〔位置〕 母指の指腹、あるいは母指を屈曲した時の橈側の指掌面。 〔手法〕 母指指腹の輪状揉捏、あるいは屈曲した母指の橈側指掌面を手根方向に向かって軽擦する手法を補脾経と言います。指腹を求心性にまっすぐ軽擦する手法を清脾経と言います。各100~500回。 〔主治〕 腹瀉(下痢)、便秘、痢疾(伝染性下痢)、食欲不振、黄疸。 〔臨床応用〕 補脾経には健脾胃(胃腸を健やかにする)、補気血(気血を補う)効能がありますから、脾胃虚弱(胃腸虚弱)、気血不足による食欲不振、筋肉消痩(筋肉の衰え)、消化不良などの症に用います。清脾経は清熱(熱をさます)利湿(解熱してむくみを取る)、化痰(痰をとる)止嘔(痰をなくして嘔吐を止める)効能がありますから、湿熱薫蒸(身体が蒸されるように熱い)、皮膚発黄(皮膚が黄色い)、悪心嘔吐、腹瀉(下痢)、痢疾(伝染性下痢)などの症に用います。一般的な情況では、脾経は補すのが好く、清するのはよろしくありません。 |
〔位置〕 示指指腹。 〔手法〕 指腹を求心性に反復軽擦100~500回、清肝経と言います。指腹を旋揉(輪状揉捏)する手法を補として、補肝経といいます。 〔主治〕 煩躁不安(いらだたしく不安)、驚風(ひきつけ)、目赤、五心煩熱(胸や手のひら足の裏がわずらわしく火照る)、口苦(口が苦い)、咽干(咽が乾く)。 〔臨床応用〕 清肝経は平肝瀉火(のぼせをとる)、息風鎮驚(驚きを鎮める)(ひきつけを治める)、解鬱除煩(憂鬱とイライラを取り除く)効能があります。肝経は清するのが宜しく補すのは宜しくありません。もし肝虚で補が相応の時には補した後に清を加えるか、あるいは補腎経によってこれに代えます、即ち滋腎養肝法(腎の力をつけて肝を養う)といわれるものです。 |
〔位置〕 中指指腹。 〔手法〕 指腹に求心性の反復推動(軽擦)100~500回、清心経と言います。指腹に旋揉(輪状揉捏)するのを補とし、補心経と言います。 〔主治〕 高熱神昏(高熱意識混濁)、五心煩熱(胸や手のひら足の裏がわずらわしく火照る)、口舌生瘡(口内炎・口唇炎・舌炎)、小便赤澀(小便が赤くて出にくい)、心血不足、驚恐不安。 〔臨床応用〕 清心経は清熱(熱をさます)退心火(心からくる熱症状をとり除く)の効能がありますが、多く清河水、清小腸と共に用います。心経は清するに宜しく補するのには宜しくありません。もし気血が不足して心煩不安(イライラして不安)で、横になっても眠れず補法が必要なときには、補した後清を加えるか、あるいは補脾経でこれに代えます。 |
〔位置〕 環指指腹。 〔手法〕 旋揉(輪状揉捏)を補となし、補肺経と言います。求心性に直推(真っすぐ軽擦)のを清とし、清肺経と言います。補肺経と清肺経を一緒にして推肺経と言います、各100~500回。 〔主治〕 感冒、発熱咳嗽、胸悶(胸苦しい)、気喘(ぜんそく・息切れ)、虚汗(弱っているときにでる汗)、脱肛。 〔臨床応用〕 補肺経は補益肺気(肺気を補う)効能がありますから、肺気虚遺(肺の機能が弱い?)、咳嗽気喘(ぜんそく・息切れ)、虚汗(弱っているときにでる汗)、怕冷(寒がり)など肺経虚寒証(肺経の寒さを伴う症状)に用います。清肺経は宣肺清熱(肺をのびやかにして熱を取る)、疏風解表(かぜ症状をとる)、化痰止咳(痰をとって咳を止める)効能がありますから、感冒発熱および咳嗽、気喘(ぜんそく・息切れ)、痰鳴(痰のなる音)など肺経実熱証に用います。 |
