二、寿命を延ばし病を除く推拿


(一)沐浴後の推拿のすばらしい作用
 1.疏通経絡,調暢気血:(経絡を疏通して、気血が順調に流れるようにする)
 経絡は全身に分布しています。内は五臓(心、肝、脾、肺、腎)、六腑(胃、大腸、小腸、膀胱、胆、三焦)に連なり、外は筋肉、四肢、九竅(口、耳、眼、鼻、前後二陰)及皮膚、筋(スジ)、骨等の組織に達し、これらと密接に連なって一個の協調統一的な有機体を成しています。経絡は気血が運行する通路で、人体の気血、津液などの栄養物質は、主に経絡を通過して全身に輸布され、その濡養温煦等の作用を発揮し、そうして身体の正常な生理機能を維持しています。
 経絡は、人体の各部にあってその分布している関係は“内は臓腑に属し、外は四節に絡す”(内は臓腑につき、外は四節につながる)です。また一面では経絡を通る気血は人体の各所に注いでいます。また別の一面では経絡は病理を反映しています。ですから、経絡は治療効果を伝達する重要な経路なのです。臓腑の機能失調、病理変化はそれに相応する経脈の循行部位に正常な部位とは異なる各種の症状と現象を現わします。陽虚に邪が乗じている状況の下では、経絡は病邪が伝注する経路となり、病邪は経絡を通過して所属する臓腑に影響します。
 まさに、人体に疾病が発生したときは、邪と正がお互いに争っており、陰陽は失調し、経絡の気もこれに随って逆乱し、そして営衛気血の運行は阻まれ、気血は滞り、したがって“不通則痛”(通じざれば痛む)などの病変が発生します。相応する経穴上に沿って推拿按摩を行えば、経絡を奮い立たせて疏通させ、経気を調節して、気血を運行させて、疾病を除くことができます。
 
 2.扶正去邪,調節功能:(正をたすけて邪を去り、機能を調節する)
 疾病の過程は、昔からの説によれば、正気と邪気が矛盾し双方が相互に闘争している過程であり、正気が勝てば病は退き、邪気が勝てば病が進みます。したがって疾病の治療に当たっては、一面では正気をたすけて、正気が邪気に勝つようにする必要がありますし、別の一面では病邪気を除いて、邪が去り病が収まるようにしなくてはなりません。正と邪の力量を比べて、終始、健康に向かって有利に転化するようにしなくてはなりません。
 一般に言われているのは、正をたすけるには補法を用います。“虚則補之”(虚すればすなわちこれを補す)。推拿の補法は比較的軽い刺激の手法を採用して、身体を興奮させる作用があるようにして、正気を助け、その不足を補い、低下している体の機能を正常に回復させます。邪を去るには瀉法を用います。“実則瀉之”(実すればすなわちこれを瀉す)。瀉法は比較的強い刺激の手法を用いて、疏泄し病邪を除去して、その有余を瀉して、亢進している身体の機能を正常に回復させます。去邪と扶正は、異なるものを含んでいる二種類の治療方法ですが、これらは相互に用いて、互いに補い助け合って成り立つものです。扶正は、正気を強くして、病邪を制御し駆逐するのを助けます。一方、去邪は病邪の侵犯・妨害と正気の損傷を取り除いて、正気を保存し身体の正常な機能の回復を有利にします。

 3.平衡陰陽,調理臓腑:(陰陽を平衡させ、臓腑を調整する)
 陰陽学説は、中医学の理論体系の各方面を貫いています。人体内部の一切の矛盾闘争と変化は均しく陰陽を以って概括することができます。たとえば、臓腑、経絡に陰陽があり、気血、営衛、表裏,昇降などはすべて陰陽に分属しています。病邪の人体に対する作用は、人体の陰陽の相対的な平衡を破壊して、臓腑の気機の昇降を失調させ、気血の機能を紊乱させ、そして一系列的な病理変化を作り出します。この病理変化は、均しく陰陽の平衡失調の範疇に属します。陰陽の平衡の失調は疾病の内在的因子であり、一切の疾病の発生・発展をはじめから終わりまで貫いています。いわゆる《景岳全書・伝忠録》で“医の道は複雑だとはいえ、これを陰陽の一言を以って表現できる”と説いています。疾病の発生・発展の根本原因は陰陽の平衡の失調ですから、陰陽を調整し、その不足を補い、有余を瀉し、陰陽の相対的な平衡を回復することが、治療の基本原則です。
 相関連する兪穴を選用して、相対応する推拿手法を採用して妥当な刺激時間を決めれば、陰陽の偏盛偏衰を調節し、臓腑の機能活動を調節することができ、それを正常な状態に回復させることができます。たとえば、腸の蠕動が亢進している者は、腹部と背部にある相応する穴位上に適当な推拿を行えば、亢進している者は抑制されて正常に回復します。この種の陰陽を調整する作用は経絡を通過して、気血に作用を起こさせることなのです。推拿按摩が陰陽、臓腑の偏盛偏衰、偏虚偏実の病理状態を除去してしまえば、疾病は回復してしまうのです。

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