十二、蕁麻疹



(一)概説
 じんましんは、よく見られる過敏性疾患の一種です。多くは食物(魚、えびなど)、薬物、寄生虫、化学物質(油漆など)、物理(冷熱など)の刺激によって引き起こされます。発病時には突然皮膚が痒くなって、同時に鮮紅色あるいは白磁色の膨疹が現れます。周縁ははっきりしていて、大きさ・形はさまざまですが、相互に融合して平らな広がりになります;人によっては皮疹は出なくて、ただ皮膚が痒く、灼熱感があって、緊張して硬い感じがあるだけの人も有ります。病変は喉頭の粘膜や胃腸の粘膜に出現して、呼吸困難、悪心嘔吐、腹痛下痢などの症状を引き起こすこともあります。急性のものは急に発病して、一週間前後で癒えます;慢性のものは反復して発疹して数月、はなはだしいときには数年にわたることがあります。現代医学では、じんましんは皮膚・粘膜の小血管が拡張して浸透性が増加して生じる一種の局限性の水腫反応であり、病因は複雑で、比較的多いのは、ある種の食物、たとえば魚、蝦(えび)、蟹(かに)、肉、卵、牛乳などを食べた;ある種の植物、たとえば漆樹(うるし)、蕁麻(いらくさ)などに接触した;花粉、灰塵、真菌抱子などを吸入した;蚊、蜂など昆虫に咬まれた;ある種の薬物、たとえばアスピリン、抗生物質など;物理的素因、たとえば日光、寒冷、摩擦など;ひいては精神緊張など、すべてじんましんを発生させることができます。
 本病は中医学では次のように説きます。“癮疹”(インシン)の範疇に属します、風邪蘊結皮膚(外邪の一つである風邪が皮膚にうっ積している)、あるいは禀賦不耐(生まれつき過敏体質である)、油っこいものや味の濃いものを過食して胃腸の調子を崩した、湿熱鬱于肌膚(湿熱が皮膚にうっ滞した)などによって起こります。
  症状表現
 ①常に先ず皮膚が痒くなり、同時に鮮紅色あるいは白磁色の膨疹 が現れます。大きさ・形はさまざまで、発生部位は不定;
 ②膨疹の持続時間は一定ではなく、慢性のものは反復して発作、膨疹が消えたあと痕跡はのこらない;
 ③患者によっては皮膚スクラッチテスト陽性;
 ④皮膚の掻痒感および灼熱感、重症のものは全身症状を伴う、たとえば高熱、頭痛、哮喘(コウゼン、ほえるようなせき)、喉頭の水腫、悪心、嘔吐、腹痛、下痢など。



(ニ)沐浴法
 薬水沐浴にして、“皮膚康寧方”を選用します、20~35分間煎じて、濾してカスを去り、適量の温水を加え、全身あるいは局部を浸します、毎回15~25分間;あるいは温熱水の入浴。温泉も大変良い治療方法。



(三)推拿の穴位と手法

 ①手指で後項部を拿捏(ナネツ、つかまえつまむ)、上から下へ、反復5回(図184)。







②手指で第7頚椎棘突下の陥凹部大椎穴を点按(しあつ)、その後、後項部の両側の後髪際の上の陥凹部風池穴を、左右それぞれ点按2分間、だるい、しびれる、はれぼったい感覚が生じたら宜しい(図185)。




 ③手指で両手の虎口(=手の背側で第1第2中手骨の接合部)上方の合谷穴、肘を屈曲してできる横紋の橈側端の陥凹部曲池穴を点按、毎穴点按2分間、だるい、しびれる、はれぼったい感覚が生じたら宜しい(図186).






 ④滾法(コンホウ)をつかって背部の膈兪、肝兪、胆兪、脾兪、胃兪などの足太陽膀胱経の穴を滾(コン、手背をころがす)、約5分間(図187)。





 ⑤下肢膝窩の委中穴、膝蓋骨内上縁の上2寸の大腿四頭筋内側頭隆起部の血海穴、大腿外側膝窩横紋の上7寸、直立して手を垂らし中指の止るところ風市穴、内踝の上3寸脛骨の内後縁の三陰交穴、各穴点揉(テンジュウ、点状にもむ)2分間、だるい、しびれる、はれぼったい感覚が生じたら宜しい(図188)。



 ⑥もし腹痛を伴えば、手指で腹部の真ん中臍上4寸の中脘穴、臍の傍ら開くこと2寸の天枢穴、各穴点揉(テンジュウ、点状にもむ)3分間(図189)。



(四)注意事項
 ①痒みが忍びがたい時に、手指でかきむしってはいけません、手のひらで拍打すれば痒みがとれます。
 ②魚、えびなどの海産物とねぎ、にら、とうがらし、酒などの刺激性食物を食べない。

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