〔位置〕 小指指腹。 〔手法〕 遠心性に直推(真っすぐ軽擦)するのを補とし、補腎経と言います。求心性に直推(真っすぐ軽擦)するのを瀉とし、清腎経と言います。100~500回。 〔主治〕 先天不足(先天的に弱い)、久病体虚(体質虚弱、長患いで身体が弱っている)、腎虚腹瀉(下痢)、遺尿(夜尿)、虚喘(弱々しい咳)、膀胱蘊熱(膀胱炎?)、小便淋瀝刺痛(小便が出にくく刺すように痛い)。 〔臨床応用〕 補腎経には補腎益脳(腎を補って脳を壮んにする)、温養下元(丹田の元気を温めて養う)効能があります。清腎経には清利下焦湿熱(下腹にこもった熱を取る)効能がありますから、膀胱蘊熱(膀胱炎?)、小便赤澀(小便が赤くて出にくい)などなどの症状に用います。臨床上、腎のツボは一般に補法を多く用い、清法が必要なときには、多くは清小腸でこれに代えます。 |
〔位置〕 五指の指腹の遠位関節横紋。 〔手法〕 母指端の橈側で五経の関節横紋を横向きに往復して推(軽擦)します、約50回。 〔主治〕 腹脹(お腹が脹る)、寒熱往来(悪寒と発熱が交代に襲う)。 〔臨床応用〕 六個月以内の乳児の発熱に常用します。 |
〔位置〕 示指の橈側縁、指尖から虎口(母指と示指の股の間)までの一直線上。 〔手法〕 示指の端から虎口(母指と示指の股の間)に向かって直推(真っすぐ軽擦)するのを補とし、補大腸といいます。これと反対にするのを清とし、清大腸と言います。補大腸と清大腸を一緒にして推大腸と言います。各100~300回。 〔主治〕 腹瀉(下痢)、脱肛、痢疾(伝染性下痢)、便秘。 〔臨床応用〕 補大腸は澀腸固脱(腸を締めて下垂を固める)、温中止瀉(お腹を温めて下痢を止める)効能がありますから、虚寒腹痛(お腹の冷え痛み)、脱肛などに用います。清大腸は清利腸府(腸を綺麗にする)、除湿熱(湿熱をのぞく)、導積滞(食滞を通じさせる)の効能がありますから、湿熱腹痛(熱による腹痛)、痢下赤白(赤痢の類)、大便秘結(便秘)などに多用します。このツボは望診用にもなります。 |
〔位置〕 小指の尺側縁、指尖から指根に至る一直線上。 〔手法〕 指尖から指根に向かって直推(真っすぐ軽擦)するものを補し、補小腸と言います。これの反対を清とし、清小腸と言います。補小腸と清小腸を一緒にして推小腸と言います。各100~300回。 〔主治〕 小便赤澀(小便が赤くて出にくい)、水瀉(水様便)、遺尿(夜尿)、尿閉(小便不通)。 〔臨床応用〕 清小腸は清利下焦湿熱(下腹にこもった熱を取る)、泌清別濁(大小便を分離する)効能があります。もし心経の熱が小腸に移った場合は、本法に清河水を配合すれば清熱利尿(熱をさまして利尿する)作用を増強できます。もし下焦虚寒(下腹の冷え)に属して、多尿(小便が多い)、遺尿(夜尿)であれば補小腸が宜しい。 |
〔位置〕 小指の先端。 〔手法〕 中指あるいは母指端で按揉(圧迫揉捏)、100ー500回。 〔主治〕 自汗(いつも汗がでる)、盗汗(寝汗)、解顱(頭蓋骨の縫合不全) 〔臨床応用〕 揉腎頂は收斂元気(元気を集める)、固表止汗(汗腺を閉めて汗を止める)効能がありますから、自汗(いつも汗がでる)、盗汗(寝汗)あるいは大汗淋漓不止(大汗が滴り落ちて止まらない)などの症に均しく一定の治療効果があります。 |
