五、美肌保持の沐浴推拿



(一)概説
 美を愛するのは、人間の天性です。社会の進歩と科学の発展にともない、人類の物質的な文化水準が次第に向上するにつれて、美容は次第に人々に重視されるようになって来ました。人々は自分の肌がきめ細かで柔らかく、健康で美しい肌であること、みめ麗しい容貌であることを希望します。ですから、合理的に皮膚を護ることは日常生活において欠かせないことの一つなのです。美容の立場からみれば、皮膚は美容の主な対象ですし、美しくしたい部分です。皮膚は人体の最大の器官で、全身の表面を覆っています。皮膚の総面積は1.5~2㎡で、体重の約5%を占めています。皮膚はその他の組織、器官と同じように、多くの生理的機能を備えていて、全身の機能活動に関係し、有機体としての身体と外界の環境との平衡を保って、人体の健康を維持し保護しています。皮膚は人体の健康と美しさの重要な構成部分であるとともに、身体の健康状態の重要な指標であり、それを体現するものです。
 沐浴と推拿は肌膚の健康美を保つ最良の方法です。人体の体表は身体が外界の各種の刺激に抵抗坑する最初の防御線です。測定したところでは、正常な人体は皮膚上2.54㎠ごとにおよそ3200万個の細菌があります。比較的大きな人の場合、全身の皮膚の上には全部で約1000億の細菌があることになり、その数量は驚くべきものです。体表は多くの微生物の侵襲に抵抗する働きがある以外に、さらに各種の刺激を感受したり、ビタミンDを作り出したり、体温を調節したり、体内の老廃物を排泄するなどの多種類の作用をもっていて、人体の健康にとっては非常に重要な役割を担っています。皮膚は汗を出しますが、塵りと混って常々汚垢があると、汗腺をふさいでしまい、汗の出を悪くし、人体の新陳代謝に影響し、細歯を生長させ、時には毛嚢炎、あせも、癤(セツ、小さなできもの)、癰(ヨウ、悪性で多く首や背中にできるもの)、膿庖瘡などの皮膚病を引き起こします。こういう訳ですから、身体を洗うのが好きでない人は、健康で美しい肌をもつことはできません。洗浴すれば細菌を取り除いて、皮膚を清潔することができますし、推拿は気血を調えて流れをよくし、皮膚をきめ細やかにし、皮膚の弾力性を増加させる作用があります。美しくありたい人は、まずもって、身体を洗うことを愛し、清潔を愛することです。。



(ニ)沐浴法

 温水浴を採用しますが、水の温度は35~38°Cが宜しいです。浴槽を使ってもいいし、シャワーでも良いし、鉱泉水も良いです。薬水浴は、“香身洗澡方”を選びます。一般に身体を浸けている時間は15~30分間とします。洗うときには、海綿あるいは純綿のタオルを使ってらせん状に皮膚を軽く擦揉(サツジュウ、こすりもみ)します(図47)。



(三)推拿の穴位と手法

 ①推拿の部位が手、腕、腿、頚、胸、腹、脚の場合には、乳液あるいは按摩用の粉を塗って、手指を滑りやすくすると同時に皮膚を滋養します。軽くて柔らかい按摩手法を用いて、上から下へと皮膚を揉按(ジュウアン、もみおさえ)し、按揉(アンジュウ)しながら移動します。一箇所について3回反復します。(図48)。




 ②手で軽く皮膚を上から下へとたたきます。3回反複します(図49)。


















 ③上肢と下肢を手指で捏拿(ネツナ、つまみもみ)します。軽くやさしく行わなくてはなりません(図50)。







(四)注意事項
  ①温水洗浴中に、更に有効に垢を取るために、適当な入浴用洗剤を使わなくてはなりません。強アルカリ性の石鹸は皮膚に刺激があり、皮脂を洗い落とし過ぎて、皮膚を粗くし、脱屑が甚しいと乾燥して皮膚が裂けてきますので、この種の石鹸を使うことはできません。弱アルカリ性の化粧石鹸かあるいはアルカリを含まない石鹸を使えば、刺激性がわりに小さく、しかも皮膚を清潔にすることができます。皮脂が多すぎたり鮫肌の方は、硫黄石鹸を使うのが良いです。
 ②推拿をするときには手法は軽く柔かく、動作は自然に、按摩の動作は必ず筋群の方向に沿って行わなくてはなりません。また、力が強すぎたり、摩擦し過ぎたりしないようにしましょう。
 ③平素から適度の鍛煉をして、皮膚と筋肉の弾力性を増加させましょう。皮膚をあまり日光にさらさないようにしましょう。

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