この類の手法の共通の特徴は、すべてリズミカルに断続して衝撃力を与えることです。すなわち叩、撃、拍、打力で治療点を刺激します。もし軽快にしかもリズミカルに叩撃すると、軟部組織にリズミカルな起伏振動を起こします。もしどっしりとしかもゆっくりと捶拍すると、軟部組織ににぶい“太鼓様”振動を起こします。叩法は全身各部に適用します。捶拍打法の応用範囲は限られていて、常用するのは腰背及び四肢の近位で筋肉豊満なところです。この類の手法は叩、拍、捶、打法を包括します。舒筋活血(筋肉の緊張をとって血をきれいにする)、去風止痛(風邪を去って止痛する)及び消除筋肉疲労(筋肉疲労を消し除く)の作用があります。 |
腕の力で手首の活動を誘導して、治療部位にある両手を軽快にしかもリズミカルに弾打(弾くように打つ)するものを、叩法といいます。叩撃するときに歯切れのよいしかもリズミカルな音が出るようにします。これを分けて指叩法、掌叩法と拳叩法とします。 |
手指を着力点(作用点)とする叩法です。これを分けて指端叩、指背叩と指腹叩とします。それぞれにまた単指と多指叩の別があります。 指端叩(図22)(指端叩打法): 指端を着力点(作用点)とする叩法です。 姿勢要領:両手指を自然に屈曲して、手首の力を抜いて、腕の力で手首を誘導して不断で軽妙な屈伸動作をします、十指端でリズミカルに治療部位を弾打(弾くように打つ)します、その音は多くの鶏が米を啄くようだとされています。病情あるいは部位によっては、一指、二指あるいは三指での叩撃も選べます。もし指端をくっつけて点にして叩撃する場合は、弾点法といいます(図10-2)。指端叩は躯幹、四肢関節部と頭面部に常用します。 指背叩:(指背叩打) 指背を着力点(作用点)とする叩法です。これを擺手叩(やなぎ手)、敲撃叩(叩打)と弾指叩(はじき指)に分けます。 A.指背擺手叩(図23):(指背やなぎ手) 両手十指を微かに屈して開き、手背を作用点にして、手首は力を抜いて、腕の力で手首を誘導して内から外へ向けて反復して擺動(ハイドウ、振り子のように動かす)します、外に向けて一回擺動するときには、第5、4、3、2指の中節の指背で治療部位をすばやく輪番に弾打(弾くように打つ)します。この法は多くは両手で同時にあるいは交替に操作します、片手での操作は割りに少ないです。頭部治療に常用しますが、頭痛、頭昏(頭がくらくらする)、頭脹(頭が腫れぼったい)、失眠(不眠)などの症に割りによい治療効果があります。 B.指背敲撃叩(図24):(指背叩打) 両手十指を自然に屈曲して、掌心を上に向け、手首の力を抜いて、腕の力で手首の屈伸を誘導し、第5、4、3、2指の指背でリズミカルに輪番に治療部位を弾打(弾くように打つ)します。胸、腹、背、頭部に常用しますが、理気止痛(気をととのえて止痛する)の作用があります。 C.指背弾叩法(図25):(指背はじき指) 示指あるいは中指の爪甲を母指でおさえておいて、離したときに指が伸びて弾き出る力を用いて、特定のツボあるいは部位に爪甲をあてて撃打します。全身各部のツボに適用しますが、頚項(うなじ)、枕顳(大後頭隆起部とこめかみ部)と関節周囲に比較的常用します。行気止痛(気をめぐらして止痛する)、疏風解表(頭痛発熱などのかぜ症状をとる)及び組織の興奮性を高める作用があります。 指腹叩:(指腹叩打) 手指の指紋面あるいは指掌面を着力点(作用点)とする叩法です。擺手叩(やなぎ手)、敲撃叩(叩打)と弾指叩(はじき指)にわけます。 A.指腹擺手叩(図26):(やなぎ手) 両手十指を微かに屈して開き、手掌面を作用点として、手首の力を抜いて、腕の力を用いて手首を誘導して外下方から内上方に向けて反復して擺動(ハイドウ、振り子のように動かす)します、一回擺動するときに、第2、3、4、5指の中節の指腹で治療部位を輪番に弾打(弾くように打つ)します。この法は多くは両手同時あるいは交替で操作します。常用部位と作用は指背擺手叩(指背やなぎ手)と同じです、ただし作用力は指背擺手叩(指背やなぎ手)に比較すると柔和です。 B.指腹敲撃叩(図27):(指腹叩打) 両手の十指は自然に屈曲して、掌心を下に向け、手首の力を抜いて、腕力を用いて手首の屈伸を誘導して、第1、2、3、4、5指の指腹でリズミカルに治療部位を弾打(弾くように打つ)します。適応部位と作用は、指背敲撃叩(指背叩打)と同じです。 C.指腹弾叩法(図28):(指腹はじき指) 示指で中指末節の背面を按圧しておいて、按圧から滑り落ちる力を利用して、示指に特定のツボあるいは部位を撃打させます。頭及び胸腹部に適用します。頭部に応用すると、保健功の“鳴天鼓”法に似ています。この法は理気解鬱(気をととのえて鬱を解く)、清脳安神(頭をすっきりさせて精神をやすめる)の作用があります。 |
