〔部位〕 腹部。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の頭の後方に立ち、両手の手掌を並べて、そして両手の母指腹を主に使って、上腹部の鳩尾穴から下に真っすぐ軽擦していき関元穴に至った時に、両辺に向って分かれてなで、母指が上前腸骨棘に達したら、再び元の位置に戻って、2回目の軽擦を行います。反復30~50回。 〔適応症〕 胃脘痛(胃痛)、腹脹(お腹が脹る)、便秘、消化不良。 |
〔部位〕 両肋骨弓下縁。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の側方に位置して、両母指腹で、剣状突起の下から肋骨弓下縁に沿って左右に分かれて腰の辺りまで軽擦します。反復30~50回。 〔適応症〕 腹脹(お腹が脹る)、消化不良、神経衰弱、高血圧、胸悶(胸苦しい)、冠心病(虚血性心疾患)。 |
〔部位〕 前腹部。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、腹部を露出するかあるいはボタンのない一重の下着をつけます。術者は患者の右側に座り、両手の手掌で、時計回りに輪状軽擦します。左手は終始腹部につけたまま回転し手はあげません、右手は左手の尺側から腹部につけて左手の回転に随ってほぼ一巡したところで、左手の橈側から上にあげ、また左手の尺側から腹部につけます。このように繰り返し周回して、50~80回。頻度は40~70回/分。 〔適応症〕 便秘、腹脹(お腹が脹る)、腹瀉(下痢)、消化不良、慢性結腸炎、腸粘連(腸癒着)、胃下垂症、慢性胆嚢炎、高血圧、失眠(不眠)。 |
〔部位〕 鳩尾(剣状突起)と臍を結んだ線の中点。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の右側に座り、右の手掌あるいは手根あるいは四指腹あるいは母指球で、環状にあるいは左右に振るように軽擦2~5分間、頻度は60~100回/分。 〔適応症〕 慢性胃炎、潰瘍病、腹脹(お腹が脹る)、胃脘痛(胃痛)、高血圧、失眠(不眠)、便秘。 |
〔部位〕 上腹部の両肋骨弓下縁。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の右側に座り 両手の四指腹で、肋骨弓の下縁に沿って左から右へ向かって交替に曲線的に軽擦30~50回。手法は軽柔に穏和に。 〔適応症〕 上腹隠痛(上腹部鈍痛)、呃逆(しゃっくり)、腹脹(お腹が脹る)、食欲不振、失眠(不眠)、高血圧。 |
〔部位〕 中上腹部。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の右側に座り、右の手掌をへその下につけて、ただし手掌の尺側面で、四指は並べて、母指は開いて。そうして下から上に向けて左肋骨弓の方向に緩慢に推しあげます、反復20~30回。 〔適応症〕 胃下垂、内臓下垂、腹脹(お腹が脹る)、便秘。 |
〔部位〕 関元穴から中脘穴に至る線。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の右側に座り、右手の小指球面で、臍下の関元穴のところから開始して環状に上に向かって軽擦して、中脘穴のところに突き当たって止めます、反復20~30回。 〔適応症〕 胃下垂、腹脹(お腹が脹る)、腹痛、慢性腹瀉(下痢)。 |
〔部位〕 臍の周囲。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の右側に座り、両手掌を重ねて患者の臍のところに置き、時計方向にまわしますが、作用点は手根、母指球、手掌前部、小指球の四点とし輪のように順番に力を入れて、ちょうど蝶々が羽ばたくようにしま。反復30~50回。 〔適応症〕 便秘、尿貯留、腹痛、慢性腹瀉(下痢)、腸粘連(腸癒着)、慢性骨盤腔炎、痛経(月経痛)。 |
〔部位〕 中上腹部。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の側方に位置して、右手の四指を自然に屈曲し、近位の指背で、指先は胸の方に向けて、そうして剣状突起の下から臍の下あたりに向けて、揉んだり“弓”字型を作ったりしながら曲線的に滑らせたり直線的に引っぱったりします。即ち操作線上で、先ず曲線的な揉捏を三分の一、後に直線的に引っぱる動きを三分の二。 〔適応症〕 呃逆(しゃっくり)、腹脹(お腹が脹る)、便秘、潰瘍病。 |
〔部位〕 腹部の両側。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の右側に位置して、先ず両手で患者の右側の腹壁を持ち上げます。 A.“S”型捻揉 術者は片手で手前に引っぱり、別の手で向う側に推して、腹壁が“S”型を呈するようにねじり転がしながら、次第に左側の腹壁に向かって移動します。 B.挙上振動 ねじり揉捏しながら左側の腹壁に達した時に、両手を一つにして腹壁の筋肉をつまんで持ち上げて、上下方向に高頻度で5~10秒間振動させます。そうして再びA及B法を右側の腹壁にたち返って操作します。反復3~5遍。 〔適応症〕 腸粘連(腸癒着)、腹脹(お腹が脹る)、便秘、尿貯留、慢性結腸炎。 |
〔部位〕 臍周の腹壁、痛むところを主とします。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、両膝を屈曲して、腹壁の筋肉を弛緩させます。術者は患者の側方に立ち、右手で患者の臍周の一側の腹壁をつまみあげた後、上下方向に高頻度で5~10秒間震動させ、そうして臍周を上下左右の順で2遍震動させ、痛むところは2~3回増やします。 〔適応症〕 蛔虫性腸梗阻(腸閉塞)、腸粘連(腸癒着)、便秘、腹痛、腹脹(お腹が脹る)。 |