〔位置〕 小指腹の近位指間関節横紋。 〔手法〕 中指あるいは母指端で按揉(圧迫揉捏)100~500回。 〔主治〕 目赤、鵝口瘡(アフター性口内炎)、熱毒内陥(外にあった熱が内蔵を犯した)。 〔臨床応用〕 揉腎紋には去風明目(視力をはっきりさせる)、散淤結(つかえているものを散らす)効能があります。主に目赤腫痛(目が赤くはれて痛む)あるいは熱毒内陥(外にあった熱が入って内蔵を犯した)、淤結不散所致的高熱(つかえているものが散らないで生じた高熱)、呼吸気涼(吸気が冷たい?)、手足逆冷(手足が冷える)など症に用います。 |
〔位置〕 示指、中指、環指、小指の指腹の近位指間関節横紋。 〔手法〕 患児の片手の四指を並べて、術者は母指端の橈側で、示指の横紋から小指の横紋に向けてこすります、反復100~300回、推四横紋といいます。あるいは母指の爪でそれぞれ掐(コウ)揉(指頭揉捏)各5回、掐(コウ)四横紋と言います。 〔主治〕 疳積(小児の貧血、小児神経症?)、腹脹(お腹が脹る)腹痛、気血不和、消化不良、驚風(ひきつけ)、気喘(ぜんそく・息切れ)、口唇破裂。 〔臨床応用〕 このツボを推(軽擦)すると調中行気(お腹を調えて気をめぐらす)、和気血(気血を調和させる)、消脹満(お腹が脹れたのを消す)効能があります。このツボに掐(コウ)(指頭揉捏)すると退熱除煩(熱を下げて胸部の苦悶を除く)、散淤結(つかえているものを散らす)効能があります。臨床では多く補脾経、揉中脘と共に用います。毫針あるいは三稜針で点刺してこのツボから出血させて疳積(小児の貧血、小児神経症?)を治療すると効果が好いです。 |
〔位置〕 示指、中指、環指、小指の指腹の中手指節関節横紋。 〔手法〕 推四横紋に同じです。 〔主治〕 煩操(いらいら)、口瘡(口内炎)、唇裂(唇が切れる)、腹脹(お腹が脹る)。 〔臨床応用〕 主に脾胃熱結(胃腸の熱)、口唇潰爛(口唇のただれ)および腹脹(お腹が脹る)などの症に用います。臨床では推小横紋は肺の乾性ラ音の治療に一定の効果があります。 |
〔位置〕 掌面で小指根の下、尺側の掌紋頭(手相で言う感情線)。 〔手法〕 中指あるいは母指端で按揉(圧迫揉捏)100~500回。 〔主治〕 痰熱喘咳(喘ぎながら咳く)(水毒熱毒による呼吸困難と咳)、口舌生瘡(口内炎・口唇炎・舌炎)、頓咳(百日咳)流涎(涎を流す)。 〔臨床応用〕 この手法は清熱(熱をさます)散結(熱をさましてつまったものを散らす)、寛胸宣肺(胸を寛げて肺をのびやかにする)、止咳化痰(咳を止めて痰を取る)の効能がありますから、百日咳や肺炎を治療する要穴であり、肺の湿性ラ音に対する治療でも一定の効果があります。 |
〔位置〕 母指腹の近位指節。 〔手法〕 求心性に直推(真っすぐ軽擦)するのを清とし、清胃経と言います。旋揉(輪状揉捏)を補とし、補胃経といいます。二者をあわせて推胃経と言います、各100~500回。 〔主治〕 嘔悪アイ気(嘔吐げっぷ)、煩渇善飢(激しく口が渇き、よくお腹がすく)、食欲不振、吐血衄血(吐血鼻血)。 〔臨床応用〕 清胃経は臨床では多く清脾経、推天柱骨、横紋推向板門と共に用い、脾胃実熱(胃腸の熱)あるいは胃気不和(胃の機能失調)によって引き起こされる上逆嘔悪(嘔吐)などの症を治療します。もし胃腸実熱(胃腸の熱)、脘腹脹満(お腹が脹る)、発熱煩渇(発熱して激しく口が渇く)、便秘納呆(便秘して食べられない)といった場合には、多く清大腸、退六腑、揉天枢、下推七節骨と共に用います。補胃経は健脾胃(胃腸を健やかにする)、助運化(消化を助ける)の効能がありますが、常に補脾経、揉中脘、摩腹、按揉足三里と共に用います。 |
