ニ十一、子宮下垂、子宮脱



(一)概述
 子宮が正常な位置より腟に沿って坐骨棘の水平線より下に下降し(子宮下垂)、甚しい場合は腟口部の外に脱出するものを子宮脱といいます。中医学では“陰挺”といいます。本病の発生は主に体質的な虚弱、多すぎる出産と育児、分娩時間が長く、力み過ぎた、あるいは処理が不適切で、骨盤底の支持組織および子宮を懸吊している組織を損傷したことなどによります。産后早く動きすぎた、長期間の便秘、セキが長引いて止まないなどといったことも、子宮靭帯を弛緩させて、下垂をおこします。臨床上の主要表現は子宮の脱出、下腹が下垂して脹る、腰背がだる痛い、月経不調など。
 中医学の説明は:本病発病の原因は主に虚弱な体質、産后に気血を損った、加えて労動しすぎると気が弱っておちこみ、胞宮脉絡鬆弛,不能固摂胞体(子宮の経絡が弛緩して、子宮を固くおさめておくことができなくなる)ことによって、下垂してしまう。
  症状表現
  @子宮脱出;
  A小腹が下垂して脹る、腰背がだる痛い;
  B労働が重なると激しくなる。



(ニ)沐浴法
 薬水浴法を採用、薬用:枳売60g、防風50g、枯礬15g、五味子15g。水から煎じて、液を濾し、熱い間に先ず湯気を当てその後洗う、あるいは水温が適当になったら、坐浴。毎回10〜20分間。



(三)推拿の穴位と手法

 @手指で頭頂の百会穴を按圧(おさえる)2分間、だるい、はれぼったい感じがしてきたら宜しい(図239)。







 A手のひらと指で下腹部を拿捏(ナネツ、つかまえつまむ)、2〜4分間(図240)。




 B手指で点按(しあつ):腹部のへその下3寸の関元穴、恥骨結合上縁陥凹部の曲骨穴、関元の傍ら4寸の提托穴、中極の傍ら2寸の帰来穴、同じく傍ら3寸の子宮穴。各穴按揉(アンジュウ、おしもみ)1〜2分間、だるい、はれぼったい感じがしてきたら宜しい(図241)。


 C患者は伏臥位、手のひらで腰仙部を速く擦動(サツドウ、こすりうごかす)、皮膚が熱をもって、熱くなったら宜しい(図242)。






 D手のひらの付け根で腰部の第2腰椎棘突起下の陥凹部の命門穴を按揉(アンジュウ、おしもみ)、2〜3分間(図243)。













 E手指で点按(しあつ):下肢の内くるぶしの3寸の三陰交穴、膝下内側の陰陵泉穴、膝下3寸脛骨外側の足三里穴、足第1〜2中足骨結合部の前陥凹部の太衝穴。各穴按圧2分間、だるい、はれぼったい感じがはっきりしてきたら宜しい(図244)。



(四)注意事項
 @日ごろから体育鍛煉に参加して、体質強化。
 A重労働に参加することは避ける。
 B便通をよくする。
 C肛門周辺の筋肉の運動・鍛煉を行い、弛緩している骨盤底の筋肉・組織の張力を少しずつ回復させる、その方法は自分で大小便をこらえる動作を練習する、肛門周辺の筋肉を收縮させ、その後弛緩する、緊張〜弛緩の練習を、毎回10分間持続、毎日2回。

HOME  家庭の沐浴推拿