二十六 小児発熱



(一)概説
 小児発熱は小児の体温が異常に高くなることを主とする病症を指しますが、これは小児の常見病の一つです。多くは感冒にかかって引き起されますが、飲食がうっ滞したりあるいはその他の感染性の疾患からも起こることがありますし、体質虚弱も長びく発熱の原因の一つです。感冒による発熱は往々にして鼻づまり、涙が出る、セキ、くしゃみ、手足の冷え、続いて全身の発熱などの症状を伴います;
 飲食のうっ滞からくる発熱は、多くの場合過飲過食をしており、口の中が酸っぱい臭いがして、きたない臭いのげっぷが出て、食物を嫌がってイライラしており、大便は硬いかいやな臭いの下痢があり、手のひらが熱いなどの症状を伴います;
 体質が虚弱で発熱する者の主な症状は身体が痩せていて、長期にわたって午後は低熱、あるいは手のひら足の裏が熱く、夜間寝汗をかく、食欲不振などです。
 その他の感染による発熱は、往々にして発病は急で、病情が重い、あるいは腹部をみるとふにゃふにゃで力が無いか圧痛がある、あるいは顔がむくんでいる、小便の回数が多く我慢できないなどですが、すぐに医師の診断を仰いで治療してもらう。沐浴推拿は感冒、飲食うっ滞、体質虚弱による小児の発熱にはっきりした効果がありますが、もし症状の重い者には薬物治療を併用します。
  症状表現
 @体温が普通より高く、小児の額や頭、手のひら足の裏が熱い;
 A常に顔や唇が紅く、イライラと声を出して泣き、食欲不振で、大便は硬いかあるいはきたない臭いの下痢;
 B鼻づまり、涙が出る、セキやくしゃみ、あるいは身体が痩せている、寝汗などの症状を伴う;
 C指紋は鮮紅あるいは紫紅。



(ニ)沐浴法
  温水入浴を採用し、水温は35〜40°Cに保ち、小児の頭は支えて水面から出し、タオルで胸背部、腋窩、肘窩、膝窩を擦って洗う、毎回入浴10〜15分間。薬水入浴を用いてもよい、“退熱解表方”(前出)を選用、水から薬物を煎じた後、汁を取り水を数倍加えて、小児の身体を浸せるぐらいにして、毎回の薬水入浴は10〜15分間。虚弱体質により発熱している小児には、日光浴を採用するのもまたよい、天気のよい日に小児を室外に連れ出し日光を浴びながら遊ばせる、夏秋の季節にはできるだけ腕や腿をあらわにする、日光浴の時間は朝の10時ごろがよく、毎回30〜50分間。



(三)推拿の穴位と手法

 @小児を伏臥指せ、食指と中指の指紋面で、第7頚椎から尾骨の端に向かって直っすぐに推す、50〜100回(図275)。






 A中指の指紋面あるいは手のひらの付け根を小児の第7頚椎の下の大椎穴にくっ付けて、時針方向にまわしながら揉(もむ)100回(図276)。




 B拇指を小児の両眉の中間において直っすぐ推して前髪際まで、両手を交替しながら下から上へと直推30〜50回(図277)。この法は感冒による発熱に適用する。



 C両方の拇指で眉頭から眉梢にむかって左右に分けるように推す30〜50回(図278)。感冒による発熱に適します。





 D食指と中指の指腹を小児の前腕の内側におき、腕横紋から肘横紋に向かって直推100〜300回(図279)。





 E拇指で小児の胸部からへそに至るまでを下に直推、両手を交替しながら50〜100回(図280)。感冒と食積による発熱のいずれにも良効があります。



(四)注意事項
 @沐浴時には水温の保持に注意して、入浴させながらタオルで小児の胸背、四肢を擦ってやる、感冒の場合は微汗が出ると最好。
 A小児にはよく水を飲ませるように注意する、推拿の後も飲水一杯。
 B飲食は淡白なものが宜しい、感冒あるいは食滞の症状が好転した後、不足分は補う。体質が虚弱な者にはそれ相応の栄養のあるメニューにする。

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