〔位置〕 掌面大魚際部(母指球)。 〔手法〕 母指あるいは中指端で揉捏するものを、揉板門あるいは運板門と言います。指推法(指腹軽擦)で母指のつけ根から手首横紋に向けて軽擦するものを板門推向横紋と言います、この逆を横紋推向板門と言います。各100~300回。 〔主治〕 食積(不適当な食事からできたお腹の塊り)、腹脹(お腹が脹る)、食欲不振、嘔吐、腹瀉(下痢)、気喘(ぜんそく・息切れ)、アイ気(げっぷ)。 〔臨床応用〕 揉板門は健脾和胃(胃腸を健やかに調和させる)、消食化滞(消化を促進)、運達上下之気(上下の気をよく通るようにする)の効能があります。乳食停積(消化不良)、運化不良(消化不良)、腹脹(お腹が脹る)、腹瀉(下痢)、嘔吐などの症に多用します。板門推向横紋は止瀉(下痢止め)の効能があり、横紋推向板門は止嘔吐(吐き止め)の効用があります。 |
〔位置〕 手掌の中心、拳を握った時に中指先端が当るところ。 〔手法〕 中指あるいは母指の先端で揉捏50~100回。 〔主治〕 発熱無汗、煩渇(激しく口が渇く)、口瘡(口内炎)、歯齦糜爛(歯ぐきのただれ)、虚煩内熱(身体の潤いが減少して発熱)(衰弱してわずらわしく熱がある)。 〔臨床応用〕 揉内労は心経に熱がありそのために生じた口舌瘡(口内炎・口唇炎・舌炎)、発熱、煩渇(激しく口が渇く)などに用います。;小天心、内労宮、掌小横紋を連合して操作運用することを、運内労と呼んで、虚熱(消耗性の熱)を取ることができますから、心、腎両経の虚熱(消耗性の熱)に対して最も適しています。 |
〔位置〕 手掌中心の内労宮の周囲。掌心を円の中心として、掌心から中指根までの2/3の長さを円の半径とし、八卦穴はこの円周上にあります。母指側は東、小指側は西、指根は南、掌根は北。乾(西北)、坎(北)、艮(東北)、震(東)、巽(東南)、離(南)、坤(西南)、兌(西)、それぞれ八方位を代表します。 〔手法〕 母指先端の橈側縁あるいは中指端で、乾卦から開始して坎卦の方向に向けて卦位の順序に圧迫しながら旋回して運行するものを、順運八卦とします。兌卦から開始して坤卦の方向に向けて卦位の順序に圧迫しながら旋回して運行するものを、逆運八卦とします。一般に30~50回おこないます。この外、部分的に行うものもあります、たとえば乾から坎を経て、艮、震に至るまで運転するなどですが、臨床で応用することは余りありません。 〔主治〕 咳嗽痰喘(咳嗽喘息)、胸悶納呆(胸苦しくて食べられないい)、腹脹嘔吐(お腹が脹って嘔吐する)など。 〔臨床応用〕 順運内八卦には寛胸理気(胸を寛げて気をととのえる)、止咳化痰(咳を止めて痰を取る)、行滞消食(食べ物のもたれを解消して消化する)の作用があります。逆運内八卦には降逆平喘(咳きこみを降ろして喘息を鎮める)、止嘔の作用があります。臨床では多く推肺経、揉板門、揉中脘と共に用います。 |
