七、腰筋労損(機能性腰痛)



(一)概説
  腰筋労損(腰の筋肉疲労)は、また機能性腰痛ともいい、腰部の累積性の筋繊維、筋膜および靭帯などの軟部組織の損傷を指します。発病は緩慢で、腰部の酸痛(だるいいたみ)が特徴です。常に急性の損傷病歴が有るとか、労損が累積していたとかあるいは急性期発作の治療が不徹底だったとかの原因があります。主要な臨床表現は腰部が動かしにくいとかあるいは隠痛(何ともいえないいたみ)、あるいは持続性の鈍痛ですが、多くは連続した腰を弯曲しての労動、劇しい活動、寒さあるいは湿気を受けるなどの後に発作を引き起こしたりあるいは悪化させたりします。本病は中医学でいう“腰痛”の範疇に属します。肝腎不足、気滞血瘀、寒湿凝滞(肝と腎が弱っている、気が滞って悪血がある、寒や湿が居座っている)がありいずれも経絡気血の阻滞不通(経絡の気血が不通)を致して本病を発症させます。
  症状表現
  ①腰部疼痛、長期不愈、時軽時重、休息時軽、労動時重、受寒、疲労、陰雨時加重(腰に痛みがあり、長期間なおらず、軽くなったり重くなったりするが、休めば軽くなり使えば重くなる、寒さに合ったり、疲れたり、じとじと雨が降るときにはいっそう悪くなる);
  ②腰部疼痛の性質は多く隠痛、鈍痛、酸痛(激しい痛みではない);
  ③日中仕事をしたり運動した後は症状減軽、夜間休息したときに症状は反って加重;
  ④部分的には尾てい骨・腸骨の後面、尾てい骨後部の殿筋の停止部あるいは腰椎横突部に圧痛があるが、Ⅹ線写真では特殊所見がない。



(ニ)沐浴法

 温水入浴を採用し、水温は一般に38~40℃に保持して、入浴しながら、手のひらあるいはタオルで腰部を揉擦(ジュウサツ、もみこすり)します。洗浴は15~20分間。別に、個人の情況にもとづいて薬水入浴を選用することもできます。もし、寒湿性腰痛に属する者は、“消除痛痺方”を選用し、もし外傷の病歴があり、気滞血瘀(気が滞って悪血がある)に偏っている者は、“舒筋活絡方”を選用します(図147)。また別に習慣的に熱鉱泉水入浴をしたり、日光浴を結合して治療します。



(三)推拿の穴位と手法

  ①手のひらあるいは手のひら付け根で、先ず背部、腰臀部を上下に反復して按揉(アンジュウ、おさえもみ)します。約10分間。再び腰痛部位を重点に按揉(アンジュウ、おさえもみ)します。約3分間。温熱感が出て、疼痛が減軽すれば宜しい(図148)。


 ②滾法(コンホウ、手の甲をころがす手技)を用いて脊柱両側膀胱経を滾(コン、ころがす)します。約5分間。病痛部位に接着して重点的に滾(コン)します。手法は軽から次第に重に、もっとも病人が耐えるぐらいでよろしい(図149)。



 ③手指で両膝関節の膝窩横紋の中央委中穴を点按(指圧)します。だるい、しびれ、はれぼったい感じを度とします(図150)。









 ④手のひらで腰背部を横擦(オウサツ、よこにこする)します。その前に腰背部に潤滑剤、ワセリン、パラフィン油などを薄く塗っておきます。使う力は適度とし、速く反復して擦摩(サツマ、こすりなでる)して、皮膚が発熱してきたら止めます(図151)。


 ⑤空拳あるいは小指球で腰臀部を撃打(叩打)します。上下反復して撃打5回(図152)。







 ⑥立位をとって、両脚を肩幅に開いて、両手を腰にあて、上半身を腰部のところで旋転します。左右各10回。動作の緩急は適度とし、自分の最大限度まで旋転します(図153)。



(四)注意事項
 ①仕事中は習慣的に注意して姿勢変換し、不良な姿勢は直します。
 ②適当に鍛煉し、腰部の活動には特別に注意します。
 ③腰部の保温に注意します。
 ④温湿布をしてもいいです。

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