〔部位〕 前腹壁。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の右側に位置して、両手を並べて拿法(把握揉捏)の手のかたちにして、腹部を上から下へ、左から右へと、両手を交替しながら拿(把握したり)、揉(揉んだり)(把握揉捏法)3~5分間、あるいは病情に基づいて斟酌。腹筋が完全に弛緩し柔らかくなるのが適当です。 〔適応症〕 便秘、腹脹(お腹が脹る)、腹痛、腸粘連(腸癒着)、不完全性腸梗阻(腸閉塞)、慢性結腸炎、神経衰弱、高血圧。 |
〔部位〕 上腹部は中脘穴を中心とし、下腹部は関元穴を中心とします。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、腹部を露出するか一重の着衣。術者は患者の右側に座り、右手あるいは左手の手掌で掌振法(≒手掌振せん法)(図45)、上腹あるいは下腹の中央部を5~10分間操作。 〔適応症〕 上腹部を掌振すると潰瘍病、慢性胃炎、寒性腰痛、腹脹(お腹が脹る)、便秘、慢性胆道疾患、失眠(不眠)、高血圧等を治療できます。 下腹部を掌振すると尿貯留、慢性骨盤腔炎、痛経(月経痛)、月経不調、潰尿、遺精、慢性結腸炎等を治療できます。 |
〔部位〕 前腹壁、両側を主とします。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、腹部を露出し、術者は患者の右側に位置します。 A. 術者は両手の四指をそれぞれ患者の両側の腰の後に挿入して、両母指は両側から臍の傍をおさえ、先ず四指の指腹で腰の後の横突起の端を数回揉按(もみおさえ)した後、腰筋を上に持ち上げ、両手を臍の方へ合わせていき、両母指に圧力を加えて臍傍の天枢穴を5~10回按揉(おさえもみ)した後、両手を突然開いて、腹筋をもとに帰します。反復3~5遍。 ロウ=攏;あつめる B. 両手を向かい合うようにおいてから中央に合せていきますが、最後には腹の筋肉を右手に集めていきます。左手は剣状突起の下から開始して下に向けて腹部をおしていき、右手に近づいたときに、両手を突然開いて、腹筋を元に戻します。反複2~3遍。 〔適応症〕 便秘、腹脹(お腹が脹る)、腹痛、腸粘連(腸癒着)、腸捻転、不完全性腸梗阻(腸閉塞)。 |
〔部位〕 臍の下4センチから左肋骨弓下縁に至るまで。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の右側に位置して右手の小指と無名指を自然に屈曲し、その他の三指は自然に伸ばして、そうして小指球の側面で、手首を屈伸させて高頻度に振動を起こし、臍の下から開始して左肋骨弓下縁に向かって緩慢に移動し、一呼吸の間に完了します、反復3~5遍。 〔適応症〕 胃下垂、虚寒腹痛、慢性腹瀉(下痢)、消化不良。 カン=趕;急 |
〔部位〕 腹部で臍の周りを主とします。 〔操作方法〕 患者は仰臥位で、術者は患者の側方に位置して、両手の切打法あるいは合掌打法、軽快に腹部を1~2分間叩打します。 〔適応症〕 腹脹(お腹が脹る)、便秘、腸粘連(腸癒着)、胃腸蠕動運動減弱、呃逆(しゃっくり)。 |
〔部位〕 腸骨稜の前縁と後縁。前は鼠径溝まで、後は上後腸骨棘まで。 〔操作方法〕 A.患者は仰臥位で、術者は患者の側方に位置して、両手の四指あるいは母指の指腹で、先ず後の左右の側の腸骨稜の最高点から開始し、腸骨稜の前の内縁に沿って鼠径溝に至るまでを按揉(おさえもみ)します。反復5~10遍。次には両母指を重ねて推圧法(圧迫法)、反復5~10回。この方法は両手を両側に分けて置いて同時に操作することもできます。 B. 患者は側臥位で、術者は先ず両母指分法をもちいます。腸骨稜の最高点から開始して、その前縁後縁に分れて軽擦して行き上前腸骨棘と上後腸骨棘のところまで至ります。反復30~50回。次には改めて両母指で揉捏法を3~5遍。 〔適応症〕 便秘、慢性結腸炎、尿貯留、遺精、遺尿(失禁)、腎虚腰痛、慢性骨盤腔炎、月経不調。 |
〔部位〕 肛門内の直腸前壁、肛門から約4~8センチ。 〔操作方法〕 患者は大小便を排出して空にして、会陰部を露出し 伏臥位で上体は肘で支え、会陰部は膝で支えて高くします(図238~1)。術者は患者の後方に立ち、右手にゴム手袋をするかあるいは食指に指サックをして、指端にはパラフィン油塗って、そうして食指を患者の肛門から直腸前壁に挿入して腹部を按摩しますが、食指の指腹をつかいます。指の先端を曲げてひっかくような動作をしてはなりません、直腸の粘膜の損傷を避けるためです。按摩する部位は主に前立腺の左葉右葉と中葉です。即ち指先でそれぞれ左右を一回づつおさえ、次に中央を一回おさえます、反復10~20遍あるいは適当に斟酌します。そうして前立腺液の排出を促します。(図238~1、3)。 按摩手法には一般に三種あります。 一は指腹を腸壁に吸着させて按圧しながら、小幅に往復してなでる。二は食指の指腹を腸壁に吸着させて、上下あるいは左右方向に小幅に揉む。三は食指の指腹を腸壁に吸着させて振せんする方法です(図238~4)。この三法は順番に交替して応用できます、毎回5~10分間。 〔適応症〕 前立腺炎、前立腺肥大。ほかには、内痔、遺精、遺尿(失禁)、陽萎(インポテンツ)、尿貯留等に対して一定の治療効果があります。 |