六、性欲高揚の沐浴推拿




(一)概説
 “飲食男女、人之大欲存焉”(食欲と性欲は人間の基本的な本能である)(《礼杞・礼運》)。
 これは性は人間の本能でありまた自然の傾向であること、人間生活の重要な内容であることを説明しています。過去において、われわれは性に対するタブーは最も厳しいもので、色情、淫蕩、洪水や猛獣のように恐れるべきものとみなしてきました。しかし実際には、これは生存していく上で不可欠な重要部分であって、その自然的な性は人間の本能ですし、その社会的な性はすなわち性生活の調和と充足を表現しますから、生理的にも、心理的にも喜びでほっとするところがあれば夫婦の感情も融合して家庭も幸福になります。
 正常な性生活は人類の天性が求めるところであって、これは生理的にも生活情趣の上からも不可欠なものです。現代医学と心理学の研究は次のように認めています。正常な性生活は体内の各種の生理機能を協調させ、性ホルモンの正常な分泌を促進し、そしてこれは健康な心理的な要求であると。
 男女の間の性生活には愛情が前提です。婚姻の形式が整っているというだけではなく、内面的な愛情がなくてはなりません。健康的で、和やかで、打ち解けた性生活は夫婦の愛情を深めるだけでなく、婚姻生活を充実させ、家庭を幸福にする源泉です。こうした性生活は、夫婦の心身を健康にし、気持ちを和らげ、心の修養をし、長生きをするための保障であるということが更に重要です。気持ちよい沐浴と、保健推拿と組み合わせれば、性欲を増進し高揚することができます。



(ニ)沐浴法
 温水浴を採用しますが、シャワーでも入浴でもよいですが、水温を高くする必要はありません、25〜30℃が宜しいです。薬水浴を採用するのも良いですが、そのときは“補腎壮陽方”を用います。あるいは鉱泉水の坐浴または前陰をシャワー式に洗っても良いです。



(三)推拿の穴位と手法
 1.男性

 @手掌全体で腰部の命門、腎兪穴を揉擦(ジュウサツ、もみこすり)します。発熱したら良しとしますが、約2分間です。その後、下腹の関元、気海穴を点按(テンアン、しあつ)します(図51)。





 A片方の手で軽く陰嚢を抓住(ソウジュウ、つかむ)し、按圧(アンアツ、おさえる)し、放鬆(ホウショウ、ゆるめる)します。25回繰り返します(図52)。








 B手指で陰嚢と肛門の間の会陰穴を点按(テンアン、しあつ)します。25回繰り返します(図53)。




 C手指で肛門の周縁を按揉(アンジュウ、おさえもみ)します。約2分間(図54)。







 D両手を重ねて下腹の上に置き、両手に同時にカを入れて、手のひらで下腹(上は臍から、下は恥骨の陰毛線の下方あたりの恥骨結合まで)を旋転摩擦(円を描くようになでこする)します。約2分間(図55)。












  2.女性

 @手で腰部の命門、腎兪穴を横に摩(なで)ます。約2分間で発熱します。その後、手指で下腹部の関元、気海穴を点揉(テンジュウ、てんもみ)します(図56)。






















 Aあなたの夫を啓発して、もっとも敏感に気持ちが高ぶるところを彼に知らせて、軽く摩擦(マサツ、なでこする)してもらいます。


 B手指で長強穴を点按(テンアン、しあつ)します。、ツボは肛門と尾骨端の間です。指圧15回、動作は軽くなくてはいけません(図57)。






 C手指で軽く肛門周縁を軽く揉按(もみおさえ)します。約2分間(図 58)。







 D手掌を乳房の上において、まわしながら按摩(アンマ、おさえもみ)します。手でお椀の形を作って、軽く乳房を引っぱります。再び手指で乳頭を点按(しあつ)します。10回繰り返します(図59)。









 E手で大腿内側を捏拿(ネツナ、つまむ)します。動作は軽く柔らかくします。25回繰り返します(図60)。












 F両手を重ねて下腹に置き、均等にカを入れて、旋転摩擦(円を描くようになでこする)します。上は臍から、下は恥骨まで、約2分間(図61)。



(四)注意事項
 @もし性感缺乏による場合には、浴後の推拿を応用することとは別に、房事を適当に節制し、日ごろの労働と休養のバランスに注意しなくてはなりません。
 A推拿は夫妻間で相互に行うこともできるし、自分で施術することもできます。
 B性欲は多種類の要因から影響を受けます。夫妻間の和やかな情感は日常生活の中で次第に培われてくるものです。気持ちや感情の交流を重視して、親密な情感のもとに、深い愛をもち、相互に引き合うように、性欲があるようにすることです。愛のある性生活は、婚姻関係の血肉というべきものであって、これこそ最も重要なことです。

HOME  家庭の沐浴推拿