十三、皮膚掻痒症



(一)概説
 皮膚掻痒症は、外観は正常な皮膚なのに激しい痒みが現れるもので、掻くと血のかさぶたや色素沈着など掻き痕ができます。本病の主な症状は皮膚に痒みがでることですが、焼かれたような、虫や蟻がはうような感覚のこともあります。痒みは時々痒くなるものですが、特にはなはだしいのは夜間です。情緒が激動したとき、天候が突然変わったとき、衣服で摩擦されたときおよび酒類など刺激性の食物を摂ったときに、誘発されたり劇しくなったりしやすいものです。寝る前になると決まって、耐え難いほど痒くなって、血がでるまで皮膚を掻き破って、痛くなってやっとやめる、というケースが多いです。そのために睡眠不足や精神不安になり、たびたび痒みの発作が起こると、掻いた痕が血のかさぶたや色素沈着などをおこして変わってしまい、時には続発性に感染を起こすこともあります。
 中医学では次のように説きます。本病は多くは、腸胃不和、蘊湿生熱、鬱于肌膚(胃腸の調子が悪くなって病理的な水分が停滞して熱を生み皮膚に鬱積した)によるか、あるいは血虚生風(血がうすくなって風が生じた)か、あるいは気虚衛外不固,風邪乗虚侵襲(皮膚の機能が低下して緩んだところに乗じて風邪が侵襲してきた)か、営血不足,肝腎失于濡養,生風生燥,阻于肌膚(血が不足して肝腎を濡養できなくなり風を生じて燥いてしまって、皮膚に障害をもたらす)になったものです。
  症状表現
  ①皮膚の外観は正常なのに皮膚掻痒が発生;
  ②痒みは起こったり止んだりするが、夜間が甚しい;
  ③たびたび発作がおこり、常に皮膚には掻き痕、血のかざぶた、色素沈着などがある;
  ④常にわずらわしく、不眠など。



(ニ)沐浴法
 温熱水入浴、あるいは薬浴法を採用して、“皮膚康寧方”選用して全身入浴すれば、祛風止痒、清熱除湿、透邪外達、護養肌膚(痒みを止め、熱をとり病的な湿気を去り、薬效が皮膚の病に達して、皮膚を護る)という作用があります。習慣的に温泉に入れば皮膚掻痒症に対して大変に良い治療効果があります。



(三)推拿の穴位と手法

 ①手指で肘横紋の橈側端の陥凹部曲池穴を点按(しあつ)。だるい、しびれる、はれぼったい感覚が生じたら宜しい(図190)。





 ②手指で両手の第1第2中手骨接合部の上方合谷穴を点按(しあつ)。だるい、しびれる、はれぼったい感覚が生じたら宜しい(図191)。



 ③拇指で膝蓋骨内上縁の上2寸大腿四頭筋内側頭の隆起部血海穴を点揉(テンジュウ、点状にもむ)。2分間(図192)。




 ④手指で内踝(くるぶし)の上3寸の脛骨の内後縁の三陰交穴を点按(しあつ)。2分間(図193)。

 ⑤手指で膝下3寸、脛骨前縁を外側にへだたること1横指の足三里穴を点揉(テンジュウ、点状にもむ)。3分間(図194)。





 ⑥手指で後項部を拿捏(ナネツ、つかまえつまむ)、上から下へと反復5回;次に手指で後項部両側の後髪際の上陥凹部風池穴を按揉(アンジュウ、おしもみ)、2分間(図195)。



(四)注意事項
 ①飲食上の注意として辛い刺激的な食物は少なくする。
 ②皮膚が痒くてたまらないときには、手のひらで軽く拍けば痒みは止まります、できるだけ掻きむしることは避けて、掻き傷から感染することを防ぐ。

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