〔位置〕 大小魚際(母指球・小指球)が交接する所の陥凹中、また魚際交と名づけています。 〔手法〕 母指あるいは中指の先端で揉捏100~300回、掐(コウ)(ゆび針)、搗(つく)5~20回。 〔主治〕 驚風(ひきつけ)、抽チク(ひきつけ)、煩操不安(いらいらして不安)、夜啼(夜なき)、小便赤澀(小便が赤くて出にくい)、斜視、目赤痛、疹痘欲出不透(はしかや水ぼうそうが出そうで出ない)。 〔臨床応用〕 揉魚際交には清熱(熱をさます)、鎮驚(驚きを鎮める)、利尿、明目(視力をはっきりさせる)効能がありますから、主に心経に熱があって引き起こされる病症に用います。新生児硬皮症、黄疸、水腫(むくみ)、瘡セツ(できもの)に対しても有效です。掐(コウ)、搗(つく)小天心には鎮驚(驚きを鎮める)安神の効能がありますから、主に夜啼(夜なき)、驚風(ひきつけ)、抽チク(ひきつけ)、驚恐不安などの症に用います。 |
〔位置〕 掌後横紋中点(掌側手根横紋の中点)。 〔手法〕 母指あるいは中指先端で揉捏100~300回、掐(コウ)(ゆび針)3~5回。 〔主治〕 驚風(ひきつけ)、夜啼(夜なき)、潮熱(日暮れなど決まった時刻に出る熱)、吐瀉(吐き下し)。 〔臨床応用〕 揉総筋には清心経熱(心経の熱をとる)、散結止痙(つまっているものを散らして痙攣を止める)、通調周身気機(全身の気の働きを調える)効能がありますから、臨床では多く清河水、清心経と配合して、驚風(ひきつけ)、抽チク(ひきつけ)を治療しますが、多くは掐(コウ)法(ゆび針)を用います。 |
〔位置〕 仰掌(手掌を上にして)、掌後横紋(掌側手根横紋)。その橈側端は陽池、尺側端は陰池です。 〔手法〕 両手の母指で横紋の中点(総指屈筋)から両辺に向かって分推(左右に母指軽擦)する手法を、分推大横紋または分陰陽と言います。陰池、陽池から総筋(総指屈筋)に向かって合推(左右から中央に軽擦)する手法を、合陰陽と言います。 〔主治〕 寒熱往来(悪寒と発熱が交代に襲う)、腹瀉(下痢)、腹脹(お腹が脹る)、痢疾(伝染性下痢)、嘔吐、食積(不適当な食事からできたお腹の塊り)、煩操不安(いらいらして不安)、痰結喘嗽(痰が詰まって喘息)。 〔臨床応用〕 分陰陽は平衡陰陽(陰陽のバランスを整える)、調和気血(気血を調和させる)、行滞消食(食べ物のもたれを解消して消化する)効能があります。実熱症(熱があって症状が激しい)場合は陰池の方を重く分推するのが宜しいですし、虚寒症(冷えていて症状が激しくない)場合は陽池の方を重く分推するのが宜しいです。合陰陽は行痰散結(痰をめぐらし、つまったものを散らす)効能がありますが、揉腎紋、清河水を配合するとさらに治療効果を増加することができます。 |
(掐(コウ)=ゆび針、指頭揉捏) 〔位置〕 五指の爪の付け根の両側、左右の指頭を合わせると20穴。あるいは十指の爪根正中の後一分、左右の手で10穴。 〔手法〕 母指・示指で一つの指のツボを挟むようにつまむ3~5回。 〔主治〕 驚風(ひきつけ)、発熱。 〔臨床応用〕 掐(コウ)十宣は主に救急に用いますが、清熱(熱をさます)、醒神(頭をすっきりさせる)、開竅(蘇生)作用が有り、常に掐(コウ)老龍、掐(コウ)人中、掐(コウ)小天心と共に用います。 |
〔位置〕 中指の爪甲根部の後一分。 〔手法〕 母指による甲掐(コウ)(つめ針)5回、あるいは覚醒したら即座に止める。 〔主治〕 急驚風(急にひきつける)。 |
