十、更年期障害



(一)概説
 更年期障害は中年期から老年期に至る過渡的な段階(女性は通常45~55歳、男性は通常50~60歳)にあって、体内の代謝機能の減退、内分泌機能の失調、自律神経の乱れによって起こる一連の症状を指します。臨床表現は頭暈耳鳴,心悸失眠,煩操易怒,烘熱汗出,五心煩熱,無端惊恐,憂鬱猜疑;或浮腫便溏,腰酸骨楚,倦怠乏カ,経行紊乱等(めまい耳鳴り、動悸不眠、イライラして怒りやすい、ほてって汗が出る、手の平・足の裏・みぞおちがほてる、わけもなく驚いたり恐れたりする、憂鬱で猜疑心が強い;あるいはむくみや水様便、足腰がだるくてつらい、倦怠感があってカが抜けたよう、月経が乱れるなど) 
 本病は中医学では“鬱証”、“不寝”、“心悸”などの病証の範疇に属します。中医学では、総て腎気衰退,衝任虧損,陰陽失調(腎の機能が衰えて、生殖活動と関係の深い衝脈・任脈という経脈が損なわれて、陰陽のバランスが失調した)のために起こるとします。
  症状表現
  ①50歳前後の女性と55歳前後の男性にみられる;
  ②症状は複雑で、いろいろである、心臓血管系統の不安定な症状、たとえばほてって汗がでるなど;精神神経症状、たとえば感情の起伏が大きい、不眠、健忘、イライラして怒りやすいなど;新陳代謝障害の症状、たとえばむくみ、肥満など;生殖器官の症状、たとえば性器の萎縮、月経不調、インポテンツなど;
  注意;器質性の病変を排除すること。



(ニ)沐浴法

  37度ぐらいの温水入浴を毎回15~20分間行い、入浴中に手またはタオルを使って自分で腰や、両脇きと下腹を搓擦(ササツ、こする)します(図167)。また習慣的に温泉に浸かったり日光浴をします。



(三)推拿の穴位と手法
 ①両手で拳をつくり、拇指は伸ばし、食指と中指はよこにして尾骨につけて、両手を交替に脊柱に沿って上に向かって推し進め、同時に両手の拇指で皮膚を軽くつまんで持ち上げ、つまみながら上に推し進み、まっすぐ第7頚椎まで来たら止ます。第1遍と第4遍はただつまんで前に進むだけで上には上げません、第2および第3遍は毎3回つまんで推し進むごとに1回上につまんで上げます、そのときに“あ!あ!”と声が出ることもあるでしょう。4遍で終わりとします。その後、軽く柔らかく腰背部を按摩して、皮膚が少し紅くなったら宜しい(図168)。


 ②両手を前胸部において、手のひらで斜めに上から下へと脇胸部を推擦(スイサツ、おしこする)します。25回(図169)。












 ③手のひらで腰臀部を、先ず少量のグリセリンを塗ってから、上下あるいは左右に直線的に往復運動、軽快に急速に擦り、局部の皮膚が発熱したら宜しい(図170)。






④両手を重ねてお腹に置き、臍を中心として廻して摩擦する。先ず時計周りに、次第に範囲を広げて、約3分間、次に反時計周りに摩擦、3分間。腹部に温熱感が出たら宜しい(図171)。
 









 ⑤両手で顔を搓擦(ササツ、こする)、順次、鼻の傍ら、眼の周囲、額、耳の傍らと洗顔するときのように、反復摩転(マテン、なでまわす)2分間(図172)。





 ⑥両手の指を少し曲げて、開いて、頭皮の上に挿しこみ、前から後へと按摩。反復2分間(図173)。






 ⑦手指で下腿の膝関節の外膝眼の下3寸の足三里穴、内踝(ウチクルブシ)尖の上3寸の三陰交穴、内踝下方の陥凹部照海穴を、だるい、しびれる、はれぼったい感覚が生じるまで点按(指圧)(図174)。



(四)注意事項
 ①のびのびとした心、気持ちを保って、精神的な刺激を避ける;
 ②適当に体育鍛煉をする;
 ③入浴後の推拿は少なくとも毎週2回は堅持する、あるいは毎週の沐浴は1回とし、推拿を2~3回;天候の暑いときには、毎日沐浴後の推拿を行えば、症状の解消が大変速くなります。

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