三、腹瀉(下痢)



(一)概説
 腹瀉はまた泄瀉(下痢)とも言いますが、これは排便回数が多くなって、糞便が軟便あるいは水様便となるのが臨床の特徴的な症状です。一般に激しい下痢は外邪を受けたとかあるいは飲食の不摂生が引き起したものです。久瀉(慢性下痢)は抑うつ感や不安感、体質的な虚弱、病後の失調などが原因となります。病変部位は脾胃大腸と関係がありますが、とりわけ脾の関係が密接です。本病は一年の四季いつでも発生しますが、夏秋の季節に多くみられます。これは西洋医学で言うところの急、慢性腸炎、胃腸神経症などを含みます。
  症状表現
 ①大便が稀薄で水様である、回数が増多、毎日4~6回、甚しい時には日に10回以上に達する。
 ②一般に糞便中には膿や血は含まれず、裏急後重感もない;
 ③一年四季を通じて発病、夏秋の季節に多見;
 ④常に腹脹・腸鳴を伴い、あるいは腹痛が現れる。
訳者注:「脾」は東洋医学独特の概念です。いわゆる解剖学でいうところの「脾臓」ではなくて、すい臓・胆のう等の働きも含めて消化系統の器官全体の消化吸収の機能を主るものと私は解釈しています。「消化器」とか「消化機能」と訳すことにしていますが、ここでは胃大腸と続いていますので原文のままとしました。



(ニ)沐浴法

 熱水あるいは鉱泉水の局部浴を採用します。足湯ですが、水温は45~55℃とし、足を熱水中に浸し、毎回8~10分間(図109)。薬水による足湯を採用するときには、白果樹叶500gに水2000mlを加え煎煮して、よく液を取り出し、冷めないうちに両足を浸けます。あるいは鮮搾樹皮500gを用いて、水で煎じて足湯します。



(三)推拿の穴位と手法

 ①両手を重ねて腹部におき、臍を中心として、時計方向にお腹をなでます。3分間。暖かく感じたらよろしいです。(図110)。










 ②手のひらを腰仙部において、腰部の腎兪、命門および八髎穴を横擦(オウサツ、よこにこする)します。熱感が透るまで行います。(図111)。




 ③患者は俯臥し、滾法(コンホウ)を用いて脊柱の両傍を脾兪から大腸兪に至るまで治療します。滾法2分間、その後、擦法(サツホウ)で治療し、力は適度とし、熱感が透るまで行います(図112)。




 ④手指で腹部の臍の下3寸の関元穴を点揉(テンジュウ、点状にもむ)2分間。臍の下1.5寸の気海穴を2分間点揉(図113)。







 ⑤手指で腹部の臍の傍ら2寸の天枢穴を2分間点揉(テンジュウ、点状にもむ)(図114)。



(四)注意事項
 ①保温に注意し、過度の疲労は避け、飲食生活は規則的にします。
 ②生もの、冷いもの、刺激性のもの、油っこいものおよび消化の悪い食物は食べないようにします。

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