朝起きた後、冷たい水を一杯飲むと、習慣性便秘を解消する上で助けになります。年寄りや体の弱い者は蜂蜜水(毎回1〜2匙の蜂蜜を適量の水に加える)を適当に飲むと、腸を潤して通便できます。
 C淡い塩水を飲むと、腸の蠕動運動を増強します。
 D長期間にわたって便秘薬に依存するのは禁忌です。

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