手の掌面、背面あるいは尺側面を着力点(作用点)とする叩法です。これを分けて空掌、平掌、側掌、合掌と手背叩の五種の形式とします。 A.空拳叩(図29):(拍打法) 両手の五指を微かに屈して相い並べ、掌心を陥凹して、掌の周縁を着力点(作用点)とし、腕の力で手首の屈伸を誘導し、両手を交替しながら軽快に治療部位を拍打します。拍叩する時には歯切れのよいしかもリズミカルな音が出るようにします。胸背腰殿と四肢近位に常用します。舒筋活血(筋肉の緊張をとって血をきれいにする)、寛胸理気(胸を広げて気をととのえる)と消除筋肉疲労(筋肉疲労をとり除く)の作用があります。 B.平掌叩(図30)(全手掌叩打):両手の五指を自然に伸ばしてやや開いておいて、全掌を着力点(作用点)として、叩撃の方法は空掌叩と同様にします。胸背部に常用します、寛胸理気(胸を広げて気をととのえる)の作用があります。 C.側掌叩(図31):(切打法) 両手の五指は伸ばしてやや開き、掌心は相い対する位置にして、手の尺側面を着力点(作用点)としますが、叩撃の方法は空拳叩と同様です。叩撃する時に“シシ”という歯切れのよい音が出ると宜しい。腰背と四肢の近位に適用します。舒筋活血(筋肉の緊張をとって血をきれいにする)、解痙鎮痛(痙攣を解いて鎮痛する)の作用があります。 D.合掌叩、又称切撃叩(図32):(合掌打法) 両手の手のひらを合わして、五指は伸ばしやや開いて、手の尺側面を着力点(作用点)として治療部位を叩撃します。叩撃する時に歯切れのよい音が響くとよいです。肩背腰殿と下肢の筋肉豊満なところに適用します。疏通経絡(経絡を疏通する)、解痙止痛(痙攣を解いて止痛する)、壮陽散寒(陽を壮んにして寒を散らす)の作用があります。 E.手背叩(図33):(宿気打法、含気打法、袋打の術) 両手を交叉して手のひらを合わせ、手指は自然に伸ばし、手背の中手骨以下を着力点(作用点)として、両手で協同して治療部位を叩撃します。叩撃する時に“シシ”という音を響かせます。頭部躯幹背側及び四肢近位部に適用します。理気止痛(気をととのえて止痛する)、鎮静安神(精神を鎮静してやすませる)の作用があります。 |
空拳で軽快でリズミカルな叩撃をする手法です。俯拳叩(掌側拳叩打)、仰拳叩(背側拳叩打)と側拳叩(手拳叩打)に分けます。 A.俯拳叩(図34)(掌側拳叩打): 両手で空拳を握り、掌心を下に向けて、拳の四指の中節の背面と母指球小指球部を着力点(作用点)にして、腕の力で手首の屈伸を誘導して、治療点に対してリズミカルな叩撃をして、歯切れのよい音を発します。この法は肩背腰殿と大腿部に適用します。舒筋活血(筋肉の緊張をとって血をきれいにする)、疏通経絡(経絡を疎通する)の作用があります。 B.仰拳叩(図35)(背側拳叩打): 両手で空拳を握り、掌心を上に向けて、拳の背側の中手骨部を着力点(作用点)として叩撃する方法です。適応部位と作用は俯拳叩と同じです。 C.側拳叩(図36)(手拳叩打): 両手を空拳に握り、掌心を相い対して、拳の小指球面を着力点(作用点)とします、叩撃方法は俯拳叩とおなじです。この法は拳叩法の中では比較的常用される種類です。叩撃する時には歯切れのよいしかもリズミカルな音を響かするのが宜しい。胸と頭頚を除く全身各部の筋肉豊満な処には皆応用できます。その作用は空掌叩と同じです。 |
空拳叩の手法姿勢をとって、片手を高く上げて力を入れて拍撃し、打ち下ろした手は動かさずに、2〜3秒間穏やかにおいて置き、振動波を組織の深部に伝播させます(図37)。この法の作用力は比較的大きく、たたく音はしますが、空拳叩のような歯切れのよい音ではなく、こもったような大きな音がします。一ヶ所の治療点拍撃1〜3回が一般的です。肩背腰殿部に常用します。壮陽散寒(陽を壮んにして寒を散らす)、疏通経絡(経絡を疎通する)、調節功能(機能を調節する)の作用があります。 |