〔位置〕 中指の爪甲根部の両側、皮膚の境目、橈側を左端正と言い、尺側を右端正と言います。 〔手法〕 母指による甲掐(コウ)(つめ針)あるいは母指指腹による掐(コウ)揉(指頭揉捏)を、掐(コウ)揉端正と言います。 〔主治〕 鼻衄(鼻血)、驚風(ひきつけ)、嘔吐、泄瀉(下痢)、痢疾(伝染性下痢)。 〔臨床応用〕 揉右端正には降逆止嘔(逆流を降ろして嘔吐を止める)の効能があり、揉左端正には升提(あげる)効能があり、主に水瀉(水様便)、痢疾(伝染性下痢)に用います。掐(コウ)端正は多く小児驚風(ひきつけ)に用い、常に掐(コウ)老龍、清肝経と共に用います。同時にこのツボは鼻衄(鼻血)に対しても有效ですが、その方法は細い紐で中指の末節横紋からはじめて指端までを縛り(きつく縛ってはいけません)、縛り終えたら患児を静かに寝かせれば良いのです。 |
〔位置〕 指背で五指の近位指節関節。 〔手法〕 母指の甲掐(コウ)(つめ針)を用いるものを、掐(コウ)五指節と言います。母指と示指を相対して用いて揉捏するものを、揉五指節といいます。つめ針なら3~5回、揉捏なら30~50回。 〔主治〕 驚風(ひきつけ)、吐涎(涎を吐く)、驚恐不安、咳嗽風痰(咳と痰)。 〔臨床応用〕 掐(コウ)五指節は主に驚恐不安、驚風(ひきつけ)などに用い、多くは清肝経、掐(コウ)老龍と共に用います。揉五指節は主に胸悶(胸苦しい)、痰喘(喘息)、咳嗽などに用い、多くは運内八卦、推揉膻中と共に用います。 |
〔位置〕 軽く拳を握り、第五中手指節関節の後外側の横紋頭。 〔手法〕 掐(コウ)(ゆび針)3~5回、ツボを中心として上下直推(真っすぐ軽擦)50~100回。 〔主治〕 小便赤澀不利(小便が赤くて出にくい)。 |
〔位置〕 手背、中指と環指の中手指節関節の両側の前陥中、合わせて三穴。あるいは中指の中手指節関節の両側の前陥中、合わせて二穴。 〔手法〕 示指と中指の二指端でそれぞれ患児の中指根あるいは環指根の両側をおさえて、揉捏100~500回。母指あるいは示指・中指で甲掐(コウ)(つめ針)各5回。 〔主治〕 驚風(ひきつけ)、抽チク(ひきつけ)、身熱無汗(全身に熱があって汗が出ない)。 〔臨床応用〕 掐(コウ)揉二扇門には発汗透表(皮膚から発汗させる)、退熱平喘(熱を引かせてあえぎをおさめる)の効能があり、これは発汗の治療法です。揉捏するときにはややカをいれて、速度は快速にするのが宜しく、多くは風や寒さにあって引き起こされた症状に用います。本法に揉腎頂、補脾経、補腎経を配合すれば、体虚(体質虚弱)外感者(身体が弱っているときに風や寒さにあった者)に適合します。 |
〔位置〕 手背第四、五中手指節関節間で後陥中。また上馬、二人上馬と名づけています。 〔手法〕 中指あるいは母指の先端で揉捏100~500回、掐(コウ)(ゆび針)3~5回。 〔主治〕 体虚(体質虚弱)、虚熱(消耗性の熱)、喘咳(喘ぎながら咳く)、小便赤澀(小便が赤くて出にくい)、脱肛、遺尿(夜尿)、歯痛、腹痛、驚風(ひきつけ)。 〔臨床応用〕 臨床では揉捏法を多用しますが、滋陰補腎(精力をつけて腎を補う)、順気散結(気をめぐらしてつまっているものを散らす)、利水通淋(利尿作用)の効能があり、滋補(元気をつける)の要穴です。体質虚弱、肺の感染による乾性ラ音で、久しく消失しない者に対しては揉小横紋を配合します。湿性ラ音には揉掌小横紋を配合して、揉捏すれば一定の治療効果があります。 |
