十一、遺精、早漏



(一)概説
 遺精とは性交によらないで自然に精液をもらす病症を指します。遺精には夢遺と滑精の別があり、夢の中で遺精するものを夢遺といい;夢に関係なく遺精し、甚しいときには覚醒時に精液を流す者を滑精といいます。夢遺あるいは滑精には軽重の別がありますが、発病の原因は基本的には一致しています。成年男子で、半月前後に1回遺精があり、他にこれと言った症状のない者は、生理的な現象です。もし3〜5日に一回、あるいはさらに頻繁に遺精する、はなはだしいときには白昼に精液が漏れる、そしてめまい、精神状態がすっきりしない、腰がだるくて脚に力が入らないなどの症状がある者は病気なので治療すべきです。現代医学では、病理的な遺精の多くは精神・神経の機能失調によるものであり、その他には前立腺炎、いくつかの神経官能症および慢性病によるものと認めています。
 早漏は性交時間が極端に短く、すぐに射精するものを指しますが、一般に三種の情況があります。男子の陰茎がまだ女性の方に接触していないのに;あるいは女性の外陰あるいは膣口に接触するや否や射精するもの;あるいは膣に挿入はできるものの、即刻射精してしまったり、陰茎が萎えて正常な性生活ができないもの。
 中医学では次のように説きます。早漏が起こるのは、多くは心神妄動,労神過度,房事不節(精神活動の乱れ、神経の使いすぎ、性生活の不摂生)、体質衰弱、湿熱下注(消化機能の不調その他の原因で体内に長く水分が停滞すると熱をもってくるといわれますがその湿熱が生殖器官に影響する)などが原因として関係します。原因はいろいろでも、その基本となる病気のメカニズムにはすべて腎不藏精,陰精失守,或相火亢盛,精液不固(腎は精液をしっかり蔵しておくべきなのですがそれができなくなって、精液を守れなくなっている状態 、あるいは腎も陰陽のバランスがとれていなくてはならないのですが、陽が盛んになりすぎて、陰である精液をしっかり保てなくなっている状態)によって起こったものといえます。
  症状表現
  @遺精、早漏;
  A頭暈、心悸、耳鳴,精神萎糜,腰腿酸軟(めまい、動悸、耳なり、精神に活気がなくなる、腰や下肢がだるく力が入らない)などの症状を伴う;
  B重い者は陽痿(インポテンツ)を伴う。



(ニ)沐浴法
 冷水浴法を採用して、水温は20℃以下にして水をそそいで陰茎を洗う、毎晩寝る前に行い、毎回3〜5分間。また水温50〜60℃で足湯を行う、毎回10分間。また、薬水で局部を洗ってもよろしい。五倍子40gを、とろ火で30分間煎じて、再び適量の湯冷ましのぬるいお湯を加え、35〜40℃前後として陰茎を、約5〜10分間洗います。温泉も補助治療になります。



(三)推拿の穴位と手法
 1.遺精

 @手を重ねて、お腹の臍のところに置き、臍を中心に、時計まわりに廻しながら転しながら腹を摩(なでる)。次第に範囲を広げて、お腹全体を按摩しながらまわります。5分間。腹部に温熱感が出たら宜しい。(図175)。






 A手指で腹部の臍の下3寸の関元穴を2分間点揉(テンジュウ、点状にもむ);臍の下4寸の中極穴を2分間点揉。だるい、しびれる、はれぼったい感覚が生じたら宜しい(図176)。






 B手のひらを腰臀部にぴったりとつけるのですが、はじめにワセリンを少し塗っておきます。手のひらを軽快に迅速に直線的に擦摩(サツマ、こすりなでる)。腰臀部に熱感が透ったらやめます(図177)




 E横に寝て一方の手で陰嚢を握り、他方の手でへその下を搓(こする)。片方の手で81回、そうしたら手を代えて同じように。反復2回(図178)。








 D手のひらで足底部の涌泉穴を搓擦(ササツ、こする)。左右それぞれ3分間。温熱感が出たら宜しい(図179)。

 E推拿が終わったら、立位をとって、臀部と大腿を引き締めて狭め、深く息を吸い、会陰部(陰嚢と肛門の間)を引き上げると同時に肛門を収縮させる。息を吐くときには全身を弛緩させる。反復して約2分間。遺精の治療に対して有効です。


 2.早泄

 @両手を重ねて下腹部に置き、時計回りにまわして摩擦、約3分間。腹部に温熱感が出たら宜しい(図180)。












 A手指で腹部の臍の下3寸の関元穴を点按(しあつ)、臍の下1.5寸の気海穴を点揉(テンジュウ、点状にもむ)、それぞれ約30秒。だるい、はれぼったい感じがしてきたら宜しい(図181)。









 B手のひらで腰臀部を推擦(スイサツ、おしこする)、2〜3分間;手指で腰部の第2腰椎棘突起の下傍らに開くこと1.5寸の腎兪穴を点揉(テンジュウ、点状にもむ)、約2分間(図182)。

 C手指の指腹で陰茎を擠捏(セイネツ、両側からつまむ)、拇指は陰茎の包皮小帯に、食指と中指は陰茎の別の面に、正に亀頭の冠状縁の上下を穏やかに捏圧(つまみ圧迫)4秒間、その後突然緩める、圧を加える方向は前から後ろへ一致させ、けっして方向が別々にならないようにします。必要な圧力は陰茎の勃起した硬度に比例します、充分勃起していれば、力を入れて捏擠(ネツセイ、つまんで両側からおさえる)、陰茎が弛緩しているときには中等度の力で捏擠します。力が適当であれば、一種の圧迫感はありますが不愉快な感じはありません。捏擠は陰茎を硬くし少しの間射精を遅らせることができます、通常は10〜25%遅らせることができます。


 D手指で内くるぶしの上3寸の三陰交穴を点按(しあつ)、だるい、はれぼったい感じがしてきたらやめます(図183)。

 E推拿がおわったら、立って、呼吸運動をします。息を吸う時に陰嚢、陰茎と肛門を収めてあげるようにし、息を吐くときに時にはゆるめます。反復して約3分間。



(四)注意事項
 @日ごろから体育鍛煉に注意し、仕事と休養のバランスをとる。
 A良好な生活習慣を養い、性生活の節制に注意。
 B寝る前には心境を平静に保つ必要がある。刺激的なエッチな小説、テレビ、ビデオを見るのは不要。
 C思想の負担は取り除き、良くない習慣やめる。

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