拍撃法の要領に従って、片手の側拳、仰拳(背側拳)あるいは掌根(手根)で治療点を撃打する手法で、捶法(垂直叩打法)といいます。捶法(垂直叩打法)と拍撃法は操作要領はほとんど同じですが、拍撃法(垂直拍打法)は空気を利用した振動で組織を刺激するのが主であり、発出する音は比較的澄んだ高音です;捶法(垂直叩打法)は実拳で直接組織を刺激して振動を起こさせ、発出する音は比較的こもった低音です。したがって捶法(垂直叩打法)では次のようにしなくてはなりません:準(治療点に正確にあわせること)、狠(用力が十分足りていること)、穏(下ろしたあと穏かであること、移動させないこと)、実(こもった低音を発出すること)の四字です。一ヶ所の治療点に捶1〜3回が一般です。壮陽醒脳(陽を壮んにして頭をはっきりさせる)、宣通気血(気血の通りをよくする)、調節功能(機能を調節する)の作用があります。 1.側拳捶(図38)(側拳垂直叩打法) 手は実拳に握り、拳の小指球面を着力点(作用点)とする捶法の一種です。肩甲上背、腰仙関節、四肢大関節及び筋肉が隆起しているところに常用します。腱鞘の腫れをとるのにこの法を用いて撃破してもよいです。 2.仰拳捶(図39)(背側拳垂直叩打法) 手は実拳に握り、拳背の拳骨部を着力点(作用点)とする捶法の一種です。第1、2胸椎棘突起と腰仙関節に常用します。 3.掌根捶(図40)(手根垂直叩打法) 五指はまっすぐに伸して、掌根部(手根部)を着力点(作用点)とする捶法(垂直叩打法)の一種です。百会、環跳及び筋肉の隆起しているところに常用します。 |
特製の桑枝棒あるいは鋼線のへらで治療点を撃打する手法で、打法といいます。棒打法と拍打法の両種に分けます。 1.棒打法(図41)(桑枝棒打ち法) 桑枝棒で治療点を撃打する手法です。医者は動きやすいように立てって、右手に棒を握り、棒の中上部を着力点(作用点)として撃打します。肩背腰殿及び四肢の筋肉が豊満でだるくて脹れたところに常用します。病情あるいは部位の必要性に基づいて、叩法的な(軽く叩く)あるいは捶法的な(重たく叩く)操作方法を参照すべきです。疏通経絡(経絡を疎通する)、活血去痰(血をきれいにして浮腫をとる)、調和気血(気血を調和する)作用。筋肉の風湿症、痙攣、麻痺、酸痛(だる痛い)などの症に常用します。 桑枝棒の製法: 秋季に細くて直っすぐな桑の枝を20〜25本とり、皮を剥いて干して晒し、長さ45センチに截断し、手で握ってうまく整えたあと木綿糸で固く縛り、さらに綿ネルで一層包み、最後に色の濃い布袋にいれて口を閉じれば出来上がりです。成品の棒の規格は:長46センチ、棒端の直径は4センチ。この棒は重量が軽く、弾性に富み、撃打した時に痛みをあまり感じないので、打ったあとは緩んで軽くなり緊張が取れます。 2.拍打法(図42〜1)(鋼線のヘラ打ち法) 特製の鋼線のへらで、軽快にそしてリズミカルに治療部位を叩打する手法です。拍打する時には軽重、遅速をつけてリズミカルに上から下へと、左から右へと順序をつけて行うべきです。一般に片手で操作します。頭面、胸腹は除きまた手足の末端は慎重に用いますが、全身に均しくこの治療法は適応します。背部の内臓投影区、関節及び筋肉が薄弱なところは軽拍(軽く打つ)します、腰仙部、四肢の近位及び筋肉が豊満なところは重拍(重く打つ)しても宜しい(図42〜2、3)。この法は舒筋活血(筋肉の緊張をとって血をきれいにする)、調和気血(気血を調和する)、解痙止痛(痙攣を解いて止痛する)、調節功能(機能を調節する)などの作用があります。 鋼線のへらの製法(図42〜4): 16#〜18#の鋼線あるいは鉄線を100〜150グラム支度して、それを曲げて34センチの長さのひょうたん型のへらを組み立て、棉花25グラムで叩きつけるようにして包み、その外側に包帯を巻きつけて堅め、さらにビニールテープで縛り、最後に藍色のカバーに入れて封をすれば出来上がりです。成品のヘラの規格:長さ34センチ;頭部は楕円形で、幅は約9センチ、厚さは約4センチ;柄は円柱形で、太さは横径約3センチ;頚部はやや細く、横径約2.5センチ。 |