〔位置〕 手背中央、内労宮と相い対する。 〔手法〕 中指あるいは母指の先端で揉捏100~300回、掐(コウ)(ゆび針)3~5回。 〔主治〕 風寒感冒、腹痛腹脹(お腹が脹る)、腸鳴腹瀉(下痢)、遺尿(夜尿)、痢疾(伝染性下痢)、脱肛、疝気(脱腸)、潮熱(日暮れなど決まった時刻に出る熱)。 〔臨床応用〕 本穴の性質は温なので、温陽散寒(陽を温めて寒さを散らす)、升陽挙陥(陽を昇らせて落ち込んでいるものを挙げる)要穴とします。臨床では揉捏法を多く用い、一切の寒証(寒さを伴う症状)に使用します。常に補脾経、補腎経、推三関、揉丹田と共に用い、脱肛、遺尿(夜尿)などの症を治療します。 |
〔位置〕 手背第二、三中手骨間隙、合谷穴と並ぶ。 〔手法〕 母指によるつめ針5回あるいは覚醒後すぐに止める。 〔主治〕 驚風(ひきつけ)。 〔臨床応用〕 主に急驚暴死(急にひきつけて瀕死)、昏迷不醒(人事不省)の救急に用います。 |
〔位置〕 手背第四、五中手骨間隙、外労宮と並ぶ。 〔手法〕 母指による甲掐(コウ)(つめ針)5~10回。 〔主治〕 痰喘(喘息)、哮鳴(ほえるようなぜいぜい音)、悪心、疳積(小児の貧血、小児神経症?)、口眼歪斜(顔面神経麻痺)。 〔臨床応用〕 掐(コウ)精寧は行気(気をめぐらす)、破結(つまっているのを散らす)、化痰(痰をとる)効能があります。体虚(体質虚弱)の者には用心して用い、もしどうしても応用するときには多く補脾経、推三関、捏脊など同時に用いて、元気を損なうことがないように注意します。 |
〔位置〕 手背外労宮の周囲、内八卦と相い対しています。 〔手法〕 運内八卦と同じ。 〔主治〕 胸悶(胸苦しい)、腹脹(お腹が脹る)、便結(便秘)。 〔臨床応用〕 運外八卦は寛胸理気(胸を寛げて気をととのえる)、通滞散結(滞っているものを通じさせ、つまっているものを散らす)効能がありますから、臨床では多く摩腹、推揉膻中などと共に用います。 |
〔位置〕 手背手根横紋正中陥凹部。 〔手法〕 母指あるいは中指の先端で揉捏100~300回、掐(コウ)(ゆび針)3~5回。 〔主治〕 腹痛、腸鳴、関節痺痛(関節の麻痺疼痛)、傷風感冒(感冒)。 〔臨床応用〕 揉一窩風は温中行気(身体を温めて気をめぐらす)、止痺痛(麻痺疼痛を止める)、利関節(関節の機能改善)の効能がありますから、寒性あるいは傷食による腹痛を治療しますが、多く拿肚角、推三関、揉中脘と共に用います。 |
〔位置〕 手背第三、四中手骨直上手根横紋陥凹部。 〔手法〕 母指あるいは中指の先端で揉捏100~300回、掐(コウ)(ゆび針)3~5回。 〔主治〕 頭痛、二便不通(大小便不通)。 〔臨床応用〕 本法は便秘に対して顕著な効果がありますが、下痢の続いているものには禁忌です。感冒頭痛あるいは小便赤澀短少(小便が赤くて出にくく、少ししか出ない)、多くはその他の解表、利尿の手法と同時に用います。 |
〔位置〕 手背手根横紋の中点の直上二寸、内関穴と相い対するところ。 〔手法〕 母指あるいは示指・中指の指腹で、ツボを中心として上に向かって直推(真っすぐ軽擦)50~100回、掐(コウ)(ゆび針)3~5回。 〔主治〕 腹瀉(下痢)、腰背疼痛。 |
