〔位置〕 胸骨頚切痕上縁の陥凹中。 〔手法〕 中指先端で圧迫揉捏20~30回、あるいは呼吸に随って一出一入とここをほじくります、3~5回。 〔主治〕 痰喘、嘔吐、呃逆(しゃっくり)。 〔臨床応用〕 気機不利(気の働きが悪い)による痰涎壅盛(痰がつまる)あるいは胃気上逆(胃の逆上)によって起こる痰喘、嘔吐は、多くは推揉(軽擦揉捏)膻中、揉中脘、運内八卦と共に用います。もし呼吸に随って裏に向かって、すばやく深くおさえると、催吐できます。 |
〔位置〕 両乳頭を結んだ線の中点、胸骨上にあります。 〔手法〕 中指先端で揉(揉捏)する手法を揉膻中(膻中揉捏)と言います。両母指でツボの中央から両辺に向かって分れて軽擦して乳頭に至る手法を分推膻中(膻中左右に軽擦)と言います。示指・中指で胸骨切痕から下に向かって直っすぐ軽擦して剣状突起に至る手法を推膻中(膻中軽擦)と言います。揉(揉捏)、推(軽擦)、分推(左右に軽擦)各50~100回。 〔主治〕 胸悶(胸苦しい)、嘔吐、痰喘。 〔臨床応用〕 膻中は気の会穴です、推揉(軽擦揉捏)すると寛胸理気(胸を寛げて気をととのえる)、止咳化痰(咳を止め痰をなくする)と言う効能があります。各種の原因により引き起こされる胸悶(胸苦しい)、吐逆(嘔吐)、痰喘咳嗽(痰と咳)にたいして均しく有効です。嘔吐、噎気(むせぶ)の治療には、常に運内八卦、横紋推向板門、分腹陰陽と共に用います。喘咳(喘息)の治療には常に推肺経、揉肺兪と共に用います。痰吐不利(痰が切れない)の治療には常に揉天突、按揉豊隆と共に用います。 |
〔位置〕 乳下2寸を乳根とし、乳外傍開くこと2寸を乳旁とします。 〔手法〕 示指・中指二指で両方のツボを同時に揉ねつ20~50回。中指で一つの穴だけを揉捏しても宜しいです。 〔主治〕 喘嗽(喘息)、胸悶(胸苦しい)、嘔吐。 |
〔位置〕 腋下両脇から天枢穴にいたる部。 〔手法〕 両手の搓摩(錐状軽擦)法で左右の腋の下から天枢穴にいたるところを、上下に往復して操作50~100回。この法また按弦走搓摩とも言います。 〔主治〕 胸悶(胸苦しい)、胸痛、痰喘気急(痰が絡んだ咳で呼吸がせわしい)、疳積(小児の貧血、小児神経症?)。 |
〔位置〕 臍(へそ)上4寸。 〔手法〕 指端あるいは掌根でツボを揉捏するのを揉中脘と言います。掌心あるいは四指で旋摩(輪状軽擦)するものを摩中脘といいます。示指・中指で喉の下から直っすぐ中脘に至るまで軽擦するものを推中脘、または推胃脘といいます。揉捏100~300回、輪状軽擦5分間、軽擦100~300回。 〔主治〕 腹脹(お腹が脹る)、食積(食滞)、嘔吐、泄瀉(下痢)、食欲不振、アイ気(げっぷ)。 〔臨床応用〕 揉摩中脘(中脘の揉捏軽擦)は健脾和胃(胃腸を健やかにする)、消食和中(消化促進)の効能があります。多くは按揉足三里、推脾経と共に用います。推中脘(中脘軽擦)は胃気上逆(胃が逆上)、アイ気(げっぷ)、嘔悪(吐き気)を主治します。 |
〔位置〕 左右肋骨弓の下縁あるいは上腹部の両側。 〔手法〕 両母指で剣状突起の下から肋骨弓の下縁にそって左右に軽擦100~200回;あるいは肋骨弓の下縁から上腹部の両側を臍(へそ)部まで軽擦5~10遍。 〔主治〕 腹痛、腹脹(お腹が脹る)、消化不良、煩操不安(イライラして不安がる)、夜なき。 |
