八、神経性頭痛



(一)概説
 神経性頭痛は、頭の上半部、眼窩より上から後頭骨の下までの間の疼痛を指します。多く精神、情志などの素因により発症します。中医学的に説明しますと:頭は“諸陽之会、百脉所通”(諸陽の会、百脈の通ずる所)で、本病は大変多くの臓腑と関係があります。ただし、肝臓との関係が最も密接で、情志所傷、肝失疏泄、気鬱化火、上擾清空、そうして頭痛となります。あるいは火盛傷陰、肝失濡養、あるいは腎水不足が肝腎陰虧を導き、肝陽上亢して頭痛します。また、病後体虚、あるいは脾胃虚弱、気血生化不足、営血虧虚、脳髄失養もまた頭痛をまねきます。(頭は、すべての陽気が集まるところで、百脈が通じていると言われているように、非常に多くの臓腑と関係がありますが、特に肝臓との関係が深いです。情志が傷つくと、本来のびのびとしていなくてはならない肝気の流れが悪くなり、気鬱が長引いて火のようになり、それが頭に上って頭痛となります。あるいはのぼせることが多いとそれを鎮めるべき陰が傷ついて、肝臓が滋養を失ったり、あるいは陰の大元である腎水が不足して、肝臓と腎臓の陰がともに失われて、肝臓の陽が上にのぼって頭痛を起こします。また、病後で身体が弱っていたり、胃腸が弱くて、気血をつくれなくなると、栄養不足になって、脳髄も充分養われないために頭痛になります。)
  症状表現
  @頭部疼痛、ある部位に局限していることも頭全体のこともある;
  A頭痛の性質は一定していない、鈍痛、脹痛、跳痛など、間欠性疼痛あるいは持続性疼痛;
  B頭痛は常に精神緊張や情緒異常によって加重;
 .C常に煩操(イライラ)、失眠、健忘、頭暈(ふらつき・めまい)などの症状を伴っている。



(ニ)沐浴法
  温水あるいは鉱泉水入浴を採用し、水温は37℃とします。浴槽に身体をゆったりと横たえ、全身の筋肉を弛緩させて、15〜20分間入浴します。入浴後は身体をこすって干し、浴衣の上から推拿を行います。



(三)推拿の穴位と手法

 @手の拇指の掌面で、両眉間より下から上の方向へ推して髪際まで、反復して15〜20回(図154)。







 A手指の掌面で、耳の前の方の太陽穴を点揉(指圧)、反復2分間(図155)。









 B手の拇指の掌面で、頭頂部の百会穴を連続して按揉(アンジュウ、おしもみ)。2分間(図156)。







 C手指で後頚部を捏拿(ネツナ、つかむ)して、反復して1分間ほど擠提(セイテイ、しぼるようにもちあげる)(図157)。









 D手指で後頚部、後頭骨の下、両側髪際の陥凹部風池穴を按揉(アンジュウ、おしもみ)、反復3分間(図158)。

E手指あるいは手のひらで頭の痛い所を按揉(アンジュウ、おしもみ)、約3分間。




 F手の拇指の指端で対側の虎口の合谷穴を、少し力を入れて点圧。だるい、しびれる、はれぼったい感覚が生じたら宜しい(図159)





 G手指で足背で第1〜2趾の間を約2寸上がった陥凹部の太衝穴を点按。だるい、しびれる、はれぼったい感覚が生じたら宜しい(図160)。





 H手で足心の涌泉穴を搓擦(ササツ、こする)する。局部に温熱感が出たら宜しい(図161)。



(四)注意事項
 @精神的な刺激を避け、生活を規律的に行い、過度の労働や緊張をしない;
 A推拿の手法は軽く柔かく、力を適度に用いる;
 B頭痛の原因は複雑ですが、本法は感冒、高血圧、血管神経性、月経期、更年期、神経衰弱、過労、緊張などが引き起こす頭痛に大変有効です。

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