〔位置〕 外関穴上一寸。また名づけて膊陽池と言います。 〔手法〕 母指で甲掐(コウ)(つめ針)3~5回、指端揉捏100~300回。 〔主治〕 便秘、溲赤(血尿)、頭痛、吐瀉(吐き下し)。 |
〔位置〕 肘を屈して肘窩横紋の尺側端と上腕骨内側上顆の間陥凹部、少海穴に相当します。 〔手法〕 片手の母指でツボをおさえ、別の手で患児の手首を握り肘関節を揺り動かします5~10回。母指の揉捏30~50回、掐(コウ)(ゆび針)3~5回。 〔主治〕 急驚(急なひきつけ)、痞症(ものがつかえる感じ)。 |
〔位置〕 前腕橈側縁、手首と肘の間。 〔手法〕 母指の指腹の橈側面あるいは示指・中指の指腹で、手首から肘に向かって推(軽擦)100~300回。患児の母指を屈して、母指橈側面から肘に向かって推(軽擦)するものを、大推三関と言います。 〔主治〕 気血虚弱、病後体弱(病後の体力低下)、陽虚肢冷(陽気が少なく手足が冷える)、腹痛、腹瀉(下痢)、各種の皮膚病および感冒など一切の虚(体力がない)、寒(冷え)の病証。 〔臨床応用〕 推三関の性質は温熱ですから、補気行気(気を補い気をめぐらす)、温陽散寒(陽を温めて寒さを散らす)、発汗解表(汗を出さして発熱頭痛をとる)と言う効能があり、一切の虚寒病証(体力がなく冷えを伴う病症)を主治します。治療四肢厥冷(手足が冷える)、面色無華(顔色に艶がない)、食欲不振、疳積(小児の貧血、小児神経症?)、吐瀉(吐き下し)など症を治療しますが、多くは補脾経、補腎経、揉丹田、捏脊、摩腹と共に用います。感冒風寒(感冒)、怕冷(寒がり)、無汗あるいは疹出不透(発疹を出し切れない)など症に対しては、多くは清肺経、推攅竹、掐(コウ)揉二扇門と共に用います。 |
〔位置〕 前腕屈側正中線、総指屈筋から洪池(尺沢)に至る線。 〔手法〕 示指、中指の二指の指腹で、手首から肘に向かって軽擦、反復操作100~300回、あるいは軽擦してそこの皮膚の温度が低くなるのを度とします。 〔主治〕 外感発熱(かぜの発熱)、潮熱(日暮れなど決まった時刻に出る熱)、内熱(身体の潤いが減少して発熱)、煩操不安(いらいらして不安)、口渇、弄舌(舌が動きすぎる)、重舌(舌下腺腫張)、驚風(ひきつけ)など一切の熱証。 〔臨床応用〕 清河水の性質は微涼で、割りに穏やかであり、清熱解表(熱をさまし頭痛をとく)、瀉火除煩(のぼせをとってわずらわしさを除く)効能があります。主に熱性の病症の治療に用いますが、清熱(熱をさます)してしかも陰分を損ないません。感冒発熱 頭痛、悪風(風を嫌う)、汗微出(汗がにじみ出る)、咽痛など外感風熱には、常に開天門、推坎宮、揉大陽と共に用います。 |
〔位置〕 前腕尺側縁、肘と手首の間。 〔手法〕 母指あるいは示指・中指の指腹で、肘から手首に向かって軽擦、反復操作100~300回。 〔主治〕 一切の実熱病証(体力の残っている熱病)。高熱、煩渇(激しく口が渇く)、驚風(ひきつけ)、鵝口瘡(アフター口内炎)、重舌(舌下腺腫張)、咽痛、耳下腺炎と大便秘結干燥(乾燥してカチカチの便秘)。 〔臨床応用〕 退六腑は性質は寒涼で、清熱(熱をさます)、涼血(血を冷ます)、解毒。補脾経と共に用いますと、止汗作用があります。もし患児が平素から大便溏薄(水様便)、脾虚腹瀉(腸が弱く下痢)している場合には、本法は慎重に用いなくてはなりません。 |