一、疲労回復の沐浴推拿



(一)概説
  疲労は誰でも経験したことがあるように、ある種の無力感あるいは無気力感ですが、痛みに比べると少し複雑な感覚です。ただ、人によってストレスに耐える力は違いますから、疲労の反応・程度も違います。まる一日休息しても、反って疲労を覚える人がいますし、まる一日ばたばたと忙しくしたり、体力を使う労働をしても相変わらす精力に満ち溢れている人もあります。疲労は一般には精神状態を指すようですが、時には体力自身を指すこともあります。精神緊張、情緒異常が疲労や飽きていやになる気持ちを生むこともありますし、過労などの要因が疲労をもたらすこともあります。疲労の原因や程度にかかわらず、元気な精力を回復し、気持ちよくする方法があります。すなわち、沐浴後の推拿です。
 一晩睡眠しても、前日の仕事の疲労がとれず依然として倦怠を感じるとか、仕事のテンポが早くていやになっていらいらするとか、肉体労働や精神労働をし過ぎたとか、そのようなときに、最も適している疲労回復の方法は熱水浴のあと推拿をして、改めて精力を充満させることです。
 熱水浴は血液循環を促進し、舒筋活血、通経活絡(筋肉をゆるめて血に活力を与え、経絡の通りをよくする)という作用があり、体内の毒性の老廃物を排除し、筋肉中の酸素と栄養物質の供給を増します。推拿は身体の生理的な循環を促進改善して、体の気血を満ち溢れさせ、流れをよくして、その代謝作用を強め、筋肉の予備的な能力を増やし、神経系統の興奮性と協調作用を増強し、そうして疲労回復の作用をもたらすことになります。



(ニ)沐浴法
 熱水浴法を採用します。浴槽にお湯を入れ、温度は約38〜40℃前後とし、身体を20〜30分間浸けします。沐浴后、水分を拭いて、浴衣を着て、推拿を行います(図21)。鉱泉水浴、空気浴などを採用しても良いです。そして推拿も一緒にすれば疲労回復をすることができます。



(三)推拿の穴位と手法

 @両手をあらかじめ合わせてこすり暖めておいてから、顔にあてて、左右同時にこすり暖めます。鼻の側、目の周り、額、耳の側と順序良く顔を洗うように、回しながら1分ほど揉摩(ジュウマ、もみなで)します(図22)。





 A両手の母指球あるいは母指の指腹を耳の傍らの外眼角の外上方の凹陥する処=太陽穴の上において、時計回りの方向に30秒、また逆時計回りの方向に30秒間、按揉(アンジュウ、おしもみ)します(図23)。




 B坐位あるいは伏臥位をとり、両方の手のひらを腰のくぼみにつけ、同時に力を入れて下向きに腸骨まで擦ります。これを上下に反復して1分間行います。(図24)。













 C手指を用いて膝眼の下3寸、脛骨の外側の足三里穴を、約30秒按揉(アンジュウ、おしもみ)します(図25)。










 D手指あるいは小指球を足心につけて、速く擦り、暖かくします。両足交代に行います(図26)。

















 E手指で下腿の腓腹筋を捏拿(ネツナ、つかむ)しますが、上から下へと、温和に行い、だるい張ったような感じがしてきたら宜しいです(図27)。








 F手のひらを開いて、軽く下肢の前面、側面、后面を拍打します。上から下へと3回反復します。(図28)。











 G手指で肩、上腕を捏拿(ネツナ、つかむ)します。上から下へ、だるいはれぼったい感じがした宜しいです(図29)。



(四)注意事項
 @熱水浴は浴槽が必要です。水温は38〜40℃に保ちます、入浴時間は20分以上にします。
 A洗浴后は保温に注意して、感冒を防止します。
 B一般に洗浴推拿は夜就眠の前に行い、眠くなったらすぐに休みます。
 C体力強健な労働者やスポーツマンは、薬水浴を用いることができます。“舒筋活絡方”浸浴を選用し、その後推拿をすれば、速く疲労回復します。

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