十九、帯 下



(一)概説
 正常な情況で、青春期になってから、女子の腟から分泌される一種の白色の分泌物を白帯と呼びます。白帯は酸性で、腟を保護して清潔にする作用があります。中医学ではこれは人体の腎気が盛んになり、脾気の健かな働きの表現であり、生理的な帯下とみます。もし帯下(おりもの)の量が明かに多くて、色、質、においに異常があり、あるいは全身または局部の症状を伴う者は、帯下病といいます。西洋医学の診断での腟炎、子宮頚糜爛、骨盤腔炎など急・慢性の炎症は、均しく帯下病の症状を出現させ得ます。
 中医学の説明は次の通りです:本病は主に湿邪が肝、脾、腎の機能に影響したことによるもので、その結果、帯脉失約,任脉不固(婦人に関係の深い経脈である帯脉が締まりをなくし、妊娠とも関係する経脈の任脉が必要な固さをなくした)の結果形成される。
  症状表現
 ①帯下(おりもの)の量が多く、色は黄、白、赤あるいは黄・白、あるいは赤・黄、質は漿液性、粘液性、匂いはなまぐさい、いやな臭いがする、あるいは穢く濁っている;
 ②腰部のだるい痛み、小腹の落込むような痛み、下肢のだるさと力なさ;
 ③あるいは腟口の灼熱感、あるいは外陰部の掻痒。



(ニ)沐浴法
 薬水浴法を採用、薬用:苦参60g、黄拍50g、蒼朮60g、千里光100g、百部60g、大青叶50g、蚕休60g。上薬を水から煎じて、濾した液が適当な温度になるのを待って、坐浴。毎回10~15分間。



(三)推拿の穴位と手法

 ①両手を重ねて臍の上におき、先に時計方向に摩腹(腹をなでる)50回、つぎに逆時計方向に摩腹(腹をなでる)50回、腹部に温熱感が出てきたら宜しい(図227)。









 ②手のひらで腹部の臍の上4寸の中脘穴を按揉(アンジュウ、おしもみ)、2分間(図228)。





 ③手指で腹部の臍の下1.5寸の気海穴、臍の下4寸の中極穴、各穴1~2分間点按(しあつ)、だるい、はれぼったい感じがしてきたら宜しい(図229)。






 ④腹部の臍の傍ら2寸の天枢穴、天枢穴の下3寸の水道穴、天枢の下4寸の帰来穴を手指で点按(しあつ)あるいは小指球で推摩(推しなでる)、約3分間(図230)。




 ⑤患者は伏臥位、脊柱の両側の膀胱経の背兪穴の部位に先ず少しばかりのワセリンかパラフィン油を塗り、手のひらか小指球で速く上下に摩擦する、皮膚が発熱したら度(図231)。




 ⑥手指で背部の第九胸椎棘突起下の傍ら1.5寸の肝兪穴、第十一胸椎棘突起下の傍ら1.5寸の脾兪穴と第二腰椎棘突起下の傍ら1.5寸の腎兪穴を点按(しあつ)。各穴に力を入れて点圧1分間(図232)。






 ⑦手のひらで仙骨部の八髎穴を按揉(アンジュウ、おしもみ)、約3分間(図233)。







 ⑧手指で点圧、下肢の内くるぶしの上3寸の三陰交穴、下腿内側の陰陵泉の下3寸の地機穴、膝蓋骨内上縁の上2寸の血海穴、各穴点圧1~2分間、だるい、はれぼったい感じがしてきたら宜しい(図234)。






(四)注意事項
 ①良好な衛生的習慣を養成し、下着を頻繁に換え、お湯で洗う。
 ②毎晩就眠の前に温水で外陰部を清洗する。
 ③生もの冷たいものはあまり食べない。

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