二、睡眠促進の沐浴推拿


(一)概説
  生命の過程は睡眠と切り離すことができません。睡眠は人生の約1/3の時間を占めています。日常生活の中で、われわれは常々次のようなことを体験しています。睡眠不足をした日には、疲憊して耐え難くなり、精彩もなくなり、ふらふらして頭が張ったような感じがし、仕事の効率も落ちますが、もし一度気持ちよく熟睡すればその後は、このような状況は消えてしまいます。ですから、民間に“睡眠は天然の補薬である”ということわざがあります。気持ちのよい睡眠は人生の一番楽しいことであり、また健康と長寿の必要条件です。
 いろいろある休息の仕方の中で、睡眠は最も理想的で、最も完璧な休息です。睡眠状態の下では、全身の各種の機能は低下し、必要的な基本的な機能を僅に維持しているだけです。たとえば、筋肉は弛緩し、心臓の鼓動は減り、血圧は低下し、呼吸も減り、代謝も低下するなど。一面では体内に蓄積している代謝産物の分解排泄は継続しています。また別の一面では体内に活動に必要な物質を創り出し、損耗を補い、栄養を新たに供給し、生理的機能を調節し、神経系統の平衡を安定させます。かって、科学者が犬で実験したことがあります。毎日ただ少量の水だけ飲ませて、他には何も食物を与えなかった犬は、25日生きましたが、連続5日睡眠させなった犬は、体温が4〜5℃低下し、92〜143時間経過したら死亡しました。犬を死後解剖してみたら、中枢神経系統に顕著な形態学的な変化が出現していました。このことは、睡眠は生命維持の重要な手段であることを説明しています。この実験からも分かるように、睡眠と生存は同等の意義をもつといえます。このように、良好な休息睡眠は全身疲労を回復し、脳神経、内分泌、体内の物質代謝、心臓血管の活動、消化機能、呼吸機能などを休ませて整えることができますし、身体の各部の組織の生長発育とその修復を促し、免疫機能を強化して身体の免疫力を高めます。
 私たちは良好な睡眠状態を保持するにはどうしたら良いでしょうか? 沐浴後の推拿が最も手っ取り早く無害な方法です。温水浴は全身の筋肉を弛緩させ、緊張している神経も緩むことができ、代謝産物も分解排泄できます。推拿は疏導経絡、益脳安神(経絡の通りをよくする、脳に有益に働きかけ精神を安定させる)という効能を発揮して、質の高い睡眠を促進します。



(ニ)沐浴法
 温水(あるいは鉱泉水)の入浴方法を採用して、水温は一般に37℃前後に保ちます。身体をゆったりと湯船に横たえて、全身の筋肉の力を抜いて、自然に身体をほぐします。全身入浴は約15分間。入浴後、身体を拭いて乾かし、推拿を行います。また、空気浴、海水浴を採用するのも良いと認められています。同じように推拿を一緒にすれば、機能を調節し、睡眠を促進します。



(三)推拿の穴位と手法
 
@両母指あるいは母指球を用いて両眉頭の間の印堂穴から耳の側の太陽穴まで分抹(ブンマツ、左右へ圧し分け)します。反復して3分間(図30)。







 
A両母指腹の先を用いて印堂穴を点圧します。印堂穴から始めて、眉弓に沿って太陽穴に至るまで両側を対にして揉みます。揉みながら移動し3分間持続します(図31)。






 B両母指腹を用いて内眼角の所の睛明穴を点圧し、上下の眼瞼をそれぞれ分抹(ブンマツ、左右へ圧し分け)します。反復して2分間行います(図32)。







 C母指を用いて印堂穴から頭頂の百会穴まで圧して行きます。その後両母指を分けて眉中部から頭頂の百会穴に至るまで圧して行きます。反復して2分間行います(図33)。








 D手のひらあるいは小指球を用いて足底の前から1/3の所の涌泉穴を搓擦(ササツ、こする)します。両足交替に行い、それぞれの足を2分間づつ搓擦します(図34)。












 E手指を用いて手のひらの後ろ、手首の神門穴を点按し、だるい、しびれる、はれぼったいなどの感覚が生じたらいいです(図35)。



(四)注意事項
 @沐浴と推拿は晩、就眠する前に行う必要があります。推拿の后はすぐ眠たくなります。
 A就眠前には過度に興奮する活動は避けます。
 B平素、快眠できない者は、夕食後にお茶やコーヒーなどを飲むのは宜しくありません。

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