〔位置〕 前腹壁。 〔手法〕 四指の指腹であるいは手掌全体で時計回りに旋摩(輪状軽擦)5分間。 〔主治〕 腹脹(お腹が脹る)、腹痛、便秘、腹瀉(下痢)、疳積(小児の貧血、小児神経症?)。 〔臨床応用〕 この法は健脾和胃(胃腸を健やかにする)、理気消食(消化を促す)効能があり、消化機能の障害に対して割りに効果的ですが、常に与捏脊、按揉足三里と共に用いて、小児の保健手法とします。 |
〔位置〕 肚臍(へそ)、あるいは臍(へそ)の周囲。 〔手法〕 中指の先端あるいは手根で揉捏する手法を、揉臍といいます。臍(へそ)から直っすぐに軽擦して下腹至るあるいはこの逆を、推臍と言います。母指・示指・中指の三指を熊手のように肚臍(へそ)において抖動(揺るがす)手法を、抖臍といいます。揉100~300回、推100回、抖5~10回。 〔主治〕 腹脹(お腹が脹る)、腹痛、食積(食滞)、便秘、腸鳴、吐瀉(吐き下し)、尿貯留、腸閉塞。 〔臨床応用〕 揉臍(臍の揉捏)には温陽散寒(陽気を温めて寒気を散らす)、補益気血(気血を補う)、健脾和胃(胃腸を健やかにする)、消食導滞(食滞を解消する)などの効能がありますから、多く腹瀉(下痢)、便秘、腹痛、疳積(小児の貧血、小児神経症?)などに用います。臨床上、揉臍、摩腹、上推七節骨、揉亀尾は常に配合して応用しますので、“亀尾七節、摩腹揉臍”と言い、腹瀉(下痢)を治療する上で割りに効果があります。推臍は腹脹(お腹が脹る)、尿貯留に対して常用します。抖臍は腸閉塞、腸捻転、腹痛にたいして常用します。 |
〔位置〕 臍(へそ)の傍2寸。 〔手法〕 示指・中指の二指を分けて左右両穴を揉捏50~100回。 〔主治〕 腹瀉(下痢)、腹痛、便秘。 〔臨床応用〕 天枢は大腸の募穴ですから、疏調大腸(大腸の通じをよくする)、理気消滞(気を動かして食滞をなくする)の効能があります。臨床上、天枢と臍(へそ)を同時に操作する時には、中指で臍(へそ)をおさえ、示指と環指を分けて天枢をおさえ、二穴を同時に揉捏します。 |
〔位置〕 下腹部、あるいは臍(へそ)の下2寸と3寸の間。 〔手法〕 手根で揉捏50~100回、摩(輪状軽擦)5分間。 〔主治〕 腹瀉(下痢)、腹痛、遺尿(夜尿)、脱肛、尿貯留。 〔臨床応用〕 揉摩丹田は培腎固本(生きる力をしっかりさせる)、温補下元(下の元気を温め補う)、分清別濁(吸収すべきものと排出すべきものを分別する)という効能がありますから、小児先天不足(先天的に元気が不足している小児)、寒凝少腹及腹痛(下腹が冷えて腹痛する)、脱肛、遺尿(夜尿)など多用しますが、常に補腎経、推三関、揉外労宮と共に用います。揉丹田は尿貯留に効果がありますが、常に推箕門、清小腸と共に用います。 |
〔位置〕 臍(へそ)両傍の腹直筋。 〔手法〕 両手の母指・示指・中指の三指で左右両穴を同時に拿(把握揉捏)3~5回、中指による按揉(圧迫揉捏)30回。 〔主治〕 腹痛、腹瀉(下痢)。 〔臨床応用〕 拿・按肚角(腹直筋の把握揉捏・圧迫)は腹痛をとめる重要な手法ですから、各種の原因で引き起こされる腹痛に均しく応用できますが、特に寒痛(冷えによる腹痛)、傷食痛(食中りによる腹痛)にたいして効果が好いです。この手法は刺激性が強いので、拿(把握揉捏)が多すぎてはいけません。一般には最後におこなう操作とされています。 |