十、健康長寿の沐浴推拿




(一)概説
 世上、誰でも健康な身体でありたいと願いますし、誰でも百歳までの長寿を全うしたいと願います。古来、人間はすべて健康を希望し、さらに長寿を渇望してきました。いわゆる健康長寿は人々の関心事であり、人々の求める第一番重要な大事です。
 人類の自然の寿命はどれぐらいの長さまで達することができるのでしょうか? 生物学の普遍的な規律と動物実験に基づいて推測すれば:@科学者は一種の“寿命係数”を提唱していますが、哺乳動物の寿命はその成長期の5〜7倍と認められるとしていますから、これから推測すれば人類の自然寿命は125〜175年になります。A細胞の分裂回数に基づいて寿命を推算すれば、人体の細胞分裂は50回で、分裂の周期はおよそ2.4年ですから、これに基づいて推算すれば、人の寿命は120歳です。B生物学的な規律に基づくと、人の寿命は性成熟期の8〜12倍に相当しますので、人類の性成熟期は14〜15年なので、これから推算すれば人類の自然寿命は112〜150となります。以上の三種類の方法による推算の結果はすべて、人の寿命は百年以上であることを示しています。
 人のいわゆる寿命とは、出生から死亡に至るまでの時間的な距離ですが、人の死亡原因は大きく三つに分類することができます。その一つは完全に老衰による死亡です。その二は病死,その三は予期しない事故による死亡です。その比率は、5%、80%、15%です。これをみると、天寿を全うするものは非常に少なく、病死者が圧倒的に多いということです。ですから、養生益寿の主要な任務は強身健体、予防疾病だということです。
 沐浴後の推拿は大変良い家庭での養生法です。沐浴のときの水温刺激は血液循環を加速して新陳代謝を促進します。物理的な静水圧は心臓と肺の機能を鍛錬して強くします。同時に沐浴は皮膚表面の汚垢と細菌をきれいに取り除き、病気に対する抵抗力を増強します。推拿と組み合わせると、推拿によって経絡経穴と末梢神経を刺激し、身体を鍛錬し、体質を強化し、病気を予防し、寿命を延ばす作用があります。



(ニ)沐浴法
 体質や家庭の条件に応じて沐浴方法を選びます。体質の強い人は、冷水浴にして、冷水摩擦、冷水シャワー、冷水入浴をすれば、意志を鍛錬できますし、耐寒能力も高まるし、体質も強くなるし、疾病予防にもなって大変良い効果があります。体質の弱い人、お年寄りは、水温20〜30℃の涼水浴、あるいは水温31〜40℃の温水熱水浴とします。入浴あるいはシャワーどちらでもいいです。空気浴、日光浴、海水浴、鉱泉浴も防病保健に大変いいですから、それぞれ条件に応じて行い、浴後の推拿を組み合わせます。



(三)推拿の穴位と手法
 
 @両手で顔を摩擦するのですが、鼻のほとり、、目の周り、額、耳の傍と洗面の順序で、1分間推摩(スイマ、おしなでる)します(図84)。










 A両手の指をすこし曲げてひろげ、頭を洗うときのように、頭を往復、交差しながら、揉動(ジュウドウ、もみうごかす)します。按揉(アンジュウ、おしもみ)1分間(図85)。





 B両手を首の後ろで組み合わせて、首の力を抜いて、組み合わせた両方の手で、首の後ろを何度も往復しながら摩擦(なでさする)します。2分間(図86)。











 C両手の小指球または母指指腹を同側の太陽穴において、まず時計回りに揉動(ジュウドウ、もみうごかす)します、約30秒、つぎに逆時計まわりに揉動(ジュウドウ)します約30秒(図87)。




 D両手の拇指の指背部を同側の鼻翼の傍らの迎香穴において、上下に往復して摩擦します2分間(図88)。









 E両方の手のひらと指をすこし屈曲して、手のひらにやや力を入れて左右の耳孔を按緊(アンキン、ぎゅっとおさえる)し、同時に中指で枕骨(外後頭隆起)上をおさえます。そのあと、両方の母指を左右に分けて頚の後ろ枕骨の下方、僧帽筋外側のくぼんだところの風池穴を、弾啄(ダンタク、ついばむようにはじく)します。約30秒(図89)。



 F両方の掌心(手のひらの中心)で同側の耳孔を按圧(アンアツ、おさえる)するのですが、同時に緊圧(キンアツ、ぎゅっとおさえ)し、急に放します。反復3回(図90)。





 G両手を重ねて、臍のうえにおき、推摩(スイマ、おしなでる)するのですが、臍を中心点として、右から上へ、左から下へと循ります。往復して旋転しながら推摩します。2分間(図91)。










 H両手の指と手のひらを、腰眼にぴったりとつけ、下の方向に向けて仙骨・尾骨まで擦ります。反復1分間(図92)。










 I両足を床に付けそろえて、膝を少し曲げてかがみこんで、両手をひざに置き、膝関節を左右に円を描くようにまわします。左右方向に各々30秒(図93)。


















 J両手の拇指でそれぞ同側の足三里穴(膝眼下3寸、やや外側)を按揉(アンジュウ、おさえもみ)します。約30秒(図94)。








 K小指球で、足底の前から約1/3の凹陥したところ、涌泉穴を揉摩(ジュウマ、もみこする)します。左右交替でそれぞれ1分間(図95)。



(四)注意事項
 @冷水浴をするときには、浴后はすばやく身体を拭いて干かし、手あるいは乾いたタオルで反復して身体を擦摩(サツマ、こすり)して、発熱するまで行い、その後上記した推拿を行います。
 A長期にわたって堅持すれば、健康長寿の目的を達することができます。
 B手法は軽重を適宜にし、全身をゆったりした状態で行います。

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