一、感冒(発熱)



(一)概説
 感冒は傷風ともいいます。多くは鼻から入った病毒が引き起しますが、臨床症状としては発熱、悪寒、頭痛、鼻塞、流涕、噴嚏(フンテイ、くしゃみ)等が主要な表現です。中医学では感冒は六淫の邪傷を感受して肺衛が引き起こした外感疾病(六つの病邪を受けてしかも肺と皮膚の護りが失調して引き起こされる外からの病気)とみなします。病邪が肺衛に侵襲して生じる主要な病理変化は、病邪による肺気失宣降、衛気失去調節(肺がスムーズな呼吸機能を失い、皮膚も調節機能を失う)であり、これによって各種の肺衛(肺と皮膚)の症候が出現します。もし病情が比較的重く、一時期に広範囲に流行し、症状の多くが似ている場合には流行性感冒といいます。われわれのこの分類は西洋医学の普通型感冒と流行性感冒の分類と類似しています。
  症状表現
  @発熱悪寒、無汗あるいは少汗、肢体酸楚(身体がだるくてつらい);
  A頭痛、鼻塞不通、流涕噴嚏(はなみずとくしゃみ);
  B咽痒、咽乾痛、咳嗽;
  C年間を通じて発症するが、冬春に多く見られ、全身症状には較重があり、広範囲に流するものは流行性感冒です。



(ニ)沐浴法
 熱水浴にしますが、熱水入浴すればいいです。水温は40℃前後とし、入浴している時間は15〜20分間。薬水浴を行うときには、“退熱解表方”(前出、以下同)を選び、顔の薫蒸をしてもいいし、全身入浴してもいいです。条件のある人は温、熱鉱泉水の入浴もいいです。



(三)推拿の穴位と手法

 @両手の拇指で両眉の間の印堂穴を上下に推揉(スイジュウ、おしもみ)5回。つぎに同じく両拇指で印堂穴から、分れて左右に向かい太陽穴まで推していきます。繰り返して5〜10回(図96)。





 A拇指の指背あるいは食指の指腹で、鼻翼の傍ら迎香穴を点按(指圧)してさらに鼻のほとりを上下に推擦(スイサツ、おしこする)します。2分間(図97)。







 B両手の拇指腹を後頭骨の下の僧帽筋の外側、髪際の凹陥部の風池穴におき、点按(指圧)2分間、だるい痛みが走ればよろしいです(図98)。








 C両方の手のひらと指をすこし屈曲して、洗顔するときのように顔を擦ります。耳の前、太陽穴、および上額部を重点に、局部が発熱したら宜しいです(図99)。







 D手指で手背の拇指と食指の中手骨の間、やや食指側に寄ったところの合谷穴を点按(指圧)します。、約1分間(図100)。




 E両手の指を組み合わせて頚部を抱え、頭をやや後ろにたおして、手のひらの付け根で後頚部を反復して搾るように持ち上げます。約1分間(図101)。






 F手のひらで背腰部の督脉と膀胱経の上を、反復して上下に按揉(アンジュウ、おさえもみ)します。約3分間(図102)。



(四)注意事項
 @入浴する時には、水温の保持に注意して、ぬる過ぎないようにしなくてはなりません。洗いながら、同時にタオルで身体や四肢を揉摩(ジュウマ、もみなでる)して、わずかに汗がでてくれば最高です。
 A入浴後には身体を拭いて干さなくてはなりません。推拿をするときには保温に注意し、寒さで再び風邪を受けないようにします。
 B推拿が終わったら、暖かい水を1杯のみます。
 C感冒のときには油っこい食事は摂りません。

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