第三章 関節運動類手法



第一節 頚椎関節の運動手法


三、頚椎牽引法


1.頚椎前屈手牽法
 患者は低い腰掛に座る。
 術者は患者の前方に立ち、両手掌でそれぞれ患者の左右のこめかみを抱えて、指の端は下に向け、そして頭と頚を15°前屈させて、ゆっくりと上に引き上げて、30秒ぐらい持ち上げておき、30秒ほど休息します。3〜5回反復します。



2.頚椎後方伸展手牽法
 患者は低い腰掛に座る。
 術者は患者の後方に立ち、患者の頭と頚を15°後方伸展して、ゆっくりと上に引き上げます。操作方法及び回数は頚椎前屈手牽法と同じです。



3.頚椎中立位手牽法
 患者坐位。
 術者は患者の側方に立ち、両手でそれぞれ患者の後頭部と下あごを抱え、後頭部を抱えた手を主に使って、頭と頚を中立位のまま上に引き上げて、30秒ぐらい持ち上げておき、30秒ぐらい休息します。3〜5回反復します。

 以上三種の頚椎牽引法は各型の頚椎病の治療に適用します。頚椎の生理的弯曲の消失あるいは異常な頚椎病に対しては、初期には前屈手牽法を用いるのがよく 中期には中立位手牽法に改めるのがよく、後期になり頚椎の生理的機能がすでに改善をみたときには、後方伸展手牽法に改めて用いるのが宜しい。


4.仰臥位頚椎牽引法
 患者は迎臥位。
 術者は患者の枕元に座り、一方の手で患者の下あごを支え持ち、別の手の手掌を内に向けて、母指と示指を開いて両指の又の間で後頭骨の下方を支えて、後頭骨を支えている手を主に用いて、頭と頚を中立位においてゆっくりと1〜2分間持続牽引して、30秒ほど休息します。1〜2回繰り返します。各型の頚椎病に適応します。


5.肩をテコの支点にする牽引法
 患者坐位。
 術者は患者の後方に立ち、患者の両肩におさえるように両方の前腕を置いて、両手で左右の後頭骨とあごを支え持ち、前腕で肩を圧し、手掌の上に挙がる反作用を使って、頚椎を牽引して30秒間持続します。2〜3回反復します。この法はそれぞれ異なる方向に腕力を加えれば、頭と頚を前屈したり、後方伸展したり、中立位にしたり三つの異なる方位の牽引ができます。各型の頚椎病と寝違いの治療に常用します。



 6.頚を抱える手牽法
 患者坐位。
 術者は患者の左側に立ち、右手を患者の頚の後ろから挿入して対側のあごの傍らに届かせ、患者の後頭骨の下を前腕の中央にあて、同時に左手では患者の下あごの左側を支えます。
 あるいは術者は患者の右側に立ち、右手を患者の頚の前から挿入して対側の乳様突起の下方に届かせ、患者の下あごを前腕の中央に当て、同時に左手は母指と示指をひらいてその又のところで後頭骨の下方を支えます(図62)。
 そのあと、両手で協同して、後頭骨を支えている手を主に用いて、頭と頚を10〜30秒間持続して上にあげます。2〜3回反復します。この法は牽引力が大きので、持続時間が長いのはよろしくありません。頚の前部にある手は総頸動脈、気管と顔面動脈を圧迫しないようにします。
 この法は頚部筋肉の痙攣を弛緩させたり、頚椎の機能性側弯や生理的弯曲異常の矯正、さらには椎間間隙をひろげるうえで、割りに好い効果があります。



7.頚椎機械牽引
  牽引用の装具を患者の下顎と後頭骨にあてがって、滑車を通過する重力あるいは機械力を応用して頚椎の牽引を行う医療方法の一種です。今日では、頚椎牽引の器械は多種類あり、牽引方法も多く、牽引重量も差異があります。牽引の体位は一般には坐位あるいは仰臥位を採用し、立位あるいは半臥位は少いです。牽引の方向角度は一般には前屈15°〜30°の体位を多く採用します。椎骨動脈型の頚椎病では多く頭頚部中立位を採用しますが、頭頚部後方伸展15°の体位を採用することもあります。開始時には前屈位を採用し、病状が好転するにつれて、中立位と後方伸展位による牽引に改めるべきだと主張する人もあります。ただし、多数の人は患者が快適に感じる体位を基準としています。牽引力は一般に6キログラムから開始して、少しずつ増加して10キログラム前後までにします。検測して牽引力の範囲を椎間板内の圧力がゼロないしは負圧になるようにする人もあります。しかし、自分自身の体重あるいはそれ以上の重力で瞬間的に牽引する人もあります。牽引時間:10キログラム以下牽引力では、毎回の持続牽引は20〜30分間、毎日1〜2回、10〜20日を1クール。牽引力が増加すれば、牽引時間は相対的に減少します。牽引力が減少すれば、その逆です。
 頚椎の機械牽引は、牽引力の検測に便利で、長時間持続できるし、人力を節約できます。頚部筋肉の痙攣を解除し、椎間板内の圧力を下げ、頚椎の側弯と椎骨動脉のねじれを矯正する等の作用があります。

訳注:日本では家庭用の各種牽引用具が市販されています。


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