十五、痔 瘡



(一)概説
 痔瘡はまたの名を痔、痔核と言い、およそ肛門の内外に小さな肉が突出しているものを均しく痔と称します;肛門の内にあるものを内痔といいますが、内痔は内痔静脉叢が拡大し曲張してきて成るもので(直腸内静脈叢静脈瘤、歯状線の上にあり、一般には痛みはなく、三期に分けることができます。初期;痔核は大変小さく、紫紅色で、質は柔軟、排便するごとに摩擦で出血し、出血はスーッとひとすじに出たり、あるいはぽたぽたと続けて出たりします。無痛で、痔核は肛門外に脱出することはありません。二期;痔核はやや大きく、紫黒色で、粘膜は肥厚し、排便の時に痔核が肛門外に出ますが、排便が終わると自然に元に戻りますし、出血量は一般に少量です。三期;痔核は灰黒色になり、質はやや硬く、粘膜は肥厚し、粗くなりますが、便血は少いです。痔核は排便したり、下を向いてうずくまったり、咳嗽(セキ)をしたりあるいは歩いたりした時などに脱出しますが、手で推したりあるいは横になれば元に戻すことができます。炎症や水腫(はれ)が発生し嵌頓(カントン、はまりこむ)状態になり疼痛を引き起こし、排便も困難になるなどの症状があります。肛門外にできるものを外痔といいます、この痔は痔下静脉叢(外痔静脈叢)が拡大し曲張してできるもので歯状線の下に位置しており、質はやや硬く、一般に無痛で、出血はないが、ただ肛門部に異物感を覚えます。便秘して排便時に大いに力んだりあるいは劇しい運動の後、痔静脉が破裂します。血塊が凝結して皮下に血栓を形成すると、肛門に突然の劇痛が走り、出現した腫物は、少し接触しても疼痛を引き起こします、これを血栓性外痔と言います。内外ともに有るものを混合痔と言いますが、混合痔は直腸上、下静脉叢が同時に拡大、曲張、延長して起こります。ですから、歯状線の上、下方ともに痔核があり、常に肛門外に突出しており、粘膜は常に刺激を受け、粘液の分泌量は多く、肛門の周囲は湿って不潔、掻痒と炎症があります。したがって痔核は腫痛し、掻痒、流水、出血等の症状があります。通称痔瘡という名称の所以です。
 中医学では次のように説明します。気血不調,絡脉瘀滞、蘊生湿熱(気血が不調になり、気血が流れる細い通路である絡脉が滞り、湿熱が包み込まれるように生まれる)が痔瘡の成因である。長時間うずくまったり、坐ったり、立っていたりといった姿勢を続ける、あるいは常習便秘などが痔瘡発生の常見される原因である。
 症状表現
 ①常に肛門出血があり、出血は排便前に滴血あるいは排便後に出血;
 ②肛門には常に紫紅色の腫物が突出、甚しいときには腫物が脱出、容易には納められない;
 ③時には腫脹疼痛をともない、あるいは掻痒(かゆみ)がある;
 ④もし出血のひどい者は、そのために貧血をおこすことがある。



(ニ)沐浴法
 局部温水浴を採用して、毎日排便後と就眠前に、それぞれ1回洗浴します。毎回10分前後、水温は30~38℃前後に保つ。あるいは薬物煎湯を選用して先に湯気を当ててから後で局部を洗います。薬用;苦参60g、蒼朮40g、黄柏40g、枯礬10g、丹皮30g.地膚子30g。水煎してカスを去り、液をこした後、まず湯気を当てその後洗う、毎回10~15分間。晩に洗浴した後、推拿を行う。



(三)推拿の穴位と手法

 ①手のひらで臀部から大腿部まで按摩(おさえなでる)10分間(図202)。






 ②手のひらで両側の臀部を按揉(アンジュウ、おしもみ)、約5分間(図203)。







 ③手指で仙骨部を捏拿(ネツナ、つかむ)、反復して3分間(図204)。








 ④手指で腓腹筋を握捏(アクネツ、にぎりつまむ)、あるいは大腿内側部を握捏2~3分間(図205)。









 ⑤拇指あるいは食指の指腹で大腸兪、小腸兪、次髎、会陽、承山等の穴位を按圧(おさえる)、各穴を按揉(アンジュウ、おしもみ)2~3分間、しびれる、だるい、はれぼったい感じがしてきたら宜しい(図206)。







 ⑥手指の指腹面で肛門の上を軽く柔かく上下に摩擦5~10間(図207)。















 ⑦患者は仰臥して、両脚を上に向けて高く垂直に挙げ、手指で腰部の大腸兪穴を按圧(おさえる)し、両脚を交替に上下に自転車を漕ぐ時のように動かす、毎回5~10分間(図208)。



(四)注意事項
 ①毎回、排便の後、温熱水で局部を洗浴することを堅持。
 ②適当な鍛煉を堅持する。坐る、うずくまる、立つなど同じ姿勢を長時間続けるのは良くない。
 ③規律ある生活を保持し、時間どおりに排便し、過労を避ける。
 ④辛い食物は少なく食べて、野菜類を多く食べ、便通を良い状態に保持する;もし長期間大便が硬いときには、毎日朝起床したときに1杯の蜂蜜水を飲む。
 ⑤リズミカルに、排便を我慢するときのように緩やかに肛門をあげるように引き締め、その後緩やかに弛緩させる、ハイ締めてハイ緩めてと交替する。この練習は、直腸の末端の粘膜下と肛門の皮下の静脈叢の血流の回流を促進することができる。この方法は混合痔と肛門裂のある者には宜しくない。

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